同情心から動くことのダークサイド
学校に限らないことですが、特に日本の集団や組織には、難しい言葉で言えば「同調圧力」、わかりやすく言えば、「空気を読んで」ふるまうように求められるところがあります。
ひとと違ったところがあれば、たとえそれが優れたものと評価できる特徴でも、それだけで、いじめや、仲間はずれの対象となる。
そうした人と、わけへだてなく、あたりまえのように関わろうとする人もいるにはいることは少なくありません。
その人には、別に「寂しい人をなぐさめてあげよう」などという、余計な邪心すらないのです。
ところが、現実社会では、そうやって、集団から仲間はずれにされている人と、無邪気に友だちになろうとする人までが、今度はいじめや仲間はずれにあってしまうこともよくあるわけです。
不登校や引きこもりをする人には、いろいろな要因があり、一概に同じような人たちに分類するのは慎むべきでしょうが、この「空気を読みあう」、いじめやパワハラや仲間外れを生み出す学校や会社から敢えて飛び出す決断をした人も数多く含まれているかと思います。
すでに述べたように、そうした人たちを「かわいそう」と思うから手を差し伸べるというのは、実は無意識の中に「救済者願望」という余計な邪心が隠れていることが少なくないと思います。専門的には「パターナリズム」といいます。
これは実は、いかに本人は善意のつもりでも、強い立場にあるものが、弱い立場にある者の人生に介入し、干渉し、支配しようという「影」の側面に警戒せねばならないということでもあります。
差別やいじめにさらされている人の側にも、こうした「親切の押し売り」への鋭いアンテナを持っている人が少なからずいます。
余計な力みはやめましょう。もし、無邪気なまでにあたりまえに、そうした人たちと接していける自信のない人は、そういう人たちが、ひっそりと自分の世界を守れるように、普段は心を配るぐらいでいいのかもしれません。
もちろん、明らかにひどい扱いを受けている人たちのために、立ち上がらねばならない時もあると思います。しかし、その人たち自身に、最終的には、自分の人生を歩む権利があることを忘れてはならないと思います。
これは、カウンセラーなどという、人を救うことが仕事とされている(と世間に思い込まれている)ことをやっている私の、自分への戒(いまし)めの言葉でもあります。
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以上、私が今度刊行する本のある部分の原稿から、そのままコピペしました。
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