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2021年10月30日 (土)

「異例の言葉、挑戦にひかれた」 話し方のプロが見た眞子さん会見(毎日新聞)

「過去の女性皇族の結婚会見では見たことのない、異例な内容が随所に盛り込まれていました。お二人の挑戦に引き込まれました」。

小室眞子さん(30)と圭さん(30)が結婚を報告した26日の記者会見について、スピーチライターの千葉佳織さん(27)はこう評価する。

自民党総裁選候補らの演説を分析してきた千葉さんは、特に会見の最後の眞子さんの言葉が印象的だったという。「話し方のプロ」から見た、会見の隠れたポイントを聞いた。【木許はるみ/デジタル報道センター】  

 

――お二人の会見の冒頭について、どう感じましたか。  

◆お二人の本気が伝わってきて、スピーチライターとしてとても心を動かされました。最初に驚いたのは、眞子さんの次の言葉でした。

  •  「本日、みなさまにお伝えしたいことがあるため、このような場を設けました。私が皇族として過ごしてきたなかで抱いてきた感謝の気持ち、私たちの結婚を心配し、応援してくださった方々への感謝、これまでの出来事のなかで私たちが感じてきたことや結婚への思いなどについて、お話ししたいと思います」


 なぜ驚いたかというと、これまでの女性皇族の結婚会見では、今回のように、はじめに話の内容を提示する場面を見たことがなかったからです。私は分析にあたって、平成以降に結婚した3組の発言について報道などに目を通しました。2005年の黒田清子さんと慶樹さん、14年の千家典子さんと国麿さん、18年の守谷絢子さんと慧さんの3組です。たいてい今の心境を語った後、新生活への抱負や家族への思いを述べており、定型の流れを感じました。今回は最初からいつもの形とは違うので、一気に見入りました。

眞子さんの冒頭の言葉からはこれを伝えたいという覚悟を感じ、聞く方もしっかりと耳を傾ける態勢が整ったと思います。

 

謝罪や悲しさの後に「感謝」

 ――先述の冒頭部分でもそうですが、眞子さんは「感謝」の言葉を繰り返しており、会見全体で計10回使っています。

 ◆「感謝」の言葉を分析するには、それが使われる文章の構成がどうなっているか、がポイントになります。

例えば、眞子さんは、お二人の結婚について

  • 「ご迷惑をおかけすることになってしまった方々には、大変申し訳なく思っております」

と謝った上で、

  • 「また私のことを思い静かに心配してくださった方々や事実に基づかない情報に惑わされず、私と圭さんを変わらずに応援してくださった方々に感謝しております」


と感謝の言葉へと続けています。

ほかの場面でも謝罪や「悲しさ」を表現した後で、感謝の言葉を必ず加えています。

こうした使い方からは、自分たちが苦労したことよりも、支えてくれた人たちへの前向きな思いを伝えようとする意図が読み取れます。

 

 ――会見では二人がお互いを思う気持ちの強さも感じました。

 ◆そうですね。すてきな言葉がありました。眞子さんの

      • 「結婚は、自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択でした」
      • 「これまで私たちが自分たちの心に忠実に進んでこられたのは、お互いの存在と、励まし応援してくださる方々の存在があったからです」

という言葉です。

これまでの皇族の結婚会見では見たことのない独特な表現だと感じました。世間からの批評を避けるなら、「良いご縁だった」などもっとえん曲的でよく使われる言い方をすると思います。お二人が自分たちの言葉を重視していることがうかがえます。結婚と「自分たちの心を守る」「心に忠実に進む」という言葉の組み合わせも新鮮で印象に残ります。

 圭さんの「眞子さんを愛しております」という言葉も話題になり、いくつかの記事の見出しになっていましたね。小室圭さんはこの部分では、原稿を見ずに堅苦しい表情も出さずに述べていました。

ここまでストレートな言葉が、女性皇族の結婚会見に登場するのも特殊なことです。心の底から本音を話そうとする意思が伝わってきます。

 

 ――圭さんの母と元婚約者の金銭トラブルに触れた部分では、「事実に基づかない情報」「誤った情報」など、これまでの会見ではなかった異例の単語も出てきました。

 ◆はい。ほかにも、「一方的な臆測」「誤解」といった似たような言葉もありました。こうした単語が登場する回数の多さや、さまざまな言い回しで説明している点から、お二人がこの問題に苦しまれてきたことがうかがい知れます。一方で誤解を解こうとする姿勢も見られました。

眞子さんが

  • 「誤解もあったと思います」


と話した後に

 

  • 「圭さんが独断で動いたことはありませんでした。例えば~」
    と述べたシーンがありました。この「例えば」以降で、眞子さんは圭さんに海外で拠点をつくることを
  • 「私がお願いしました」

とはっきりと言い、圭さんの「独断」ではない行動の具体例を挙げています。

一般的に、スピーチに具体例を入れることはとても大切なことです。「例えば」以降の説明があることで、圭さんを守ろうとする眞子さんの覚悟がよく伝わってきます。

 

配慮がにじむ「悲しい」の使い方

 ――「悲しい」という言葉も2回出てきました。

 ◆「悲しい」という言葉には、お二人の配慮がにじんでいました。

「悲しい」は次の場面で出てきます。

  •  「(略)いわれのない物語となって広がっていくことに恐怖心を覚えるとともに、つらく、悲しい思いをいたしました」(眞子さん)

  • 「この数年間、誤った情報があたかも事実であるかのように扱われ、誹謗(ひぼう)中傷が続いたことにより、眞子さんが心身に不調をきたしたことを、とても悲しく思います」(圭さん)


お二人は「誤った情報」や「臆測」が流れることを批判するのではなく、「悲しい」という自分たちの受け止めを述べています。

誰が悪いと責めることなく、個人的に抱いた感情を伝えることにとどめており、配慮だと感じました。

 また一般的に、スピーチでは話者が感情表現を盛り込むことで、会場全体の空気を作りやすくなります。話者が「悔しい」「晴れやかな気持ち」と言うと、同じ気持ちが会場に広がりやすい。話者の直接の感情表現は、相手に訴えたいことをより強く伝えるための大切な手法です。

さらに「悲しい」という言葉は、「うれしい」といったあいさつのように使える言葉と違い、自分たちの気持ちを明かす「自己開示」の側面があります。自分をさらけ出す表現を使うことによって、言葉の重みが増しているのです。この場面でお二人の感情に共感した方も多かったのではないでしょうか。

 

会見を締めた社会へのメッセージ

 ――会見の最後に眞子さんは「社会」に対するメッセージを発信しました。

 ◆私はこの部分に新しさがあると感じました。すごく心に響きました。眞子さんが話した次の部分です。

 「心を守りながら生きることに困難を感じ傷ついている方が、たくさんいらっしゃると思います。周囲の人の温かい助けや支えによって、より多くの人が、心を大切に守りながら生きていける社会となることを、心から願っております」


過去の女性皇族の結婚会見を見る限り、社会へのメッセージで会見を締めるケースはとても珍しいと思います。会見を無難に終わらせるなら、このパートがなくても成り立ちます。

ましてやお二人が社会へのメッセージを発することで、結婚に反対している人の気持ちを逆なでする怖れもありました。多くの葛藤があった上で発した言葉だと感じました。

あえてメッセージを入れたのは、自分のことを説明するだけでなく、国民にメッセージを届けたいという意思や優しさの表れではないでしょうか。

 この部分は、人の心を動かすスピーチの重要なポイントも詰まっていました。聞き手が「自分ごと」と感じられる要素が含まれているという点です。眞子さんは「心を守りながら生きることに困難を感じ、傷ついている方」の存在を挙げ、言葉を掛けていました。相手の存在を意識した発信になっているため、聞いている方が「自分に言ってくれている」と思えるメッセージになっていました。

 

 ――ただ、口頭での質疑がなくなったこともあり、「一方的な説明」と指摘する声もあります。「一方的」に映らない工夫はされていましたか。

 ◆例えば、話し方の部分では、皇室の方は話す速度(話速)を的確に保っておられます。眞子さんの話速で日常会話をしてみると、ゆっくりであることがわかります。眞子さんは文書を読みながらも「感謝」の場面や文末が近づいてくると、顔を上げ、聞いている人の目を見ながら届けようとしていました。社会に対するメッセージや他者に向けた「感謝」の気持ちにも触れており、一方的な話にならないよう、工夫をしていたと思います。

 

スピーチで何を得られるかが大事

 ――今回の会見から私たちが学べることはありますか。

 ◆お二人は典型的な表現を避け、独特な言い回しで感情を表していました。異例の言葉やメッセージも盛り込み、無難に会見を終えようとはしませんでした。これはお二人の挑戦です。私たちも仕事などでつい無難なコミュニケーションに逃げてしまうことがあります。お二人の姿から自分の意思を踏み込んで伝えようとする大切さを学ぶことができます。

 最後の社会に対するメッセージの部分でも、自分たちが経験したことを社会に役立てたいという視点が伝わってきます。スピーチや会見は、自分が話しやすいように原稿を書くことが多いと思いますが、スピーチによって相手が何を得られるのかという観点を持つと、人の心を動かす内容に仕上げることができます。

*******

ちば・かおり  15歳から日本語の弁論大会に出場し、全国大会で3回優勝。新卒でIT大手「ディー・エヌ・エー」(DeNA)に入社し、社長のスピーチ執筆などを担当。2019年、政治家や経営者のスピーチライターやトレーニングを手掛ける「カエカ」を設立。20年10月の「保守分裂」となった富山県知事選で現職を破った新田八朗氏の演説コーチ、スピーチライターを務めた。

 

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