コメント・トラックバックについて

  • このブログのコメントやトラックは、スパム防止および個人情報保護の観点から認証制をとらせていただいております。これらの認証基準はかなり緩やかなものにしています。自分のブログの記事とどこかで関係あるとお感じでしたら、どうかお気軽にトラックバックください。ただし、単にアフリエイトリンク(成人向けサイトへのリンクがあると無条件で非承認)ばかりが目立つRSSリンク集のようなサイトの場合、そのポリシーにかなりの独自性が認められない場合にはお断りすることが多いことを、どうかご容赦ください。

Twitter

« 次のエントリーは、「パリ、テキサス」 | トップページ | 【ウマ娘】:水着マルゼンスキー、URAファイナルズへの挑戦の軌跡。 »

2021年8月24日 (火)

「パリ、テキサス」-ハーフミラーと投影的同一視-

ヴィム・ヴェンタース監督による1984年、独仏合作作品。

私が大学院時代にVHSで観て以来だから、30年ぶりぐらいに観た。

一回だけしか観なかったが、私にとって、実は一番敬愛する映画という認識でいた。

*****

テキサスの荒野をさまよう髭面のひとりの男(演:ディーン・スタントン)がいる。

彼は水を求めて一軒家に勝手に入り、冷蔵庫を開け、水を飲み、氷を頬張ると、眠り込んでしまう。

医者のもとで目を覚ますが、医者の質問には何も応えない。4年間の過去の記憶がないらしい。

手持ちの紙に、ただ、「ウォルター・ヘンダーソン」とだけ書いてあった。

ロスで看板工をしているウォルター(ウォルト 演:ディーン・ストックウォル)のもとに連絡が入る。男はウォルトの兄のトラヴィスという人物で、4年間失踪していた。

ウォルトは早速テキサスまで飛行機とレンタカーで向かう。

トラヴィスはジェーン(演:ナスターシャ・キンスキー)という妻と、妻との間にいた子、ハンター(演:ハンター・カーソン)と3人で暮らしていたが、トラヴィスも思い出せない「ある事件」をきっかけにトラヴィスは失踪、同時にジェーンも、ハンターを、弟ウォルトと、同居する恋人アンの住む家の前に放置し、失踪する。

ハンターはウォルトとアンのもとで、父と母と思い込まされて育つ。

******

さて、ウォルトはテキサスの荒野の中の医者のもとにたどり着くのだが、トラヴィスはすでに失踪していた。

ウォルトは、荒野の中で再び歩き続けていた兄トラヴィスを、やっとのことでつかまえる。トラヴィスはウォルトを弟だとはすぐに認識し、ウォルトの車に大人しく乗る。

しかし相変わらずトラヴィスは何を問いかけても口を開かない。

二人は一軒家のモーテルにたどり着き、ウォルトはトラヴィスの新たな服と靴を買うためにトラヴィスを残して車で出るが、その間にトラヴィスは再び失踪、ウォルトは再びトラヴィスを探し出さねばならなくなる。

2つ目の、前よりは清潔で大きいモーテル、ここでウォルトはロスのハンターに、「今お前の父と会っている」と電話で真相を伝える。

トラヴィスは今度はウォルトの言うことをきき、服も新しくして髭も剃る。

ウォルトが「ロスへ連れて帰る」というと、トラヴィスははじめて言葉を発する。

「パリ」

と。

ウォルトは「パリなんてヨーロッパだから簡単に行けない」という(実は、テキサスにパリという場所があるのだが)。

ウォルトは空港に行き、トラヴィスを飛行機に乗せようとするが、トラヴィスはそれに抵抗して、離陸しようと滑走路に向かい始める飛行機から降ろされてしまう。

2人はしかたなくロスへと2日かけて再びレンタカーで向かおうとするが、トラヴィスは前乗っていた車を再び選ぶことにこだわる。

その行程で、トラヴィスは随分ウォルトと気軽に対話するようになる。

トラヴィスは古い写真をウォルトに示し、「テキサスのパリのこの土地を買った」と言う。それは荒野の中の一軒家だったが、「なぜ買ったかは忘れた」と。

トラヴィスは運転を代わろう、眠れよと言い出すが、いつの間にか高速道路を降りて、砂利道を走っていた。

「土地を買った理由を思い出した。母と父がはじめて愛し合ったのがそこ。僕の人生はそこで始まった」

******

ロスに2人はたどり着く。アンはトラヴィスを歓待したが、別れた時3歳だったハンターは現在8歳、ドラヴィスを父親だとは認識したが、そっけない態度をとる。

トラヴィスはベッドで眠れない。深夜にハナ歌を歌いながら台所で食器を洗い上げると、今度は皆の靴全部を磨き上げる。

翌朝、ベランダには全ての靴が並んでいた。

トラヴィスはハンターの小学校からの帰りの出迎えに自分が行きたい、2人は歩いて帰ろうと言い出すが、実際に放課後になると、ハンターはトラヴィスが待っているにもかかわらす、友達の車に同乗させてもらう。

ウォルトはみかねて、4年前に、ジェーンを含む4人でビーチにバカンスに行った時の8ミリの映写をすることを提案する。

この映写会の映像の中で、この映画の中ではじめて、トラヴィスの妻、ハンターの母親である、若いジェーンが映し出される。

それにトラヴィスの心が癒やされるのみならず、ハンターも、ウォルト、トラヴィス両方に、それぞれ「お休み、パパ」と言う。

******

トラヴィスは、衣料品店で立派な服と帽子を買い込み、再びハンターの小学校の前で待ち受ける。ハンターは今度は、最初は道を隔てた両側の歩道をトラヴィスと歩調をあわせておどけながら歩き、最後にはトラヴィスに寄り添って帰宅する。

トラヴィスは夜になると、ハンターに、古いアルバムを見せながら語りはじめる。

「これが私の父。つまりお前のおじいさん。交通事故で死んだ」などと。

アンは二人が親しくなるにつれて、これまでのハンター、ウォルトとの3人の生活が変わってしまうのを恐れる。

翌日、アンはトラヴィスに、

「実はジェーンはうちに何度も電話で連絡をとってきていた。次第に頻度は減ったが、1年前の最後の電話で、ハンターのための預金口座を作るように求め、実際その後月一度幾ばくかの振り込みが続いている。それはヒューストンからの振り込みだ」

と。

トラヴィスが通る高架橋の上で、男が、「安全地帯などどこにもない」という演説を、ひとりきりでまくし立てている。トラヴィスはその前の通過する。

******

トラヴィスは、ウォルトにクレジットカードをしばらく自分に貸してくれという。

彼は、それを使って、中古の59年型フォード、荷台つきを買い、ハンターの通う小学校で待ち伏せ、「これからおかあさんを探しに行こう」とハンターに提案する。

ハンターはそれに応じると即答する。

トラヴィスは、ヒューストンへの途中のガソリンスタンドから、ハンター自身に、ロスのアンたちが待つ家に電話をかけるように求める。

*****

2人はヒューストンの銀行にたどり着く。今日はちょうどハンターへの毎月の振り込みがなされる日。二手に分かれて待ち伏せることにしたが、ハンターがそれらしい赤い車に乗った女性をみつけた時にはトラヴィスは居眠りしていた。

ハンターはトラヴィスを起こすと、2人は高速道路の赤い車を追走する。

赤い車は、ある怪しげな館の前に駐車していた。

トラヴィスはハンターを残して、館の中に入る。

そこは、個室で、ハーフミラー越しに客の男性が女性と対話し、はしたないことをする館であった。

トラヴィスは、女性をチェンジしていき、ついにジェーンとハーフミラー越しに対面することになる。

トラヴィスは一度は会話を中断してホテルに引き上げる。彼は悩み続ける。

彼は、ハンターに語りだす。

「母は普通の女性だった。でも、父は空想にとりつかれていて、母さんをみても母さんが目に入らず、空想を見つめていた」

「そのうち、自分は『パリ』の女性を妻にしていると言いふらし始めたが、そのうち父は本気でそれを信じ込んでいった。母ひどく困っていた」

「ハンター、君はおかあさん(ジェーン)と一緒に生きるんだ」。

夜になったら再び館へ向かう。

 

・・・ここからの、トラヴィスのハーフミラー越しの再びのジェーンとの対話以降は、さすがにネタバレなし。

このハーフミラー越しの対面と対話は、映画史に残る名シーンであろう。

映像演出に、独特のこだわりがあり、「2人の顔が二重映しになる」シーンが印象的、とだけ言っておく。

******

これはトラヴィスのアイデンティティ回復のドラマであるが、普通にそれというだけではなく、次のような含蓄もある。

精神分析の、殊にメラニー・クライン派の用語に、「投影的同一視(projective identification)」というのがある。

これは、自分の中に快が生じると、良い対象から愛されていると空想し、自分の中に不快が生じると、悪い対象から迫害されているものと空想することである。

これを恋愛に置き換えるならば、自分の中に愛しているという思いが生じれば、相手に愛されていると思いこむということである。

二人の間に、相互的にこの思い込み(空想)が生じる時に、幸せな恋愛関係は維持されるということになる。

更に付け加えれば、この心理規制が、「嫉○妄想」とも関連付けられているところには、今回観なおしてはじめて気付かされた。

・・・身につまされる話である。

******

そうはいっても、非常にわかりやすい作品であり、深読みはそんなに必要ないと思う。

英語としても、わかりやすい部類で、発音もよく、速すぎもせず、語学学習にも向いているのではなかろうか。

クライマックスの、ハーフミラー越しの対話は、男女の機微の理解が必要と思います。

Ry Cooderのスチール・ギターによる音楽は、もはや伝説的であろう。

ストリーミング配信は、U-NEX。

Photo_20210824032701

楽天トラベル

JAL 日本航空 国際線航空券

« 次のエントリーは、「パリ、テキサス」 | トップページ | 【ウマ娘】:水着マルゼンスキー、URAファイナルズへの挑戦の軌跡。 »

恋愛」カテゴリの記事

文化・芸術」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

趣味」カテゴリの記事

音楽」カテゴリの記事

心理」カテゴリの記事

自分史」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 次のエントリーは、「パリ、テキサス」 | トップページ | 【ウマ娘】:水着マルゼンスキー、URAファイナルズへの挑戦の軌跡。 »

フォト
2021年11月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

最近のトラックバック

トロントだより

  • 050601_0957
     The Focusing Instituteの第17回国際大会(2005/5/25-31)の開かれた、カナダ、トロントの北の郊外(といっても100キロはなれてます)、Simcoe湖畔のBarrieという街に隣接するKempenfelt Conference Centreと、帰りに立ち寄ったトロント市内の様子を撮影したものです。

神有月の出雲路2006

  • 20061122150014_1
     11月の勤労感謝の日の連休に、日本フォーカシング協会の「フォーカサーの集い」のために島根県の松江に旅した時の旅行記です。https://focusing.jp/  
    ご存じの方は多いでしょうが、出雲の国には日本全国の神様が11月に全員集合することになってまして、「神無月」と呼ばれるわけですが、島根でだけは、「神有月」ということになります。(後日記:「神無月」は10月でしたよね(^^;A ........旧暦なら11/23前後は10月でせう....ということでお許しを.....)  
    ちょうど紅葉の時期と見事に重なり、車窓も徒歩もひたすら紅葉の山づくしでした。このページの写真は、島根の足立美術館の紅葉の最盛期です。

淡路島縦断の旅

  • 050708_2036
     「フォーカシング国際会議」が、2009年5月12日(火)から5月16日(土)にかけて、5日間、日本で開催されます。
     このフォトアルバムは、その開催候補地の淡路島を、公式に「お忍び視察」した時の旅行記(だったの)です(^^)。
     フォーカシングの関係者の紹介で、会場予定地の淡路島Westinという外資系の超豪華ホテルに格安で泊まる機会が与えられました。しかし根が鉄ちゃんの私は、徳島側から北淡に向かうという、事情をご存知の方なら自家用車なしには絶対やらない過酷なルートをわざわざ選択したのであります。
     大地震でできた野島断層(天然記念物になっています)の震災記念公園(係りの人に敢えてお尋ねしたら、ここは写真撮影自由です)にも謹んで訪問させていただきました。
     震災記念公園からタクシーでわずか10分のところにある「淡路夢舞台」に、県立国際会議場と一体になった施設として、とても日本とは思えない、超ゴージャスな淡路島Westinはあります。

水戸漫遊記

  • 050723_1544
     友人と会うために水戸市を訪問しましたが、例によって鉄ちゃんの私は「スーパーひたち」と「フレッシュひたち」に乗れることそのものを楽しみにしてしまいました(^^;)。
     仕事中の友人と落ち合うまでに時間があったので、水戸市民の憩いの場所、周囲3キロの千破湖(せんばこ)を半周し、黄門様の銅像を仰ぎ見て見て偕楽園、常盤神社に向かい、最後の徳川将軍となる慶喜に至る水戸徳川家の歴史、そして水戸天狗党の反乱に至る歴史を展示した博物館も拝見しました。
     最後は、水戸駅前の「助さん、格さん付」の黄門様です。
     実は御印籠も買ってしまいました。

北海道への旅2005

  • 051012_1214
     日本フォーカシング協会の年に一度の「集い」のために小樽に向かい、戻ってくる過程で、他の参加者が想像だに及ばないルートで旅した時の写真のみです。かなり私の鉄ちゃん根性むき出しです。  表紙写真は、私が気に入った、弘前での夕暮れの岩木山にしました。