「夜は短し歩けよ乙女」 -アングラ演劇的世界を、アニメーションでしか表現不可能な豊潤な表現でタイトに描ききった傑作-
「ペンギン・ハイウェイ」つながりで、森見登美彦原作のアニメで、秀作アニメがあると知り、観てみたのですが。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」にはまっている私にとっては、対極にある、極めて抽象的と言うか、極度に描線を切り詰めた画面。
「ペンギン・ハイウェイ」の、ジブリ的ジュヴナイル的日常描写に秀でた作品世界とも全く遠い世界で、とても同じ原作者の作品とも信じられないのですが、ともかくこのアニメ、観てみる価値、おおありですよ。
ストーリーを端的に説明するのは困難ですが、大学生の主人公、「先輩」は、同じ大学の「黒髪の乙女」に恋をしている。
でも、面と向かってコミュニケーションをすることはできず、遠くから眺めていた。
しかし、「ナカメ作戦」という、彼女の目にとまるように「外堀を埋めていく」やり方で徐々に迫っていく。
ただ、その遠回りは、実に多くの、怪人めいた人々との出会いと、騒動に巻き込まれる形でしか進んでいかない。
彼女の幼少期の愛読書で、彼女の手から離れていた、「ラ・タ・タ・タム」を取り戻し、彼女に進呈しようとしていくための作戦へと収束していくのだが、ともかく多難な障害にぶつかり続ける。
「黒髪の乙女」は彼女の方で、酒ばかり飲みながら、破天荒な形で、人との出会いを繰り返していく。
「先輩」は運命の糸をたぐり、果たして「黒髪の乙女」との出会いに導けるかどうか?
・・・・まあ、そんな話なのだが、個性あふれる群像劇が、ひたすらどんちゃん騒ぎの中に、凄まじいまでのアニメ的な豊潤な想像力の中でめくるめく展開していくのはたいへん刺激的であり、タイトな、退屈しない1時間半がまたたく間に過ぎる。
ここで描かれる大学生の世界は、昭和的なもので、何かひどく懐かしさを覚える。
非常にアングラ演劇的世界なのだが、アニメによってしか不可能な表現だろう。
劇中劇は、ミュージカル的表現をふんだんに用いている。
監督の湯浅政明という人は、非常にとんがった才能の持ち主と言わざるを得まい。
主役の「先輩」の声は、星野源が務めている。
******
・・・今、「アングラ演劇的世界」と書いたが、実際、この原作、このアニメ版と同じ脚本家のもとで、演劇としても上演されたらしい。
乃木坂46の久保史緒里が、「黒髪の乙女」役で、ハマり役として出演し、たいへん評価が高かったそうである。
●舞台『夜は短し歩けよ乙女』6月6日 開幕!恋は突然やってくる、不思議な縁の物語
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