さよならの朝に約束の花をかざろう
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」「空の青さを知る人よ」で脚本をつとめた岡田麿里氏がはじめて監督もつとめた劇場アニメとのことである。
上記3作品が現代日本を舞台とした日常描写に秀でた作品なのに対して、この映画は異世界を舞台とする。
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10代半ばで外見の成長が止まる不老長寿の種族、イオルフは、ある塔の中に住んでいた。機(はた)を織ることを生業としている。
ある日、突然、この長寿の血を求めてメザーテ軍から奇襲を受ける。それによってイオルフの世界は実質的に崩壊する。
生き残ったのは、主人公マキアとその親友レイリアだけのようだ。レイリアはメザーテ軍によって連れ去られる。
マキアは、あてどもなくさまよう。そして、道端で、すでに死んだ母親の腕に抱かれた赤ん坊を見つけ、自分で育てることにする。名前をエリアルと名付ける。
数年後、少年のエリアルは、自分も機をおるようになり、マキアを喜ばせる。
どうも一つの土地に留まることは許されないようで、更に数年後、マキアはエリアルを連れて、鉄鉱山の鉱夫たちが集う大きな酒場の給仕として働いている。エリアルは鉱夫である。思春期になったエリアルとマキアの間には、いろいろな行き違いが生じるようにもなる。
二人は更に別の土地に移住し、エリアルは城の兵士となる。そしてエリアルは、幼馴染の少女、ディダと夫婦になる。
戦争が起こり、ディダが出征した最中、妊娠したディダは破水し、マキアの懸命の介助のもとで赤ん坊を産む。
一方、マキアの親友だったレイリアは、メザーテの王と結婚させられ、子供を設けていたが、子供には会わせてもらえないままの生活を送っていた。
マキアは飛ぶ竜、レナトにまたがり、レイリアに子供と再会する機会を与える。
時は更に過ぎ去り・・・
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ストーリーを要約すると、上記のようにシンプルであり、齢をとらないマキアと、どんどん成長していくエリアルの関係が物語の中心である。
そうやって、物語は途中で何度か数年いきなり飛ぶのだが、それについての説明は一切ない。エリアルがどんどん成長した姿で現れることでそれとわかる。
音楽は川井憲二による、オーケストラ演奏で、場面場面と非常に融合している。
・・・ただ、私はこの映画をさほど評価する気になれない。
背景は丁寧だが、キャラクターデザインは、昨今の流行に媚びないのはいいが、突き詰めた磨き上げになっているかどうかとなると疑問である。
脚本の意図するところはわかるし、ラストは、そうなるとはわかっていてもそれなりに衝撃的である。
ただ、脚本家が監督を兼ねていることの限界を、正直言って露呈しているのではないか。
静かな流れの作品というのはわかるが、何かメリハリがつかず、単調な時間が流れている気がする。
正直言って、眠気を覚え、何度か巻き戻した。
もう少し想像力あふれる画面と演出にできた気がしてならない。
この点、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」をはじめとする一連の京都アニメーションの作品をいくつか観たあとだと、要求水準があがってしまう。
古い作品だと、「ウインダリア」とかとも比較してしまうこととなる。
好みの人は好みとは思えるので、劇場ではなく、ネット配信で観るのはいいかもしれないが、2年前の作品ということもあるのだろうが、どのネット配信会社でも800円といささか値が張るのは気になる。
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