レビー小体型認知症の治し方
3か月前近くのことだが、93歳の母が、「玄関先に何人か人が来ていたでしょ?」「隣の部屋で誰かと話していたでしょ?」などと言い出した。
それがある日、「祭りばやしの音が聞こえる」と言い出した。
認知症のひとつ、「レビー小体型認知症」の兆候とみなし、医者に診てもらい、アリセプトという特効薬の処方を受けた。
ところが、これが逆効果だったのである。
ある朝、外から「おーい」と人を呼ぶ声が聴こえてきた。
母である。
どうやって抜け出したのかわからないが、柵のついた窓を乗り越えて外に出たようだ。太もも全体にも凄い青いあざが広がっていた。
そして、
「今、雪山に行って、道に迷っていた」
・・・・と言い出した。
「今、大勢の人が部屋の中にいる」
「天井が渦を巻いて回っている」
「虫がたくさん見える」
「小人が見える」
幻視・妄想・・・「レビー小体型認知症」の深刻化である。
私は母を連れて再び病院に向かい、アリセプトの服用をやめることとなった。
その頃、私は東京や大阪への日帰り出張が増え、朝から夜まで家を空けていることが増えていた。
その孤独が引き金となった気がした。
私は予定されていた出張を皆キャンセルした。
それからも、母の数少ない友人(母が日本舞踊の師匠をしていた時の弟子)が訪ねてきた時も、あざを見せながら、
「雪山に行って・・・」
・・・・という話を始めるものだから、
「実は全部夢の中のできごとなんです」
と、さりげなく伝えた。
相手は、ウインクしてきて、「すべて了解!!」という意味だと思った。
私は地域包括支援センターのケアマネージャーに連絡をとった。
そして、週一回のデイ・ケアに通うことを勧められた。
幸いに・・・というか、何と家から歩いて2分のところに大きな介護施設があり、外科も兼ねていて、外科の方は母も時々通っていた。
母は当初しぶしぶだったが、通い始めた。
最初は前の晩、来ていく服を選ふだけで2時間はかかる大騒動だった。
しかし、2か月も通わないうちに、母から完全に幻覚は消え去った。
母は、じつにあっさりと、デイケアで人気者となったのである。
服の方も、秋物と冬物だけをハンガーにつるして、母が自由に気楽に選べるようにした。
私もカウンセリングのプロだから、幻視は決して否定せず、受容的に受け止めていたのもよかったのだと思う。
母は台所に全く立たなくなっ.たが。
私は、母と話をする時間を意識的に多くとるようにその後心掛けている。
そして、ある日、「レビー小体型認知症」について詳しく説明してみた。
母は何と、それを理解したのである。
・・・・「レビー小体型認知症」は、脳内に、“αシヌクレイン”という物質が蓄積されて起こるとされる。
一般化はできまいが、このような治癒の経過もあると理解していただければ、老いた父母をかかえる皆様の参考に何かなるかもしれないと思って書いた次第である。
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