「傾聴・心理臨床学アップデートとフォーカシング―感じる・話す・聴くの基本」
この本を先に読んでおくべきだった。
この内容の水準は極めて高い。
自分がこれまで書いてきたことが恥ずかしくなった。
ここで行われているP.122-p.127のClearing a Spaceは「奇跡の8分間」とでもいうべき強力なもので、それがクライエントのその後の日常に決定的な影響を残している。
私自身はclearing a Spaceの際にここまで気がかりの「置き場所」を誘導することはないが、ここでは確かに強力な効果を発揮している。決して押し付けではない、大変クリエイティブなプロセスである。この著作の中では「セラピスト介在型CAS」と呼ばれていて、「ビギナーの場合には有効である」と説明されている。
実はジェンドリン自身は、著書「フォーカシング」の中では、個々の気がかりについて「置き場所」探しを具体的にしていくことまで求めてはいない。「少し離れたところから眺めてみる」ぐらいのことである。
私は、日本では具体的な置き場所探しをすることに拘泥し過ぎではないかと考えてきた。
それよりは、ひとつ身体のモヤモヤや気がかりな事柄を見いたしたら、「それが『いる』のはわかったよー」と一声かけてあげるようにフォーカサ―を誘導して、「それを別にすると、あとは申し分のない感じかな」と身体に聴いてみる、ということを繰り返す段取りを重視していた。
「どこに置くか」より、積み出した「後の」空間に何が出てくるのかをひとつひとつ認めて行き、(積み出した後も残る、何についてとは言えない漠然としたモヤモヤも"Background Feeling"として積み出してもらい、最後に広大な空間が残るのを味わってもらうことを優先していた。
私の場合には、壺イメージ療法を原法通りに活用する場合に、置き場所の提案を示唆的に誘導することがあるだけであった。
とにかく、この本はいろいろな意味でインパクトが強い本である。
技法家としてのアイデンティティをもろに揺るがされた。
最近のコメント