海外ミュージカルドラマ"SMASH"と「バクマン。」との共通項
私はアメリカのドラマシリーズはほどんど観たことがないし、全15話というボリウムに億劫さを感じてなかなか封を切らなかったが、一度観始めたら一気に惹きこまれてしまった。
物語は、マリリン・モンローの生涯を描くミュージカルの企画、オーディションから、練習の過程、度重なるストーリーや曲やキャストの交代・変更劇と、その過程で生じる、舞台裏やプライベートでの様々な人間関係のゴタゴタや愛の形をシビアな形で描いていく。
アイオワ育ちで秘めた才能を持ちつつもまだまだ未完成の新人、カレン・カートライトと、ミュージカル歴は長いものの主役級にはまだ届かないで来た実力派、アイヴィー・リンのどちらが主役を射止めるか?という競争の間に割って入って主役の座に据えられる有名女優レベッカとの間の三つ巴の争い。
プロデューサーや作詞・作曲家、演出家も様々な泥臭い人間関係の渦中にあり、ミュージカルの企画は絶えず崩壊の危険と隣り合わせである。
いわば「メタ・ミュージカル」といっていい音楽ドラマだが、得てしてこの種の作品は音楽や演唄する人物は「ホンモノ」にはかなわないというあら探しをし始めればキリが無くなる。日本で言えば「のだめ」のドラマや劇場版のもつ限界である。
ところが、このドラマシリーズの場合には、毎回溢れだす、ミュージカルの練習中や登場人物たちが歌い出す場面での歌い手や楽曲、ダンスを含めた演出の切れ味がたいへんなクオリティ(恐らく役者の多くは歌の吹き替えなしでここまでホンモノ!)であり、このドラマ自体が一流の制作スタッフと配役、贅沢な資金を投じて作られたものであることが一目瞭然である。
また、これは45分ものドラマ15回分をかけるからこそ可能な作りであり、長編劇場映画ではこの密度、人間関係の描き込みの深さは逆に出せないだろう。
日本の現状でこの水準のものを作るのはまるで不可能ではないかという絶望感(?)にも襲われるが、仮に可能であるとすれば、コミックの世界でだけだろう。
敢えて、唐突かもしれないものを引き合いに出せば、コミック制作過程とそれをめぐる人間関係自体をバトルものコミックとして連載できてきた「バクマン。」に通じるものがあるようにも感じた。
↓ 音楽集のみのCDも出ています。
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