コメント・トラックバックについて

  • このブログのコメントやトラックは、スパム防止および個人情報保護の観点から認証制をとらせていただいております。これらの認証基準はかなり緩やかなものにしています。自分のブログの記事とどこかで関係あるとお感じでしたら、どうかお気軽にトラックバックください。ただし、単にアフリエイトリンク(成人向けサイトへのリンクがあると無条件で非承認)ばかりが目立つRSSリンク集のようなサイトの場合、そのポリシーにかなりの独自性が認められない場合にはお断りすることが多いことを、どうかご容赦ください。

Twitter

« 人には、他人を「誤解」し、他人について「思い込み」を抱く権利と自由がある(再掲) | トップページ | 「訊く」ということ(再掲) »

2013年1月13日 (日)

体験過程インタビュー(改題の上で再掲)

 以前、体験過程尺度(Experiencing Scale) という、クライエントさんの話の深まりについて、面接の逐語記録と録音記録に基づき、第3者が7段階に評定する尺度があることについて、架空の実例に基づいて示した。

 その中のStage1からStage4までをとりあえず手短にもう一度紹介すると、

●Stage1:新聞の報道のような第3者的叙述。話者自身(「私」)は登場しない。

●Stage2:話題の主人公は「私」であるが、「私」の気持ちについての明白な叙述はない

●Stage3:「私」の気持ちについても「挿入的に」語られる。

●Stage4:話題はもっぱら「私」の気持ちそのものである。

 

「体験過程インタビュー」という手法がある。

 

これは、体験過程を次のStageに高めるための喚起的な問いかけをカウンセラー側がしていく技法である。

 

これに従えば、例えば、

Stage1→Stage2 : 「その時、あなたはどうしていたのか、もう少し話していただけますか?」

Stage2→Stage3 : 「あなたはその時どんな気持ちでいたのか、もう少し話していただけますか?」 

Stage3→Stage4 : 「あなたはその時感じていたその『悲しい』気持ちについて、もっと話していただけますか?」

などといったものが典型だろう。

例えば、「お母さんって、どんな人なの?」と問いかけた結果として、お母さんの過去の生い立ちについて詳しく語ってくれても、それが話者自身や話者自身の気持ちについての言及を全く含まないことがあり得る。

しかし、私は、そういうstage1を更に話してもらうだけで、大きな意味がある場合がある。 

しかし、実際問題として、多くの人の場合には、普通に「身の上話」を対話している場合、少なくともこの中のstage 3までならごくあたりまえに到達できる人が多いため、こうした「体験過程尺度の低いステージが持つ意味」について積極的に検討されることが少なかったようにも思える。

******

 次のような仮定に立ってもいいのではないか? 

「より低い体験過程水準が、カウンセラーとの対話の中ですでに十分に実現されていることが、より高い体験過程水準が面接の中で十分に機能する上で必要である」

もし、その人が、Stage1からStage3までの「低い水準の」体験過程レヴェルで、その時点で、語り得る話を、カウンセラーとの対話の中でそこそこには共有しないうちに、stage4以上、つまり、具体的感情ついての話を繰り広げることには、実は無理があるのではないか???  

ちなみに、フォーカシング、つまり、自分の中の漠然とした言葉にならない感じに注意を向けながら語る言葉を吟味していこうという姿勢が喚起されている状態は、Stage5である。

****  

実は、このことが、特に、フォーカシングを基本として学んで、現場臨床の技量を高めていくカウンセラーに(そのすべてではないにしろ)、カウンセリングスキルの上で、ある基本的な偏りを生み出す可能性があるのではないか????  

フォーカシングを学んでいると、Stage5に到達しているかどうかばかりに関心が向きやすくなるのである。  

ところが、生産性の高い面接過程ですら、1回の面接の中でStage5に乗る瞬間は、ほとんど全くないか、出てきてもホンの限られた箇所というのは、ごく普通である!!  

それどころか、「フォーカシングは、自分の悩みの細かい内容について相手に話をしなくてもすることができます」とすら吹聴されている(^^;) 

このことが、フォーカシング関係者に、低い体験過程水準で相手に話をすること、あるいは、そういう話し方をする人間に延々とつきあって聴き手になることを回避する傾向を生み出している場合もあるのではなかろうか???  

しかしそれは、ひょっとしたら、stage4までの対話を十分にうち解けて繰り広げられた上で成立したクライエントさんとカウンセラーの関係性における、十分に安定した「基礎」ないところで更に高い水準を目指してしまうという「無理」を生み出している場合もあるのではないかとも思える。  

体験過程水準は「上げれば」いいものではなくて、「上がる」ことを可能にする、低体験過程水準でのコミュニケーションによる「なじみ」も、ことフォーカシングの「技法としての」習得それ自体を目指すわけではない場合関係性の上で必要であるという仮定である。  

恐らく、これが、通常のカウンセリング的な面接と、最初から「フォーカシング」のフォーマットのもとになされる相互作用の大きなギャップとなっている場合もあるように思う。  

もとより、フォーカシングにおいても、気がかりな事柄そのものについての十分な傾聴は、リスナーにとって本来基本である。

しかし、何らかの意味で、カウンセリングや心理療法的側面がある形でフォーカシングのセッションを行い場合には、「フォーカシングしてもらうこと」よりも、まずは、フォーカサーの話を傾聴することそのものに時間を費やすばかりになっても、状況によってはやむなしという判断をリスナー/ガイドはできる必要がある。  

場合によっては、体験過程水準でせいぜいStage2の水準の話を、フォーカサー(クライエントさん)にもっとしてもらうように促すことがむしろ生産的という場合もあることについて、再認識してみるのも意味があるのではないかと思える。

blogram投票ボタン
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ
携帯アクセス解析
ビジネスブログランキング
人気ブログランキングへ
にほんブログ村 
メンタルヘルスブログ 心理カウンセリングへ

« 人には、他人を「誤解」し、他人について「思い込み」を抱く権利と自由がある(再掲) | トップページ | 「訊く」ということ(再掲) »

学問・資格」カテゴリの記事

心と体」カテゴリの記事

心理」カテゴリの記事

フォーカシング」カテゴリの記事

若きカウンセラーに向けて」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 体験過程インタビュー(改題の上で再掲):

« 人には、他人を「誤解」し、他人について「思い込み」を抱く権利と自由がある(再掲) | トップページ | 「訊く」ということ(再掲) »

フォト
2023年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ

最近のトラックバック

トロントだより

  • 050601_0957
     The Focusing Instituteの第17回国際大会(2005/5/25-31)の開かれた、カナダ、トロントの北の郊外(といっても100キロはなれてます)、Simcoe湖畔のBarrieという街に隣接するKempenfelt Conference Centreと、帰りに立ち寄ったトロント市内の様子を撮影したものです。

神有月の出雲路2006

  • 20061122150014_1
     11月の勤労感謝の日の連休に、日本フォーカシング協会の「フォーカサーの集い」のために島根県の松江に旅した時の旅行記です。https://focusing.jp/  
    ご存じの方は多いでしょうが、出雲の国には日本全国の神様が11月に全員集合することになってまして、「神無月」と呼ばれるわけですが、島根でだけは、「神有月」ということになります。(後日記:「神無月」は10月でしたよね(^^;A ........旧暦なら11/23前後は10月でせう....ということでお許しを.....)  
    ちょうど紅葉の時期と見事に重なり、車窓も徒歩もひたすら紅葉の山づくしでした。このページの写真は、島根の足立美術館の紅葉の最盛期です。

淡路島縦断の旅

  • 050708_2036
     「フォーカシング国際会議」が、2009年5月12日(火)から5月16日(土)にかけて、5日間、日本で開催されます。
     このフォトアルバムは、その開催候補地の淡路島を、公式に「お忍び視察」した時の旅行記(だったの)です(^^)。
     フォーカシングの関係者の紹介で、会場予定地の淡路島Westinという外資系の超豪華ホテルに格安で泊まる機会が与えられました。しかし根が鉄ちゃんの私は、徳島側から北淡に向かうという、事情をご存知の方なら自家用車なしには絶対やらない過酷なルートをわざわざ選択したのであります。
     大地震でできた野島断層(天然記念物になっています)の震災記念公園(係りの人に敢えてお尋ねしたら、ここは写真撮影自由です)にも謹んで訪問させていただきました。
     震災記念公園からタクシーでわずか10分のところにある「淡路夢舞台」に、県立国際会議場と一体になった施設として、とても日本とは思えない、超ゴージャスな淡路島Westinはあります。

水戸漫遊記

  • 050723_1544
     友人と会うために水戸市を訪問しましたが、例によって鉄ちゃんの私は「スーパーひたち」と「フレッシュひたち」に乗れることそのものを楽しみにしてしまいました(^^;)。
     仕事中の友人と落ち合うまでに時間があったので、水戸市民の憩いの場所、周囲3キロの千破湖(せんばこ)を半周し、黄門様の銅像を仰ぎ見て見て偕楽園、常盤神社に向かい、最後の徳川将軍となる慶喜に至る水戸徳川家の歴史、そして水戸天狗党の反乱に至る歴史を展示した博物館も拝見しました。
     最後は、水戸駅前の「助さん、格さん付」の黄門様です。
     実は御印籠も買ってしまいました。

北海道への旅2005

  • 051012_1214
     日本フォーカシング協会の年に一度の「集い」のために小樽に向かい、戻ってくる過程で、他の参加者が想像だに及ばないルートで旅した時の写真のみです。かなり私の鉄ちゃん根性むき出しです。  表紙写真は、私が気に入った、弘前での夕暮れの岩木山にしました。