インシュレーターは使わないに越したことはない(再掲)
「インシュレータ」とは、 オーディオ装置(アンプ/CDプレーヤ、アナログプレーヤ、スピーカなど)への外部からの振動よる影響を消すために挟み込む(とされることが多い)、金属製や木製、石製などの小さなアクセサリーです。
装置の足の下に挟むのがいい場合と、足そのものを交換する方がいい場合があるとされます。 大きく分けると、
○低反発ゴム(ソルボセインなど)を使う場合
○チタンなどの密度の高い金属を使う場合(特定周波数で「鳴き」(共振)が出ないように「切れ込み」に工夫したり、異種金属を張り合わせる場合もある)
○黒檀などの、密度の濃い木材を使う場合(特にスピーカ)
○金属か木材で、ピンポイントの接点(と受け皿)を使う場合
○空気か磁気反発で、「宙に浮かせる」場合
などがあります。
値段という点では、地震の時動かないため用の密着型の透明なゴムだと一組数百円、逆に高級素材を使った凝った製品だと、脚一つ分で数万円という、とんでもない世界に突入するわけです。
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しかし、はっきりいって、インシュレーターをどうするか、ということぐらい、お金の投資に引き合わない、果てしない泥沼が待っている世界はありません。
インシュレーターの素材そのものの固有の音質が必ず反映するからです。これは、素材がゴムだろうと金属だろうと木材だろうと変わりありません。
更に言えば、機器と、おかれている場所の間に「接点」が増えるわけです。ゴム系やエアクッション系、磁気反発系などだと、接点そのものが不明瞭になり,実は絶えずグラグラしていることになるわけですね。
最初から付属している製品を除き、インシュレーターなしで可能な限りいい音にできることが、オーディオの基本かと思います。
例えば、タンノイのプレステージ・シリーズのスピーカー(スターリングなど)は、スターリングに別売りの台があるのを除くと、床に直置きが基本です。
何しろ、DJ用ではない、家庭オーティオ用のアナログプレーヤーですら、海外のものだと、硬いゴム脚だけでインシュレーターなしのものがあります!!
REGA PLANAR3 それでハウリングを起こさない、そういう設計になっているんですね。ターンテーブルとピックアップを載せている土台の素材そのものが重くて分厚くて頑丈だから、特別なインシュレーターなしのこんな設計ができるんですね。
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だから、まずはオーディオセットを設置する場所を強固なものにする方が見返りが大きいでしょう。
オーディオ用を装ったオーティオラックの中には、実は羽目板の表面はきれいでも、実はベニヤの化粧板の中は空洞のうっぽんっぽんというのがあり(表面をたたけばわかる)、そういうのは論外です。
東急ハンズとかで売ってる、厚さ2センチないしそれ以上ある、中身がしっかり詰まった分厚くて重た〜い針葉樹の合板(最初から化粧板処理してあるのがあります)で、設計図は自分で引いて、適切なサイズにカットだけはしてもらい、電動ドリルでねじを硬く締めて、組み立てる方が、工具購入費込みでも結局安上がりで、使い勝手のいいものができる場合があります。DIY初挑戦としては、張り合いがあるチャレンジになるかもしれません(木材を本当に垂直・直角にカットするのはプロに任せた方がいいでしょう)。
なお、設計図を引く際は、
1. 実際に機器の寸法を測定して、特に奥行きと、個々の機器の上の空間(高さ)に5センチは余裕のある空間を取ること。
特にアンプなど放熱の激しい機器の上は隙間を多めに取り、風通しを良くすること。
2. どの面が切り口として露出するのかということを意識して板取りをして下さい。ハンズの針葉樹系の化粧板付き集成合板の場合には、あまり「板目の向き」というものは気にしなくてもいいと思います。ちなみにノコで露出した切り口にぴったり貼付けるテープ状の化粧板もどきもハンズなどでは売っています。
そして、ただ「ロ」の字や「日」の字、「目」の字の形に板を組み合わせるだけではななめの力に弱いので、裏板を、これも天板や側板や棚板、底板と同じ、分厚い材質の木材で補強して、横向きの開口部を持つ箱形に近い形にしてしまうこと(正面が「日」型とすれば、右側面から断面で観ると「ヨ」になるように裏板を付ける)をお勧めしますが。
ただ、配線の都合も考えてくださいね。中板の後ろにある程度何らかの隙間をとったり、裏板を2枚に分けて、スリット状に縦に隙間を確保するなどして、機器の裏側の配線を上下貫通してケーブルを通せる構造に設計する方が、わさわさ穴をくり抜くより手っ取り早いかと思います。
裏板のそれぞれについて、必ず2x2=4箇所のねじ止めをするのを忘れなければ、斜め方向への強度は保てます。
今も、昔の「技術・家庭科」にあたる実習は中学校で必須にあるのかしら? ないとすれば、いざという時、生き残るためにも困ると思いますが。 私は、大陸引き上げ・焼け跡世代の父親の、設計図も引かない、あまりに完璧なDIYを観て,手伝って育ったので、自分のことを不器用だと思っていたのに、いざ実習となると、周囲の生徒よりはしっかりしたものが作れてしまい、「5」をもらえるのに「こんなものでいいのかいな」と思った記憶があります。
自宅のオーディオラックも、既製品と自作のを組み合わせたものと知って、運送屋さんや、引っ越しの際に出入りする内装や電気関係の技師の人に感心されたりして。 ただ、ひとこと助言すれば、
1.電動ドリル(ねじ回し)は、トルク(まわす力)の強い、プロ用の、さまざまなサイズの穂先(?)をセットにした、凝った製品を買う方がいい(結構安いですよ)。充電式のものはトルクが弱いことが多いです。
2.ねじを電動ねじ回しでねじ込む前に、より口径の小さな細いドリルで「先進誘導坑」を先にあけておく方が失敗しにくい。
まちがっても、今時電動ねじ回しなしで工作など考えないで下さいね。時間と労力の損失以外の何者でもありませんから。
**** それでもインシュレータを試してみたい方のために。
東急ハンズで売ってる、黒檀の小さなブロックとかからお試しになるのがいいかと思います。
特に安上がりかつ効果明白なのは、
この種の円錐。
一個150〜180円!!
原則として装置側を平面側、床側をピンポイントにします。
絨毯ならこのままでたいていイケますが、床や台の化粧板を傷つけそうなら、床側におなじような材質の平面で1.5センチ厚ぐらいのブロックをおいて「受け皿」にすればいいでしょう。できれば「受け皿」なしに超したことはありませんが。
これで、上に合計50キロとかのむやみに重たいアンプとか載せない限りは、円錐が割れるということはないと思います。
スピーカーの下に3点支持ないし4点支持、これだけでも、音質に与える害は最小限で、シスコンでも「音像だけが見事に引き締まる」ことがあります。
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最後に、大事な話。
インシュレータは、機器の「外部からの」振動を遮断するためのものと思い込まれていますが、
機器の「内部の」トランスとかから発する振動で機器そのものがゆすられることによる電気回路への弊害を止めるという面が決定的な場合があります。
こうした場合には、例えば、
この製品のような、水晶や石英など、振動周波数が可聴帯域外にある素材をアンプのやCDプレーヤのインシュレータにする方が、音の静寂感などに大きな違いが出るとされています。
もっとも、ほんとうによくできたオーディオ機器なら、この種の「内部振動」の問題を最初からクリアーしているべきなのですが。 Linnの製品とかが、ソフト系の一見たよりない脚だけなのは、この「内部振動相殺」への配慮が行き届いているからです。
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