フォーカシングにおいては、内なる「批評家」だけが厄介なのではない。(再掲)
フォーカシングを学んだ人なら、「内なる批評家(inner critic)」という概念があるのをご存知だろう。
この「内なる声」については、自分自身を厳しく叱責する「批判的な」声といういうふうに一般には受け止められ勝ちかと思う。
しかし、実は、もっと広い意味で、自分のフェルトセンスからではない形で出てくるさまざまな内側の声全般に当てはまるとみなす方が的確なのではないかと思う。
例えば、
「人生、そんなにうまくいくことばかりじゃないよ」
「無理のし過ぎはよくないよ」
「病気だから仕方がないではないか」
「おまえはもう十分に頑張っているよ」
などといった内側からの声ですら、実はフォーカシングを進める上では障害になる場合が少なくないということである。
私は、こうした一見もっともそうなことを言い始める内側からの声のことを、
我が内なる『知ったかぶり』
『人生の達観者』からの声
内なる『表面的ななだめ役』
内なる『ええかっこしいでいいとこ取りな同情者』
などと名づけている(^^;)
こうした声についても、
「ご説ごもっともで、感謝申し上げます」
と、一応"say hello"して「認めてあげた(acknowledging)」上で、脇に控えていただくことをしないと、ほんとうの内面との対話が始められず、フェルトセンスからの、更に細やかで切実なメッセージを受け止めていくことはできない場合もあることを、日々心しているのが、一フォーカサーとしての私である。
ちなみに、この種のことは、アン・ワイザーさんもくわしく書いています。例えば、「フォーカシング入門マニュアル」の第3章「フォーカシングを妨げるもの」にも、しっかりと例が書いてある(特に、3.7「それを直すこと」の項で触れられた、「それをつくろいたい、直してあげたいという気持ち」というあたりのことが、今回私が書いてみたことと一番近いだろうか。
=======引用はじめ========
「痛みや苦しみに出会ったとき、何としてでもそれを繕いたい、直して(fix)あげたいという気持ちを覚えるのは当然のことです。唯一の問題は、これがいかに[自分への]善意のつもりでも、フォーカシングのプロセスの妨げになるということです!
(中略)
フォーカシングでは、あなたが或るフェルトセンスと一緒に座っている時の[必要な]態度というのは、そのセンス(感覚)がどんな感じか、何を必要としているのか、[フェルトセンスに傾聴する「あなた」の方は]まだ知らないといったものです。大急ぎで繕ったり直そうとしたりすることは、「私が何を必要としているのか、もう知っていますよ」と言わんばかりの態度です。それよりも、耳を傾けて、あなたに向かってそれ[=フェルトセンス]に話してもらいましょう。こうすることで、あなたの内的な自己との信頼おけるポジティヴな関係が広がり強まるのです」(pp.81-2 太字による強調と [ ]内はこういちろうによる補足)
=======引用おわり========
「贔屓(ひいき)の引き倒し」になりかねないのに、同情的で「理解ありげな」見地ばかりを振り回す、「評論家」というものはこの世にいくらでも存在するではないかと(^^;)
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