"Focuser as Teacher"論 続編(1)(再掲)
フォーカシングのトレーニングのひとつ、"Focuser as teacher"については、すでに、《単なる「ロールプレイ」より効果的なカウンセラー訓練》という記事でとりあえずの説明しました。
私のフォーカシング個別指導においても、訓練生に、ある程度、私をガイド、訓練生をフォーカサーとする体験になじんでもらった時点で、 「今日は私がフォーカサーをやってみるので、あなたの方が私のリスナーをしてみない?」 という提案を試みます。
(フォーカシング全く未体験だった訓練生には、この提案をするのは、だいたい最低3回はフォーカサー体験を続けてもらってからが多いでしょうか)
こうした場合、私は、リスナー役初体験の人に、ガイド役、つまり、教示の提案までは最初は全く求めません。純然たるリスナー、つまり、フォーカサーとしての私の言葉を的確に投げ返してもらうことだけを求めます。
そして、"focuser as teacher"としての私は、その投げ返しが的確だったら積極的に感謝を伝え、修正してほしければ、修正案を伝えて、それを実際に投げ返してもらってから、自分のフォーカシングのプロセスを先に進めるわけですね。
「はっきりと大事に返して欲しい、要(かなめ)となる言葉はどの言葉か」
とか、
「言い換えられても気にならない部分」 「、ただ『うん、うん』と返してもらうだけで十分な部分」
「ただ沈黙して聴いてもらっていればいい部分」
・・・・・などについての判断のセンスも磨いてもらっていくことになります。
この際、リスナー役の問題点を指摘するだけではなくて、好ましい応答を自発的にしてくれたと感じたら、すぐに積極的に感謝を表すことを忘れないことです!!(そうでないと、リスナー役の訓練生は萎縮して受け身になるばかりとなりますから)
"as teacher"をしていくフォーカサーには、いわば自分のプロセスを"pause"して保持する、最低限のセルフフォーカシング能力......少なくとも、自分のフェルトセンスを自分の中で感じ続け、見失わないようにする能力は必要かと思います。
そして、私の考えでは、これは単にリスナー役としての傾聴の訓練ではありません。
フォーカサーとしてのフォーカシングのプロセスが「いかに(how)」展開するのかについて、「内容(what)」ではない次元で追体験してもらうことになります。
これは、その人がフォーカサーとして自分のフォーカシングを進める際のモデルになるのみならず、フォーカサー、あるいはフォーカシング的な状態に自然に入ったクライエントさんや知り合いのはなしをどう受け止めていくと、相手のプロセスを妨げないのかのついての、その人の、共に-いる「プレゼンス」のセンスそのものを高めてもらう機会と思います。つまり、言葉として何を返すか、返さないかといった技術論を超えた、非言語領域での「たたずまい方」自体において、その人なりのスタイルを身につけてもらうきっかけとなる場だと私は考えています。
いずれにしても、"as teacher"をする時のフォーカサーのプロセスは、「ロールプレイ」などではなく、本当に真剣勝負の、自分のためのフォーカシングでないと意味がないと私は思っています。そうでなければ、リスナー役の訓練生にも、真の学びは生じないと考えます。
もとより、訓練生が経験を積めば、今度は、訓練生が"Focuser as teacher"となり、トレイナーである私のガイディングやリスニングに介入し、フォーカサーとしての自分の求める教示や聴き方について、ライヴで私に刻々と注文をつけることにもなじんでもらうことになります。そこまでできて、ほんとうの自律的なフォーカサーであり、同時に、フォーカサーの自律性を大事にするトレイナーとしての態度を学ぶことになるでしょう。
海千山千のガイド・リスナーである私ですら、実は、その時のフォーカサーのペースを微妙に乱す教示やレスポンスは山のようにしているはずです。フォーカサーが自律的であり、自分の中のフェルトセンスに敏感になる限り、どんな優秀なガイドですら、最後にはフォーカサーのプロセスの邪魔者になる瞬間を避けられません。それがないというのはウソなのですね。
だから、ある意味では、 私はどんな人がガイドをしてくれても不充足感があります。 でも、どんな人がガイドをしてくれても、自分だけではできない助けになるのです。 (.......やっと、このことをあっさりと口にしていい心境になってきました。 自分の訓練生が、何人か、その人なりに成長してくると、この実感が味わえるのですね)。
この続きは、こちらです。
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