フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(6)(再掲)
前回の続きです。
Stage3.語り手がそこまで語った全体について、聴き手の感情移入的なフェルトセンスからの応答を提示してみる
話し手の話が自然と一区切りついた間合いを見計らって行ないます。そこまでに、語り手の話は短くても5,6分、長い場合には10分前後は続き、聴いている私はstage1ないし2の形で、話し手の話の流れをできるだけ妨げない形で、専ら聴き役に徹してきていたことになります。
私は、そこまで話し手の話を聴いてきて私の側に生じた印象や感想や意見を述べる前に、たいてい次のことをします。
「あなたの話を聴いてきて、あなたはこんな感じでいる(いた)んじゃないかと私には感じられてきているんだけど、聴いてくれる?」
・・・・という前フリをして、暗に「これから語るのは、あなたの実感について、あくまで私があなたの身になって感じてみたものを提示するに過ぎないので、あなたにとってピンと来ないなら、払いのけたり、修正してくれてかまわない」ことを示唆した上で、
1.ひとつの単語、せいい2,3の語句
2.ひとつの比喩的なイメージ(についての要を得た解説)
の形で提示します。
この際に、決してくどくどしい説明にしないことが大事です。
なぜなら、長い表現になったら、焦点が曖昧になってしまって話し手がそれを、そこまで話してきた自分の実感全体と響き合わせて照合するということを端的かつ直感的にやりにくくしかならないからです。
ここでもまた、stage2と同様に、聴き手は、話し手の身になりつつも、話し手自身は使ってもいない言葉や表現を見つけ出して使うことになります。
やっていることはstage2と似ているのですが、stage2がミニマムで小刻みに、流れの中でさりげなく使うのに比べると、そこまでの話全体について、二人で一緒に振り返って味わいなおすように促すという点で、よりメリハリがついた提示の仕方といえます。
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このように説明すると、インタラクティブ・フォーカシングにおいて、「二重の共感の時(double empathic moment)」の後で、まずは聴き手の方から、語り手の身になって感じてみた言葉やフレーズやイメージを返してみる時のやり方と非常に類似していることにお気づきのフォーカシング学習者もおられるかと思います。
敢えて違いを述べれば、語り手にはそこまで離したこと全体を身体で味わっていてもらい、その間に聴き手である私は話して身になって、ぴったりに言葉やイメージを捜すための沈黙の時をとりましょう、というはっきりした提案とセッティングまではしないまま使うことが多いということでしょう。
私がここでこれまで述べてきたのは、通常のカウンセリング場面や、親密な知り合いの相談事を日常の中で聴いていくという「普段使いの」際に、さりげないエンジンオイルとして役立てるやり方です。特定のフォーカシング技法を「双方が身につける」ことを目指してはいません。しかし、この程度の「緩めた」使い方でも効果が十分発揮されるのです。
私の場合、いったん傾聴モードで相手の話を聴きはじめたら、その後の数分ないし十分ぐらいの無理のない一区切りの時に、このstage3次元での、相手の身になった端的な言葉やイメージを投げ返す時がやってくるであろうという前提でずっと話を聴いています。ですから、私の中で、stage3のタイミングで投げ返す言葉やイメージは徐々に暖めらて来ていることになります。stage3を試みようという時にはじめて相手の身になってみて言葉を捜すのではないのですね。だから私には沈黙の時は今更不要なのですね。
私はそうやって話し手の身になった言葉やイメージを実際に提示した後でも、私は更に、
「・・・・・これはあくまでも、私の側が、あなたはそんなそんな感じでいるのかなと想像したに過ぎないことなので、あなたの側でどう感じているかは別かもしれないけど・・・・」
・・・・などともう一度付け加えて、その人が、私が提示したものを自由に修正する権利を保障すすことを暗に示唆することが少なくありません。
もっともそこまでやらないうちに、私からの当の言葉を聞いた時点で、
「うん、そう、そうなんだ!!その〇〇だよ!!」
と、打てば響きように言ってくれる人も少なくないですし、
「〇〇というより、◇◇かな。・・・・・という点では〇〇だともいえるけど、・・・・・という面が私にとっては強いから」
などと、自分の心境に更にぴったりな言葉を更に新たに見つけ出したり、それまではっきり語ってはいなかった、自分の気持ちの別の側面や、関連する話題を語り始めるケースはたいへ多いといえます。
後になってみると、そこまで聞き届けないうちに、相手に、自分の側だけの感想や意見を言わなくてよかった!!と感じることがたいへん多い気がします。
語り手がこうして、それまでよりは更に進んだ方向や別の局面へとへ話の展開を始めたら、私はstage1ないし2に立ちかえり、もっぱら相手の話を傾聴しているモードに戻ることになります。すると、しばらくして、再びstage3を試みたくなる時がめぐってきます。
前回述べたことを繰り返しますが、相手の身になった言葉やイメージを提示するのは、あくまでも相手が自分の実感を更に深く多面的に吟味するための触媒として機能するためです。相手の気持ちを「言い当てる」ことを目指すものではありません!!
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語り手が、話を続けてきたあげく、
「これを聴いていて、あなたはどう思いますか?」
・・・・と、私に意見を求めてきた場合にも、私はいきなり私の側の印象や感想や意見を返すことはしません。
まずは、このstage3の次元での応答、つまり、
「あなたの話を聴いていると、あなたはこんな感じでいるのではないかと思えてきたんですけど・・・・」
という形で、あくまでも話し手の身になった、感情移入的フェルトセンスから浮かび上がる言葉やイメージを、手短に差し出してみることを優先します。
それに対する語り手の更なる反応・・・・・そこでどれだけ意外なことを語り手は更に語り出してくれることが多いか!!・・・・まで受け止めてでないと、私個人の感想や意見は言わないことにしています。
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こうして、まずは相手の身になっての言葉やイメージの提示をした上でないと、相手の話への私の感想や意見は言わないということが、私には随分身についたものになってきています。それについては次のstage4で解説します。
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