カリン・オプホルツァー著:「W氏との対話―フロイトの一患者の生涯」 (再掲)
5つ星のうち 5.0
ここで語られている姿こそ、リアルな「狼男」症例の真実であろう
2010/6/10
フロイトの症例として有名な「狼男(ウォルフマン)」を、ウィーンで探し当て、最晩年の数年間、インタビューを重ねた内容を、録音資料も使って、ほぼ忠実に再現しているのは間違いがない。
著者オプホルツァーは、オーストリアでジャーナリストとして賞を受賞するほどに著名な、医療関連をテーマとしたの気鋭のルポライターのようである。
本者によれば、狼男が見たあの著名な「夢」の内容は真実である。しかし、抑圧されていた幼年期の「原光景」体験を「思い出した」などとは、本人がフロイトに全然語ってもいないことらしい。
事例研究というものがどれくらい治療者側による勝手な「物語化」の押し付けに容易に成り得るのか、そして、「フロイトの成功事例」という「標本」を「ともかく生きながらえさせる」ことしか周囲の精神分析家が考えていなかったか。
読んでいて、寒々とした思いを感じたと同時に、著者、オプホルツァーにたけは最晩年に真実を語り尽くし、心の絆を結べて永眠できたウォルフマン氏は、さぞ幸せだったのではないかと思える点が最大の救いである。
著者オプホルツァーは、オーストリアでジャーナリストとして賞を受賞するほどに著名な、医療関連をテーマとしたの気鋭のルポライターのようである。
本者によれば、狼男が見たあの著名な「夢」の内容は真実である。しかし、抑圧されていた幼年期の「原光景」体験を「思い出した」などとは、本人がフロイトに全然語ってもいないことらしい。
事例研究というものがどれくらい治療者側による勝手な「物語化」の押し付けに容易に成り得るのか、そして、「フロイトの成功事例」という「標本」を「ともかく生きながらえさせる」ことしか周囲の精神分析家が考えていなかったか。
読んでいて、寒々とした思いを感じたと同時に、著者、オプホルツァーにたけは最晩年に真実を語り尽くし、心の絆を結べて永眠できたウォルフマン氏は、さぞ幸せだったのではないかと思える点が最大の救いである。
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