EAP/産業カウンセリング

2011/06/24

格差社会の中での自分探しとフォーカシング(togetter)

このtogetterは、坂井 素思・岩永 雅也 (編著) 「格差社会と新自由主義」を読んで、経済学・社会学的見地から今の日本の生きづらさと解決の方向性について考えさせられ、引き続き、池上正樹(著)「ドキュ メント ひきこもり -<長期化>と<高年齢化>の実態-」を読んで感じた、世代や社会人経験を問わず、自分のあり方について熱心に内的に追求する層 こそ引きこもり=永遠の失業者に陥る現状に刺激を受けて、今度はそうした現代の「自分探し」の堂々巡りの解決のための具体的方法論としてのフォーカシングの可能性という、カウンセラーとしての私の専門領域での実践活動に到るまでを紹介するという、かなり越境領域的なツイートの連鎖です。

フォーカシングの名教師・アン・ワイザー・コーネルさんの"Radical Acceptance of Everything"(邦題:「すべてあるがままに」)で述べられた諸見解について、私なりに噛み砕いた紹介にもなっています。

途中、唐突にテーマが 変わるかに見える部分があるかと思いますが、繰り返して読み返していただければ、私の思考と連想の過程が浮かび上がるかと思います。

こちらからどうぞ。

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2011/06/20

格差社会とカウンセリング

 カウンセラー、殊に臨床心理士の多くは、高い学費を払って博士前期まで出ているのに、非常勤の寄せ集めで意外と低収入のガツガツで暮らしている(平均収入230万円前後という統計がある。若い層だけ引き出せばもっと低いだろう)。

 あけすけな話、親からの経済的援助すら受けながら(!)、やっとカウンセラーしている層、ないし、「連れ合い」の高収入あってこそカウンセラーできる層は実はかなり少なくないはずである。

 更に4,5年毎の資格維持(いわゆる「ポイント15点」分達成)のために、毎年数回は出席必要な研修費や旅費宿泊費も全部自費の層も少なくない。

 つまり、格差社会の意外と低層部に、多くのカウンセラーはいる。

*****

 一方、カウンセリングを受ける場合の料金のことを考えてみよう。スクールカウンセラーや児童相談所や施設等、公的機関でのカウンセリングは無料だが、これは多くの一般の方からは縁遠い世界だろう。

 病院等でカウンセリングを「併設」している場合でも、一時間、保険外適用で6000円というあたりが安い場合での相場であろう。

 臨床系大学の附属機関でのカウンセリングですら、1時間4000円-5000円かかるのが普通であろう。

 これらの場合、人件費のことを考えれば、カウンセリング部門は赤字な機関がほとんどである。

 

 とある旧帝大系のNPO外来カウンセリング機関は、実に優秀な人材を揃え、立派な面接室を持ち、料金4,500円であるが、利用者は少なく、一口5,000円の賛助金集めに大変苦労して、かろうじて運営されている。

 ましてや、カウンセリング専門の「開業」機関は?・・・一時間1万円以下であれば、相当に安い料金であろう。

 ここ私が示している料金例ですら、かなり控えめな価格である可能性は高い。あとはネットで全国のカウンセリングルームの料金体系を検索してご覧になることをお勧めしたい。

*****

 さて、流派にかかわらず、カウンセリングが一応の成果をあげるまでは、最低で10回ぐらいのカウンセリングは必要なものだ。しかも間隔はそこそこ間を開けない方が良く、最低ラインで月2回というペースが理想であろうか。

 こうなると、カウンセリングを受けるためには、最低で月あたり1万円、悪くすると3万円以上の出費が必要となる。 

 格差社会の現状で、人に話を聞いてもらうためだけに、このお金を継続的に支払おうというお気持ちになれる層が、どのくらいおられるであろうか???

 カウンセリングとは、これからいよいよ「ブルジョア」のためのものに過ぎなくなるのではないでしょうか?


*****

 さて、今度はカウンセラーの皆様自身に胸お尋ねしたい。胸に手をあてて考えていただきたい。

 自分のカウンセラーとしての業務1時間、いくらの「商品価値」があると自分で「値付け」なさいますか?

 私は、1時間4000円、となら、胸をはって言えますが。

*****

 このブログエントリーの原型となったTwitter上のやりとり(同じタイトル)をこちらでまとめています(togetter)

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2010/01/21

NHK クローズアップ現代、「 “助けて”と言えない ~共鳴する30代~」

 正確にはこの番組はホームレス問題についての「続編」である。

 前回登場した入江さん(仮名 32歳)の姿が見られなくなった。どうしていたかというと、結局生活保護受給申請にに踏み切り、月に79.940円を受け取るようになって、やっと路上生活ではなく、ネットカフェで寝泊まりできるようにはなっていたのである。

 それ以前は、2日に一個、100円のおにぎりに切り詰めつつも、食費を切り詰めた分、洗濯をはじめとした身奇麗さには気を配っていた、二枚目といっていい方で、確かに当時のたたずまいでも誰もホームレスとは思わないだろう。

 現在も求職活動は続けているが、「住所がない」ことのために容易に働き口が見つからない。

 この、彼が前回の番組で発した、「(結局は)自分が悪いんです」という言葉がネット界では大反響を呼んだ。共感のメッセージが満ち溢れたのである。

 現在30代になった人たちは、就職戦線が大変厳しい中、「自己責任」と「成果主義」を刷り込まれて社会に巣立った人たちである。

 「助けて」と言えないのだ。心を開けないのだ。言ったらおしまいだと思っている。

 経済情勢の中でそうやすやすとは業績が上がらなくても、全部「自分のせい」と思い込む。中には、親に介護が必要になったのに、介護休暇の申請ができないまま無理をするうちに退職したり、うつ病になった人の例も紹介されていた。

*****

 

しかし、ホームレスの人の大半は、別に天涯孤独な身の上ではない。実家があり、親もいるのだ。

 ゲストの、作家、平野啓一郎氏は語る:

「別に親子関係が希薄になったとばかりはいえないのではないか。むしろ、幼児期から築きあげた親の前でのイメージを崩したくないのだ」

 だから、再び社会人として稼げるようにならないと、実家には本当のことは話せない・・・・

 北九州でホームレスの人たちのためのNPOを運営している奥田知生(ともや)さんは語る:

「自己責任は大事だが、それはあくまでも社会が個人への責任を果たしてから、はじめて強調すべきことのはず。今の時代、「絶望」や「希望」が、自己完結した世界の中で語られ過ぎている。希望とは社会的なものであり、人との関係の中で初めて抱けるものであることに気づいて欲しい」

 私も、多くのクライエントさんとの関わりの中で痛感するのは、

自信がない
→自信がない自分が悪い
→自分で自信をつけねばならない
→自分で自分に自信をつけられない自分が悪い
→・・・・

・・・・という果てしない悪循環の上で、やっとカウンセリングを受ける気になった人のあまりの多さである。

 中には、「どうしてそこまで自分に自信がないんだ?自信を持てよ」などと親しい人や恋人から繰り返し言われて、更に自己嫌悪して、「私は相手のお荷物になっているのに、情けをかけられているだけの存在ではないか?」と思い詰めて行き、ひとつ間違うと、それまでの人との絆ですら切れるに任せかねない人すらいる。

 確かに、他人が自分に自信をつけてくれるとか、地位や身分や何かの成功が自分に自信をつけさせてくれると単純に言っていいかというと、決してそういうものではない。

 自分のいだいている自己イメージと、具体的な他者がいだいている自分へのイメージが、かなり深い次元でまで一致している、しかもそこに継続的な連関性があるという確信が得られた時に、人はある安定を獲得する。エリクソンがアイデンティティということを言い出した際の、本来の意味はそういうことである。

 しかし、それは、孤立した人間どおしの「思い込み」の次元での表層的なものにとどまっていては、その人を結局のところ追い詰めるだけなのだ。

 我々は真空の宇宙を漂う孤立した惑星のような自我を築くにとどまるべきではない。バリントふうに言えば、地水火風といった「形のない、自分を包み込んでくれるもの」を介して、互いに「息=ギリシャ語でいう「プネウマ」=たましい」の交流をして、相互に浸透しあっている時、はじめて「やさしさにつつまれた」社会に生きていると感じるのである。

 平野氏はこうも付け加えた:

 「法律で制定された国からの給付となると、税金をいやいや取り立てられた人のお金を分けてもらっているという後ろめたさを感じるのだと思う。むしろNPO団体への寄付などを通して、『お互い同士で融通しあう』感覚になれば多少は気が軽くなるのではないか。寄付の形であれば所得税控除にもなるし」

*****

 なお、NPOに寄付して大丈夫かという思われる方もあるかもしれないが、NPOに対する会計監査は大変に厳しく、問題があれば実に厳格に解散命令が出る。収益は上げていい。しかし、NPOをやめる時にはNPOの収益や備品はすべて寄付することでしか処分できない。

 私の居住する地域近郊でも、最近4つものNPOがそうやって解散処分を受けているくらいである(地域のNPO研修会で学んだことである)

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2009/12/21

明日は4ヶ月ぶりの東京です。

 明日は、東京に、一種の「公務」で日帰り出張です。

 思えば、明日という日を「次の寄港地」として座標軸を据えて、いろいろ風と波にもまれながらも舵を切り、帆の向きを変えて、ひたすらセイリングしてきた4ヶ月でした。

 8月末の町田の法政大学での人間性心理学会大会の時(正確には、その少し前のこの時がターニングポイントだとすでに書きましたが)から、4ヶ月の間に、すでにいろんなことをリアルワールドでじわりじわりと別の情勢に変化させてきてしまって来た、よくぞここまで「負荷試験」に耐えて、「基礎体力」そのものを別次元のものにできてきたとはしみじみ思います。ほんとうに「短いようで長い」、密度の濃い4ヶ月でした。

 でも、来年に入ってからの3ヶ月は、来年「度」に向けて、それこそ「残り5%」にこだわることになりそうに思います(^^)

 皆様や(田嶌先生以外の)先輩方をポカーンとさせる可能性がある「仕掛け花火」がすでにいろいろと仕込まれているのですが(^^;)、すべて不発に終わることはないと思いますよ(^^)

*****

 今日、「ある書類」に目を通した後の鬼コーチの父の背中がはじめて小さく見えました。少し支えてあげたくすらなった。

 星飛雄馬はほんとうに筋肉を断裂させることがないまま、復帰してしまえたのです。

 ありがとう。ほんとうにこれまで。

 これからも、末永く、見守って欲しい。

 私こそが、父の「後継者」になっていく様を。

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2009/12/14

「未熟型うつ病」とは何なのか? -福岡県精神保健福祉冬期講座に参加して(2)-

 昨日は、県臨士会のSC研修会でネットは一日お休みしました(お会いできた皆様からたくさん刺激をいただけたことに、心から感謝申し上げます)。

 やっとこの記事の続編(・・・・というか、結論は先に書いてしまったことにもなりますが)を書かせていただききます。

*****

 午後の部の講演に招聘されていた講師の先生は、自治医科大学で奉職されている、精神科医の阿部隆明先生でした。

 先生は、「新型うつ病」の一類型としての「未熟型うつ病」概念の提唱者です。私がこのブログで繰り返しご紹介してきた、内海健先生や加藤忠史先生ともお親しいようで、いわば日本のうつ病治療の最前線におられる先生のお一人です。

 講演のタイトルは、『現代の多様なうつ病像とその治療』でした。

 いわゆる「新型うつ病」や「双極スペクトラム障害」をはじめとする現代日本のうつ病の諸相について、これほど明確かつ立体的に解説していただいたことはない、と申し上げたいくらいに素晴らしい内容で、参加させていただいて、本当によかったと思っています。

*****

 まず、この先生のスタンスでたいへん興味深かったのは、下田光造が1943年に提唱した、うつ病の病前性格概念としての「執着性格」と、1961年にドイツのテレンバッハが提唱した、同じく、うつ病の病前性格仮説としての「メランコリー親和型性格」を、共に、クレッチマー以来躁うつ病の病前性格として提出された来た「循環気質」に対して新たに提出された、両国の高度成長期に生じた、当時の「新型うつ病」概念であると、明晰にお語りになったことです(この点では、内海先生の路線と明確に符合しますね)。

 そして、「執着性格」が、こだわり、几帳面、完全主義的自我理想に動機付けられた高エネルギー型であるのに対して、「メランコリー親和型」は、秩序愛と他者のために尽くすことに動機付けられ、周囲への罪責感という超自我的な動機付けで動く、むしろ弱力型のうつの病態であると解説してくださいました。

 中井久夫先生のご著書(確か、「分裂病と人類」)で、ドイツにおいても、メランコリー親和型性格は、男権的なドイツ的価値観からするとあまり評価される性格ではないということはお読みしていましたが、なるほどと思った次第です。

 もっとも、日本の高度成長期においてはメランコリー親和型性格は、少なくとも、重責に就く以前のサラリーマン道徳としては、明らかに「適者」の存在様式であったことになります。

*****

 「双極スペクトラム障害」についての先生のご解説も、今や0.5型から小数点0.5刻みでVI型まで提唱されているそうで、興味深かったのですが(私個人は、原則的に、DSM-Vで双極スペクトラム概念が気分障害の「大分類」として導入されることに大きな期待をかけているひとりです)、詳細になりすぎるのでここでは割愛させて頂きましょう。

 むしろ、先生が、「軽症うつ病で安易に抗うつ薬が処方され過ぎている」こと、そして、「抗うつ薬をトリガーとした躁転」という問題の重要性をやはり強調されたことは特記しておきたいと思います。

*****

 さて、ここからが一番興味深い部分です。

 阿部先生は、「メランコリー型」「執着性格」を含む、現代のうつ病の諸相の相互関係について、実に明快な図版を呈示くださいました。

 原典は飯田真先生らとの共著にあるとのことですが、敢えてこの図だけはここで配布されたパワーポイントファイルの縮刷版を取り込ませていただくことをお許し下さい(私の書き込みも読めてしまうので、観づらいかとも思いますが。

Dr_abe

 

 この図だけではわかりにくいでしょうから、ここで、いわゆる「新型うつ病」について、阿部先生が実に簡潔にご紹介くださった既成の諸概念についての解説を、この図と関係ない部分を省略してそのまま転載します。

※青年期のうつ病像

●ディスチミア(dysthymia)親和型 (樽味)

  • 回避的な傾向が強い
  • 不全感と倦怠感
  • 「生き方」と「症状経過」の不分明

※成人期後期(20代後半-30代のうつ病像)

●逃避型抑うつ (広瀬)

  • 高学歴、上司との関係、選択的抑制(こういちろう注:すべてのことへの興味や関心が失われるわけではないということ)、弱力的ヒステリー性格、自己愛的

●未熟型うつ病 (筆者ら)

  • 20代前半までは周囲から庇護されて葛藤なし
  • 職業上、家庭生活上の挫折から発症
  • 経過中に不安焦燥感優位で、自責に乏しい病像
  • 周囲に対する依存攻撃性
  • 状況からのストレスが棚上げされる(庇護的な環境におかれる)と軽躁状態(双極II型-I型的)

 そして、「執着性格」と「未熟型うつ病」が、内因性・生得的な気分昂揚的・躁的素因を持つ「高エネルギー型」であり、「メランコリー親和型」と「逃避型抑うつ」は、そうした「気分高揚方向への」内因的素因がなく、むしろ神経症水準での「弱力型」ということになるようです。

 これに当てはめたら、私なんて、もう、絵に描いたような「執着性格」ってのが、本来のあり方ですね(^^・・・親父もそうだな・・・・)

*****

 さて、この図の鍵は、

  • 「希薄な愛情備給」→「メランコリー親和型」か「執着性格」
  • 「過保護・溺愛」→「未熟型」か「逃避型」

・・・・と一般化されている点でしょう。

 ここで私の頭の中は???で一杯になってしまいました。

 私の父親って、ややおせっかいなところはあったけど、「熱く」私を愛し続けてきてくれた。でも、私の進路や勉強については全く口出ししなかった。子供時代、私の好きな鉄道旅行にどれだけ付き合ってくれたことだろう。全然希薄な愛情備給ではない。

 母親も、ある意味では偏屈で頑固な父親のやさしい話の聴き手になれ、子供の頃から私の前で神経質になることも皆無、まもなく87歳の今も、情緒的な安定感の高さと同時に、頭脳明晰で愛嬌あふれ、腰が曲がったのを除くと、70前と思われかねないくらいのみずみずしい感性(肌の色艶も)を維持している。 

 そして、何より、「未熟型うつ病」の説明図式を追っていくうちに、確かに、こうした説明で典型的に理解できる「新型」うつの患者さんも一定数はいるかもしれないことは認めるにしても・・・・・

 これじゃまるで、育ちのいいぼんぼんやお嬢さんが、厳しい社会に出てはじめて傷ついて発病したみたいな印象与えないか???

 さすがに上の赤字の言い方まではフロアからの発言上は控えましたけど、私が現場で体験しているこのタイプに当てはまりそうなクライエントさんから詳しく訊いた生育暦や、親御さんと接した時の印象との隔たりがあまりに大きいと感じました。

 「未熟型うつ病」であるかに見える人に家族内での葛藤がなくて庇護されていたなんて、私の知る臨床的現実とはまるっきり正反対なのだ。

 確かに、この種の病態を示す人たちの、養育者との関係は「密着していた」時期を持つことが少なくないのは認める。

 でも、それは、断じて、子供の側が依存し、それに対して親が庇護を与えるという循環構造ではないのだ!! 

 得てして、気分変調的な側面をすでに持つ母親まずは存在する。その母親の機嫌を損ねないように、子供の頃から、涙ぐましいまでに気を使い、家庭の平和を守るためのキー・パーソンとして「世代間逆転」的な形で一家を支えてきたのが、患者として現れた若い人たちなのである。

 家庭に葛藤がないかに見えたのは、子供の方が親の気持ちにとことん寄り添って「平和維持」に努めてきたからこそではいか????

 その人たちには、むしろ親に安心して甘えられた経験など欠落している。

 そして、非常に孤独な努力を重ねて、親の引力圏から離脱するために、優秀な大学に入り(得てしてこの時に親元から離れた大学を選択する。それを可能にするためには、地元を離れるに値すると親に見なされるほどに優秀な大学である必要があるのだ!) 

 そして、これまた親のグーの根も出ないくらいの進路(留学、企業)へと進んでいく。ひたすら、親から自由になるために!!

 そうやって、どこまでも飛翔した先の企業などで、彼ら/彼女らはついに力尽きるのである。

 このような経緯を持つ患者さんが、医師との治療関係が一応ついて、「陽性転移」の時期を経たは何が起こるか????

 ・・・・もう、目に見えている。

 親や医師、社会を相手に恨みや攻撃性を爆発させることそのものが、不可避の「治療過程のプロセス」なのである。

 そうした「治療過程のプロセス」を、「疾病像」と誤認することの危険が、あまりに大きくはないのか?

*****

 もちろん、簡潔に、紳士的で丁重な表現を取らせていただきましたが、私がフロアから阿部先生にお伝えした感想は以上のようなものでした。

 このこととの関連で、この前の拙文、

●「過保護」という概念は安易に使われすぎていまいか?

をお読み頂ければ幸いです。

*****

 BGMは、まさにこうした生き方をしてきたとしか思えない、浜崎あゆみさんを称えて、浜崎あゆみ - A Song for XX - Signal"SIGNAL"浜崎あゆみ - A Song for XX - Hana"Hana"浜崎あゆみ - LOVEppears - too late"too late"

●ayumi hamasaki SIGNAL~Hana~too late live

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2009/12/10

派遣労働者は企業メンタルヘルスや産業カウンセリングの蚊帳の外? -福岡県精神保健福祉冬期講座に参加して(1)-

 やっはり記事の順序をもう一度再入れ替えしましょう(^^)

 一昨日参加させていただいた、福岡県精神福祉冬期講座「不況を生き抜く -多様化するうつ病と休職・失業からの再出発-」の報告記、第1弾。まずは午前の部についてご紹介します。

 講演午前の部に招聘された先生は、大正大学の廣川進先生。「休職・失業のキャリアカウンセリング -人生の危機・転機を越えていくために」という演題でした。

 ベネッセで18年間勤務され、雑誌「ひよこクラブ」などの編集に携われた後、衛生管理者としてヘルスケア部門を担当され、採用・教育研修など、人事の業務も経験されたとのことです。

 40歳を迎えるにあたり、臨床心理士になることを決意されて大正大学大学院に社会人入学。病院臨床の経験も積まれ、現在も大正大学の准教授をお勤めの傍ら海上保安庁にも勤務され、先日の佐世保での事故の際にも危機介入のため活躍されたとのことでした。

*****

 企業人から産業カウンセラー・キャリアカウンセラーに転じられた経歴をお持ちというだけのことはあり、企業の内部事情にも精通された上で、個別処遇を重視する、会社内のさまざまな関係者を「チーム」としてフル活用した、うつ状態に陥った中間管理職の社員への細やかな復職支援の統合的アプローチの実践例を例示いただき、たいへん参考になりました。

 少なからぬ場合、配置転換されてきた、業績至上主義の新上司からのパワハラの問題が関わること、今の日本企業は競争社会になったために、「かわいがった部下に先に昇進される」リスクがあるため、社内の空気そのものがギスギスしているため対話が少なくなっていること。会社再建のために銀行から派遣された役員によって、実力ある管理職がスケープゴート的に詰め腹を切らされ、リストラされることが引き金となるうつの発症などがあるというお話は興味深かったです。

 また、うつによる休職と並行して、家族構成員に様々な問題が「同時多発」することが多いということ。子供の引きこもりや行動化、配偶者の抑うつ、親の介護などの問題が、一気に表面化=「同時多発化」しやすいようです。それまで、「ともかくも働いてしっかり稼いできてくれる」ということによってかろうじて見かけ上の平衡を維持していた家族力動の、潜在的な歪みが一気にあふれ出すということのようです。

*****

 廣川先生のお話は更に、失業者のメンタルヘルスの問題について、ハローワークを訪れる求人者の意識の実態調査に基づいて踏み込んだ問題提起へと展開しました。

 多くの退職者は、見かけ上は、キャリアアップや「今の会社があわない」などの理由を真っ先に挙げますが、実際には社内(特に上司)との人間関係に悩んだ末であることが少なくないそうです(これは私見ですが、いわゆるリストラの場合ですら、その対象として選ばれるかどうかには、この人間関係上の問題が少なからず影を落としていることがあると思います)。

 そして、求職者は、もはや仕事が見つからない「恐怖」に脅かされており、それまでのキャリアが通用しないことによるアイデンティティの喪失、求職活動しては不採用になることを繰り返す中で、精神的消耗やうつ状態、身体症状の悪化、場合によってはアルコールやギャンブル嗜癖に向かうなど、潜在的に「自殺者予備軍」となる危機にさらされている。

 しかし、ハローワークの現段階でのメンタルヘルス相談の体制は、まだ専門的訓練を受けた相談員が少なく、場合によっては「説教され、発破をかけられる」に留まる状況は何とか改善されていかねばならないことを先生は示唆されました。 

*****

 しかし、こうしたお話をうかがう中で、私の中に、何か大事な問題が抜け落ちているという思いが生じてきました。

 質問タイムが最後に取られたので、私は口火を切ってフロアから感想をお伝えいたしました。

 「大企業の管理職の方々の復職支援における統合的アプローチ、そしてハローワークを訪れる求職者のメンタル状況のついてのお話はたいへん示唆に富むお話でした。しかし、今日のうつ病患者の増加は、20代後半から30代において顕著であり、私がお会いしてきた通院中のクライエントさんの非常に多くが正社員ではなくて、その世代の派遣勤務です。

 リストラされなかった正社員のバーンアウト症候群の問題は確かに深刻ですが、それと平行する形で、それまで派遣社員を統括していた正社員自体が配置転換され、「ベテランの派遣社員」に、その正社員の業務が「丸投げ」される現象が生じてきているようです。

 その結果、一番優秀な派遣社員がオーバーワークになり、深刻なうつの危険に直面している気がします。

 しかし、多くのケースにおいて、派遣社員は産業カウンセリングや企業メンタルヘルスのシステムの蚊帳の外に置かれたままという気がしてなりません」

*****

(以下、第2回、午後の部についての記事に続く。午後の部は、「未熟型うつ病」概念についての非常に詳細な解説と問題提起を含みます。こういちろう畢生の超大作になりますので、明日になってから書きます)

(【追記】・・・といいつつ、その序曲だけをまずは書きました)

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2009/12/08

ついに20歳以降最も軽量にまでダイエット成功!!

 私は血中脂肪の値が高くなりやすく、医者に定期的な血液検査を受け、薬ももらっていたのだが、昨日ついに血中脂肪の値が正常値に完全に到達したばかりか、コレステロール関連の薬から無罪放免、「これからは栄養価が高いものをきちんと食べなさい」といわれるに至って、拍子抜けしてしまった(^^)。

 久留米に帰って自分で料理もするようになり、間食もほとんど全くせず、野菜をたくさん取るヘルシー路線をひた走って来たのだが。最近再び若干疲れやすくなっていたのだが、仕事量が随分増してきたのに、食べる方はそれにあわせて増やしていない状況にすらはまり込んでいたようである。

 おかげで、20代に買ったスラックスにみんな腹が通せる(?)状態である。以前のスーツを着ても前ボタンがすんなりとめられる。

 ・・・・・以上、何より自分に厳しい(?)、タイトな無駄のないライフスタイルに徹していて、これ以上何をそぎ落とすのだ? の域まで来たこういちろうより。

 久留米市の中での移動は、ほとんど常にマイ・自転車なので、運動量も結構こなしていると思う。

 近々タバコもやめてしまうと思う。私の身体の感じが”No!”と言い出したので。

*****

 今日は、以前予告いたしましたとおり、これから福岡県精神保健福祉協会の冬季講座、「不況を生き抜く -多様化するうつ病と休業・失職からの再出発」(春日市)に参加のため、臨時休業とさせていただきます。

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2009/11/18

業務連絡:12/8(火)は福岡県精神保健福祉協会冬期講座参加のため、臨時休業とさせていただきます。

 「不況を生き抜く -多様化するうつ病と休職・失職からの再出発-」というテーマでの催しですので、ぜひ参加させていただきたいと思いました。

 このため、前日、12/7(月)の前半半休と立て続けになり、開業業務についてのお問い合わせの皆様に、ご迷惑をおかけすることを、どうかお許し下さい。

*****

【追記】

 なお、12/22(火)にも東京への日帰り出張、翌12/23(水)午後4時以降も、所用のため業務を休ませていただく予定です。

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2009/10/26

書評:冨高辰一郎著 「なぜうつ病の人が増えたのか」(第2版)

 さて、いよいよ冨髙氏の著作を実際にお読みした上での書評を書かせていただきます(^^)

 ただ、今回は、冨高先生に対してはたいへん僭越な趣向かもしれませんが、私がこの前、読売に掲載された「春日氏の本著への書評」への感想記事を、冨高氏のご本そのものは「全くめくらないままで」書かせていただいた段階で、冨髙先生の著作に私が「期待する」ポイントとして列挙した内容の大半を丸ごと引用して、どこまでその期待が適(かな)えられたかということを示していくスタイルを取ることをお許しください。

 携帯でこのサイトのお読みの方にはご迷惑で、更に言えば、Windowsパソコンだと、あまり見かけ上美しく表示されないことを承知で、この前の感想から引用部分斜字体とさせていただくことをお許しください。

冨高辰一郎/なぜうつ病の人が増えたのか

 

(楽天ブックス)

●参考資料:読売新聞サイトの春日氏の書評の全文

*****

 「うつ病が急増しているといわれる。(中略)実際、1999年から2006年までの6年間の間に、うつ病患者は2倍以上に増えている。99年から患者数が急増しているのである。ではその年に何があったのか」

 このことが、冨高氏自身の発想の原点にあったことは、Amasonのサイトですでに確認済みである。

・・・・・・まさにそういう本です。

 春日氏は、(中略)

 「しかしそれでノイローゼ患者が増えたというのならばともかく、うつ病患者が2倍にも膨れ上がるものなのか」

 この言葉が冨高氏の原著にある言葉なのか、春日氏の表現なのか不明だが。

・・・・・この「ノイローゼ」という表現は冨高氏の本には見当たりません。

*****

 「99年は、本邦でSSRIと呼ばれる新型の抗うつ剤が導入された年である。ニュータイプの抗うつ薬の売れ行きと、うつ病患者の急増は相関している。だが新薬登場でうつ病患者が減ったというのならばともかく、逆に増えたとはどういうことなのか」

 「ここで製薬会社による啓発活動(一般市民および医師への)がクローズアップされる」

・・・・・このことは、慎重な筆運びで、丁寧に言葉を選びながらですが、詳細に統計データをつけて、冨高氏自身が問題提起しおられる。

******

 冨高氏が、日本以外の、アメリカやヨーロッパ諸国でも、SSRIが認可された時を境にうつ病患者が急増した統計データも示してくれているかどうかに関心がある。

・・・・・ものの見事なまでに、数カ国以上のデータを集めておられます。

*****

 もとより、「1995年ごろには欧米でSSRIへの評価が下がりはじめたので、日本が特にプロモーションのターゲットにされた・・・・というあたりの論が冨高氏の著作の方で展開されている可能性あり!とシミュレーションしますが。

・・・・・本書の中でその可能性は十分示唆されています。

****

 「ここで製薬会社による啓発活動(一般市民および医師への)がクローズアップされる」

・・・・・・お医者さんならではといいますか、製薬会社提供の学会でのランチョン・セミナーの様子や、病院への製薬会社の営業スタッフの訪問激増ぶりが生々しく報告されています。

 そして、私が以前一度警戒すべきサイトとして釘を刺したことがある筈の「utu-net」が、某製薬会社・・・・・冨高氏は明言されてはいないが、サイトの内容からして、不安障害(パニック障害)にも強迫性障害にも鬱にも適用できる薬っていったらパキシルかルボックス=デプロメールぐらいのものでしょ?・・・・・に支援された、典型的な「市民向けプロモーションサイト」であることを明言しておられます(p.104)。

 そうした製薬会社の支援を受けていることをサイト上ではっきりと「公示」した上でPR活動をすることは全然かまわないと思うのですが。

****** 

 特に、パキシル(パキセロチン)の発売元であるグラクソ・スミスクライン社の広報活動と不利な情報隠蔽体質に関しては悪評ぷんぷんたるものがあることは、検索すればいくらでも情報源があるが、私は敢えてここで、加藤忠史氏による「躁極性障害―躁うつ病への対処と治療 (ちくま新書)」すでに書かれていることから引用したい。

 以下、紫色の部分は「加藤氏の」この著作からの引用です: 

「それどころか、これらの新しい抗うつ薬が、うつ病にほんとうに効くのかどうかということまで、最近議論になってきておりまして、ちょっとその話題を紹介したいと思います。

 実は、抗うつ薬をうつ病の方に処方して、効いたかどうかを調べた臨床試験の結果は、論文になっているものといないものがあるのですね。

 そこで、アメリカにFDA(食品医薬品局)という薬の認可をなどを行っている部署があるのですが、そこの論文開示請求を出して、論文になっていないパキセロチン(パキシル)の臨床試験を出してもらった、という研究があります。

  そこで再解析したところ、論文にされていない臨床試験は、みな効果がない結果に終わっていました。論文になっているのは、効果があるものだけだったので す。それで、これはバイアスがかかっているのではないかという研究結果が論文として報告されました」(pp.177-8)

 加藤氏は更に続けて、その後の論文で、パキシルは中症から重度の患者ではプラセボ(偽薬)よりもやはり有効だったけれども、その効果はわずかで、軽症例では効果に差がないというものが公表されていることを示しています。

・・・・・・これらのことは、加藤氏の著作と重複する部分、加藤氏より詳しい部分があります。

 もとより、内容そのものは、医師向けの専門雑誌どころか欧米のマスコミでは繰り返し取り上げられてきた内容なので、不幸にして加藤氏の著作よりも「たった数ヶ月」刊行が遅れただけの冨高氏は、加藤氏がここまで書いているとご存知なかった可能性が高いかと思います。

*****

 更に加藤氏は、アメリカの臨床試験の厄介な問題についても言及しています。

 「アメリカではこういう臨床試験に参加した人に報酬を払うのです。報酬が出るとなると、お金だけがほしいといういう人もいまして、こういう臨床試験をいくつも掛け持ちする人が出てくるわけです。

 たくさんの臨床試験に偽名で参加して、報酬だけもらいながら薬は捨ててしまう。そして医師には、うつらしい症状を話しながら治ったふりをする。そういう人たちがいるのです(中略)。[これでは、]効くべき薬に[統計調査上の]差が出ません。飲んでいないのだから差が出るわけがない」(p.179-80)

・・・・・この問題については冨高氏は言及していません。

 むしろ、「二重盲検」という治験スタイルそのものに「倫理的な」問題があることが欧米では問題視されつつあることを指摘しています。

 その一方では、まさに「二重盲研」に基づくデータも結構活用しておられますが、これはやむを得ないでしょう。倫理的問題は別として、このやり方こそがエビデンスド・ベースドな最も厳密な研究法であることは確かでしょうから。

*****

 さて、この「製薬会社のプロモーション」の問題を考える際に、ちょっと視点を変えますと、実は同時に考えねばならない重大なテーマがあるはずです。

 それは、「薬価」の問題です。(中略)

 もし私がこの2冊の本で言及されていると嬉しいと思っているのは、そもそもなぜSSRI(特にパキシル!)の薬価があそこまで高いのかという問題それ自体です。

・・・・・パキシルの薬価が格別に高いことはお示しですが、残念ながら「なぜなのか」という「素朴な疑問」そのものについてはダイレクトに解き明かしていただけませんでした。

*****

 SSRIは、本国でも価格が基本的に高い薬なのですが、単順に経済的に考えて、もし「薬価」を法外に高くせざるを得ないやむをえない事情があるのであれば、特に保険制度を民間に依存しているアメリカでは、「プロモーション活動」に巨額の投資をせざるを得なくなるだろうということになります。

 それとも、最初からそのプロモーション費用を「回収する」見込みまで立てて、「薬価」が高くなるようにいろいろ偽装したということまでありでしょうか?

 このあたりについては、実に興味深いことを冨高氏は示唆しておられました。

「米国では95年から2000年までの間に、製薬会社の営業部門で働く社員の数は60%増加した。一方、研究部門で働く職員は2%減少したという。最近の調査によると、米国の制約業界全体では営業活動に570億ドル費やす一方で、新薬の研究開発には315億ドルしか使っていないという」(pp.78-9)

 こうした現象は、「製薬業界の化粧品業界化」と呼ばれているそうです。

*****

 次に、特に冨髙さんの本で、「鬱症状」の病態によって、使用する薬を変える必要性についてどこまで踏み込んだことをお書きになっているのかについても関心があります。

 Amazonの書評欄を見ると、本書の中で、「再発予防のためのリハビリの重要性」だとか、「(SSRI以外を含めた)多種多様な抗鬱剤の効果の程がわかる」とのことなので、この点はあまり心配しなくてよさそうである。

 ひょっとしたら、うつ病と誤診されやすい双極性障害II型において、リーマスや抗てんかん薬、場合によっては非定型薬、更には睡眠誘導剤が役に立つことについても言及されているだろう。

・・・・・ SSRIと他の抗うつ薬の副作用の出方の違いについては、冨高氏は慎重な筆運びで、良心的に、時には両論併記でお書きになっている。

 私にとって、双極性障害「II型」についての解説が、もっともな内容が書いてあるけれども、もの足りなかったことについては、直前の記事(第2版)で先行して書かせていただいたことを、リンクをたどって参照いただければと思う。双極性障害II型(双極スペクトラム障害)の人は、この冨高氏の本を読んでも肩透かしを食らうだけになります。

 古典的うつ病と、双極性障害「I型」(いわゆる「躁うつ病」)以外の気分障害についての取り扱いという点では、ちょっと弱い本だと思います。ほんとうにそれはプロモーションの弊害だけで説明がつくのか、私には大いに疑問符がつくのです。

***** 

 そして、薬物療法だけではなくて、医者の小精神療法やカウンセラーによるカウンセリングが連動していること、更には家族や雇用者側の対応についてまで踏み込んでくれていることを期待したい。

・・・・・総体的にはかなり突っ込んで描かれていると思います。

 もっとも、認知行動療法についての紹介は、この種の、認知行動療法のマニュアルやワークブックではない、鬱についての一般向け啓発本の中では「平均水準」でしょう(これは、私にとっては、少し物足りなくて平凡の域ということ)。認知行動療法以外のカウンセリングに特に偏見をお持ちの方でもないようです。

 認知行動療法について知りたい人は、何よりもまず伊藤絵美先生の「認知認知知療法・認知行動療法カウンセリング初級ワークショップ―CBTカウンセリング」を読まないと、認知行動療法についての基本的理解が間違ってしまうことは、すでにこの記事でご紹介したとおりです(一般の人でも楽々読める平易な本です。むしろ、流派に関係なく、達人の域に達したカウンセラーとはここまでクライエントさん思いの良心的な存在なのだと感じていただけるでしょう)。

 これを機会に申し添えますと、伊藤先生は、この本の中で、コラム表だけを渡して、さあやってみてくださいだけで、やって来れないと『あなたには認知行動療法は向きません』で済ませるようなあり方を、認知行動療法への誤解を広めるものとして厳しく退けています(pp.107-8)。

 次に、雇用者側の対応についてですが、冨高氏は、製薬会社の側のあり方と、企業内での、雇用者に対するうつ病についてのメンタルヘルス的な広報・支援活動の問題を完全に切り離して論じています。

 「だからと言って広報支援活動そのものを狭めるべきということにはならない。いったん広がった入口というより、出口(実際に鬱に罹患した人への企業の対応のあり方)をどうしていくかである」と。

 そして、何より予防的に効果があるのは、残業ルールを厳密に守ることであると、具体的に断言しています。

 更に、安易にEAP(メンタルヘルス関連の活動の外注)に依存することの弊害を説き、京セラ本社で、わずか1名の専属産業医師、山田達治氏と看護師1名で繰り広げた、緻密そのものの休職・復職支援活動の結果、2年間で「再休職した人ゼロ」という驚異的な実績を残したことを紹介している(pp.222-3)。

****

 「これはメタボリック・シンドロームと同じ構造である。以前だったらただの『小太り』が、今で病院受診や保険診療の対象となる。早期治療といった考え方もあろうが、いたずらに多数の『病人』が作り出されたとも言えるだろう」

  この部分は、冨高氏ではなくて、書評の春日氏の言葉であろう。

 (中略) 例えば、「ちょっとおなかが出ている人」とするだけでもニュアンスは変わる。

・・・・・メタボ啓蒙活動との比較論は冨高氏の著書に存在する。しかし、もちろん書評の春日氏のように、ただの『小太り』などという不謹慎に言葉は出て来ない。

「こういった基準を満たす、少しお腹の出た、収縮期血圧が130程度の軽度肥満の中年男性は、昔からいくらでもいた。しかしそれだけの理由で、そのような人々が病院を受診することはなかった」(p.152)

 春日氏と冨高氏の人柄の違いを感じさせられてしまう・・・・(^^;)

*****

 「ただ啓発運動が逆に病気でないものを掘り起こしているといった視点もある。『病気の押し売り』と評され、うつ病以外に小児の躁うつ病、男性型脱毛、性機能障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、軽い高コレステロール血症などが欧米では批判されているらしい」

(中略)

  またもや加藤先生のご著書「双極性障害」に戻らせていただくと、実はすでにこの本で、「小児思春期の躁うつ病」問題について、第2章第4節全体(pp.47-51)を割いています。

 特にアメリカでは、一時期、ほんの3,4歳の子供まで双極性障害と診断され、薬物療法の対象になるケースが結構あったようです。

 加藤氏は、これに対して、大人の双極性障害に適応が認められている薬を、臨床試験なし子供たちに使うことができるアメリカの現状を危惧しています。

 2歳の時に「いつもそわそわして走り回っている」との理由で診断を受け、検査の結果、3歳になった直後に、ADHDすら飛び越して双極性障害と診 断され、非定型薬、気分安定剤をはじめとする1日10錠もの薬を飲んでいたそうです。そして4歳になって、薬の過剰摂取が原因で亡くなって、両親が第1級 殺人罪として起訴され、両親側は医師の指示に従っただけと主張したという事件があったとのこと。(CBSドキュメントによるとのこと。探せば今でもサイト 上に何かあるかな?)

 ADHDへの「精神刺激剤」投与の経験がある人に小児期の双極性障害発症が生じやすいという研究があることも紹介されています。

 そして極めつけは、次の事件。ここも加藤氏の著作よりの引用:

 「小児双極性障害の診断増加に中心的な役割を果たし、こうした子供に対する抗精神病薬治療を境に先 駆けて提唱していたのは、ハーバード大学のビーダーマン教授でした。最近、小児性双極性障害の権威である同教授とその同僚が、製薬会社から多額の現金を受 け取り、大学に報告していなかったという事実が報道されました(2008年6月8日 ニューヨークタイムズ)」

・・・・・この部分については、加藤氏の本のほうが少し詳しく、手厳しく、具体的なくらいかもしれません。

******

 おしまいに、この本を書くにあたっての冨高氏が思いを語った、終わりの方の部分から引用したい。

 「『SSRI発売後、日本全体でうつ病患者が急増した』と説明されても、気分を害す患者の方が多いのではないかと思う。うつ病で苦しんでいるのに、大局的な一般論を説明されると、不快に感じる人もいると思う。正直に言うと第1章から第3章までの内容に関しては、家族から患者に積極的に伝える必要はないのではないかと思う」(p.240)

・・・・・・しかし、読売新聞と春日氏(と出版元の幻冬社?)が、この本をここまでセンセーショナルに仕立て上げてしまった。

 私が言いたいのは、個々の製薬会社の個々の薬に関して、治験のあり方、副作用の問題、プロモーションのあり方が問題にされてしかるべきだけれども、十把ひとからげな医療不信を煽る発言は、患者を不安に陥れるばかりで危険だということです。

・・・・・と、私はこの前の記事で書きましたが、情報的にはネット界では結構知られていても、この種の一般向けの本がどういうわけか日本ではあまり出版されて来なかった中であえて出版に踏み切ったこと(しかも冨高氏のように、非常に冷静でつつしみ深い表現をなさるお医者様がお書きになったこと)に十分な意味はあると思います。

 ・・・・ですが、正直に言って、あの新聞の書評だけで、「おまえは大した鬱じゃない、働け!」やら、「薬を飲むのはやめなさい!」的な家族争議が日本のどれだけの家庭で発生し、うつの人の心を揺らし、混乱させたか(更に病院でも多くの患者さんとお医者さんとの間で騒動があったことだろうか)容易に想像がつく。

 そのような事態は、著者の冨高氏自身は全く望まなかった事態の筈である。

 それこそ、「プロモーションの恐ろしさ」ではないか!!

 冨高氏も、純粋に薬の効き目としてみた場合については、旧来の抗うつ薬よりSSRIの方が常に安全で副作用が少ないとはいえないことを、慎重に論じているに過ぎないのである。

 何しろ、冨高氏自身は、SSRIが自殺率が高いという、よく言われがちなことについては、ご自身の臨床経験からはむしろ懐疑的なくらいである。

*****

 私は、この本を、お読みになるとすれば、冷静に細やかに読解し、安易にこの本を振りかざして、「重たくない」とされるうつ病の人を軽視することに繋がらないことを祈ります。

 何と冨高氏自身も、本書の中ではっきり次のように書いておられる。

「会社員のうつ病は、統合失調症や重度うつ病より診断が楽ということは決してない(p.28)

 ・・・・よって、amazon的に言うと、複雑な思いを込めて★★★とします。

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2009/09/29

「久留米でうつと働き方を語る会」設立

 私自身が、うつの皆様のためのサポートグループを立ち上げさせていただくことにしました。

●久留米でうつと働き方を語る会

 詳しくは上記のサイトを読みいただくので十分なのですが、今回だけその要約版を転載させていただきます。

******

■設立の趣旨

 今日、うつ病は、以前よりも軽症化してきたと言われつつも、中年期からの病ではなくなり、若い頃からはじまり、何年も、容易に平癒し得ないまま、闘病生活を続けておられる皆さんが増えています。
                   
    更に、昨今の不況と雇用情勢の悪化の中で、厳しい労働条件の下で、ご自身なりの働き方の活路を見出せないまま、復職と休養を繰り返しておられる皆さまが少なくないようです。
                   
 欝に関しては、ここ数年、マスコミや書籍、インターネット上での情報量は飛躍的に拡大しました。しかし、うつ病のあり方そのものが時代と共に変化している真相について、ほんとうにバランスよく解説した情報資源はなかなかない現状のように思います。
                   
    そうした中で、うつ、および広い意味での「気分障害」と診断された方ご自身、そしてご家族や知り合いの皆様は、情報の波に翻弄されておられることかと思います。
                   
 一方、こうしてうつの患者さんが増えていく状況のあおりを受けて、精神神経科や心療内科を受診する患者さんの数は日増しに増加しており、心あるお医者様の尽力にもかかわらず、患者さんおひとりとお医者様が診察時にできるコミュニケーションの時間が減少する傾向があります。
                   
 うつ状態というのは、実際に当事者になってみないとその状態が実はどんな「心身の実感」を伴うものなのかわからないところがあります。理解ある家族や同僚に囲まれておられても、ほんとうのところは伝えきれない「何か」を内に秘めておられる皆さまは少なくないかと思います。
                   
    そうした皆さま同士がコミュニケーションするささやかな場を、地域に提供できないかということを、自身、鬱状態からの治療・回復を経てきた臨床心理士である私は考えるに至りました。
                   
   ひろく参加してくださる皆様を募集いたしますと共に、協力してくださる専門家の皆様、こうした活動をはじめることを広めてくださる皆様を求めています。
                   
                                       代表 阿世賀浩一郎

*****


■スケジュール

  • 第1回は、10月25日(日)開催予定です。
                       
  • 原則として、毎月最終日曜日、13時30分から16時まで開催予定。                   

■参加費

 1回 1,000円(独立採算制の非営利グループ(独立口座を作り、会計を参加者に公開)とします。


■対象者

  1.  医療機関で、広い意味での「気分障害(大うつ病、双極スペクトラム障害、気分変調性障害、双極性障害「2型」、非定型気分障害等)」、ないし「適応障害のうつ状態」と診断され、「現在も通院継続中」当事者の皆様。

     ただし、双極性障害「1型」等の診断をお受けの方の参加はご遠慮ください、(詳細についてはグループ規約をご覧下さい)。
                                               
  2.  まだ医療機関での受診暦はないものの、ご自身がひょっとしたら「うつ状態」になりつつあるのではないかという不安をお感じの皆様。
                                               
  3.  満18歳以上で、バイトでも結構ですので、「社会人経験」がある方とします(自営や専業主婦の方も含まれます)。
                                             
  4.  また、こうした障害を抱えた方を身内にお持ちの「ご家族」の皆様の、単独での参加も歓迎いたします(将来的には「当事者会」と「家族会」の分離も検討します)
                                             
  5.  地域に密着した活動を目指していますので、原則として筑紫平野(福岡県筑後平野と佐賀県佐賀平野)の近辺にお住まいの方を優先したいと思います。


■グループ内での守秘義務

  1. クループに参加したメンバー同士の守秘義務を重視したいと思います。

       代表である私も、この会で参加者の皆様によって語られた「具体的な内容」については、個人ホームページや開業サイトなどの開かれた場で一切報告いたしません。
       参加者の皆さんにも、この点でご協力お願いいたします。
                                                                               
  2.  具体的に「どこで」カウンセリングや医療を受けているかについては、お互いに一切、グループの場でやり取りしない約束にしたいと思います。                        
                                                       
  3.  代表である私も、グループの場で特定の病院を批判したり推薦する発言は一切いたしません。                          
                                                       
  4.  このグループはあくまでもうつの当事者、およびご家族が、うつにまつわる個人的な生活上の問題をめぐって相互交流する場です。

      それ以外の商業・政治・宗教・趣味同好会等の宣伝・広報・勧誘についての言動や配布物の配布を一切禁止します。
                             
      そうした参加者の方は即刻ご退去をお願いし、それ以降の参加をお断りする場合もあります。

■グループの進め方

 基本的には、「非構成的エンカウンターグループ」に準じるクループ形式とします。
                     
  まずはひとりひとりの参加者の皆様が、他の参加者の前で、自分の思いを語る場になることを重視します。
                     
   一定の課題やワークを提供するセミナーやワークショップとは一線を画したいと思います。
                     
   そして、一人の参加者の方が話をしている間、臨床心理士である私が、まずはしっかりとした「聴き役」として機能するファシリテート(グループの「場」と「機能」を安全に維持・促進するための言動)を重視します。
                     
   参加された方全員が、思いを語れる場になることを大事にしたいと思います。


■本グループのネット上の活動について

  1.  募集等の情報告知のための独立したウェブサイトを立ち上げます(リンク先のサイト)。
                                                                                 
  2.  しかし、会の活動が少し活性化すると「誰かが燃え尽きる」危険が容易に生じるのがこうしたグループの常です。
                             
     会としての公式の「ネット上の『相互』交流活動(メーリングリストやネット掲示板やブログ、チャット、Twitter、ソーシャル・ネットワーキング・サービスにあたるもの)」を、参加メンバークローズドのものを含めて、一切開設しないことを考えています。
                             
       リアルワールド(現実世界)での、毎月1回、決められた時間の範囲内での、フェイス・トゥー・フェイスで顔を合わせる場こそ、このグループの大事な「枠組み」としたいのです。
                             
       それに、そもそも、これ以上、「夜更かし」の種を増やしかねないことだけは、お互いにやめようではありませんか!
                                                       
  3.  例外として、それまでに参加された皆様でメールアドレスをご登録いただけた方に対して限定的に発行する、開催日程をお知らせすることを主なる目的としたメールマガジンは開設するかもしれません。                     

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