大正大学

2009/12/10

派遣労働者は企業メンタルヘルスや産業カウンセリングの蚊帳の外? -福岡県精神保健福祉冬期講座に参加して(1)-

 やっはり記事の順序をもう一度再入れ替えしましょう(^^)

 一昨日参加させていただいた、福岡県精神福祉冬期講座「不況を生き抜く -多様化するうつ病と休職・失業からの再出発-」の報告記、第1弾。まずは午前の部についてご紹介します。

 講演午前の部に招聘された先生は、大正大学の廣川進先生。「休職・失業のキャリアカウンセリング -人生の危機・転機を越えていくために」という演題でした。

 ベネッセで18年間勤務され、雑誌「ひよこクラブ」などの編集に携われた後、衛生管理者としてヘルスケア部門を担当され、採用・教育研修など、人事の業務も経験されたとのことです。

 40歳を迎えるにあたり、臨床心理士になることを決意されて大正大学大学院に社会人入学。病院臨床の経験も積まれ、現在も大正大学の准教授をお勤めの傍ら海上保安庁にも勤務され、先日の佐世保での事故の際にも危機介入のため活躍されたとのことでした。

*****

 企業人から産業カウンセラー・キャリアカウンセラーに転じられた経歴をお持ちというだけのことはあり、企業の内部事情にも精通された上で、個別処遇を重視する、会社内のさまざまな関係者を「チーム」としてフル活用した、うつ状態に陥った中間管理職の社員への細やかな復職支援の統合的アプローチの実践例を例示いただき、たいへん参考になりました。

 少なからぬ場合、配置転換されてきた、業績至上主義の新上司からのパワハラの問題が関わること、今の日本企業は競争社会になったために、「かわいがった部下に先に昇進される」リスクがあるため、社内の空気そのものがギスギスしているため対話が少なくなっていること。会社再建のために銀行から派遣された役員によって、実力ある管理職がスケープゴート的に詰め腹を切らされ、リストラされることが引き金となるうつの発症などがあるというお話は興味深かったです。

 また、うつによる休職と並行して、家族構成員に様々な問題が「同時多発」することが多いということ。子供の引きこもりや行動化、配偶者の抑うつ、親の介護などの問題が、一気に表面化=「同時多発化」しやすいようです。それまで、「ともかくも働いてしっかり稼いできてくれる」ということによってかろうじて見かけ上の平衡を維持していた家族力動の、潜在的な歪みが一気にあふれ出すということのようです。

*****

 廣川先生のお話は更に、失業者のメンタルヘルスの問題について、ハローワークを訪れる求人者の意識の実態調査に基づいて踏み込んだ問題提起へと展開しました。

 多くの退職者は、見かけ上は、キャリアアップや「今の会社があわない」などの理由を真っ先に挙げますが、実際には社内(特に上司)との人間関係に悩んだ末であることが少なくないそうです(これは私見ですが、いわゆるリストラの場合ですら、その対象として選ばれるかどうかには、この人間関係上の問題が少なからず影を落としていることがあると思います)。

 そして、求職者は、もはや仕事が見つからない「恐怖」に脅かされており、それまでのキャリアが通用しないことによるアイデンティティの喪失、求職活動しては不採用になることを繰り返す中で、精神的消耗やうつ状態、身体症状の悪化、場合によってはアルコールやギャンブル嗜癖に向かうなど、潜在的に「自殺者予備軍」となる危機にさらされている。

 しかし、ハローワークの現段階でのメンタルヘルス相談の体制は、まだ専門的訓練を受けた相談員が少なく、場合によっては「説教され、発破をかけられる」に留まる状況は何とか改善されていかねばならないことを先生は示唆されました。 

*****

 しかし、こうしたお話をうかがう中で、私の中に、何か大事な問題が抜け落ちているという思いが生じてきました。

 質問タイムが最後に取られたので、私は口火を切ってフロアから感想をお伝えいたしました。

 「大企業の管理職の方々の復職支援における統合的アプローチ、そしてハローワークを訪れる求職者のメンタル状況のついてのお話はたいへん示唆に富むお話でした。しかし、今日のうつ病患者の増加は、20代後半から30代において顕著であり、私がお会いしてきた通院中のクライエントさんの非常に多くが正社員ではなくて、その世代の派遣勤務です。

 リストラされなかった正社員のバーンアウト症候群の問題は確かに深刻ですが、それと平行する形で、それまで派遣社員を統括していた正社員自体が配置転換され、「ベテランの派遣社員」に、その正社員の業務が「丸投げ」される現象が生じてきているようです。

 その結果、一番優秀な派遣社員がオーバーワークになり、深刻なうつの危険に直面している気がします。

 しかし、多くのケースにおいて、派遣社員は産業カウンセリングや企業メンタルヘルスのシステムの蚊帳の外に置かれたままという気がしてなりません」

*****

(以下、第2回、午後の部についての記事に続く。午後の部は、「未熟型うつ病」概念についての非常に詳細な解説と問題提起を含みます。こういちろう畢生の超大作になりますので、明日になってから書きます)

(【追記】・・・といいつつ、その序曲だけをまずは書きました)

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2009/09/03

「カウンセラーこういちろうの雑記帳」の主要過去記事を一番簡単に一覧するには

 このブログって、すでに創設4年9ヶ月、過去のエントリー記事総数が、「この」記事で1,914本め、なのに一日あたりの新エントリー、平均1.10本以上を現在も維持、しかも長文が多いという、へヴィー級ブログです。

 おかげで、もはや@ニフティココログが割り振ってくれているサーバー負荷が相当なものになっているせいか、

  • 私の方からトラックバックを送ることがもはや機能しない
  • pingも自動では飛ばせない(その割には随分多くの読者の皆様が、新記事アップ直後においでいただけることを幸いだと感じています)
  • カテゴリーにすべての記事が反映しない(カテゴリーによっては300から400エントリー分表示されようとするわけで)

・・・・・という、新しくおいでいただいた読者泣かせのブログになっていると思います m(_ _;)m

****

 もちろん、バックナンバー全体を表示してくれる、『アーカイヴ』ページ(自身がココログユーザー以外の読者の皆様、お気づきでしたか??? 右フレームの「バックナンバー」という文字そのものをクリックするとたどり着けます)というものも、あるにはあるわけです。

 しかし、このページにお行きになっていただいたとしても、過去の個々のエントリー記事のタイトル一覧があるわけですらない

 このページからの「〇年〇月」を全部めくっていただくだけでも(全く休眠した数ヶ月を除いても、現在50か月分ほどあるわけですね(^^;)。その50ヶ月分、それぞれ月ごとに、毎月30から40エントリーずつはあるわけですから・・・・・

 つまり、私がこのサイトでこれまで書いてきた主要記事がどんなものか、新しい読者の皆さんにおおよその見当をつけていただくには、もうデタラメにご不便をおかけしていることと思います   il||li _| ̄|○ il||li

*****

 この問題を一気に解決し、

  • 新記事の方が上に来る形で、
  • 過去の記事に関しては私がある程度絞り込んでセレクトしたものを、
  • 数百記事ばかり、1ページをスクロールできる形で
  • ブログのような表示の重さがない形で一覧したいただける

そういうページが、実はずっと以前から存在します!!

●阿世賀浩一郎のホームページ/index

 開設1995年12月(つまりWindows95発売直後)開設、日本において、インターネットで個人サイトを作ることが本格的に普及し始めた黎明期から、何と基本的なデザインを変えないまま運営し続けているサイトです。

 かつては、ネットを代表するエヴァ・サイトのひとつ、「エヴァンゲリオン論考」で著名だった時代もありますけど、幸いにして著作化させてもいただきましたので、そのコーナーは全面削除いたしておりますが(「ちーちゃんの部屋」というアニメコーナーがかつて存在したことを覚えておられる方もあると嬉しかったりして ^^;)・・・・

そのトップページから、このブログでの新エントリー記事を書く度ごとに、固定リンクへのリンクを、たいてい速攻の連続作業でお貼りしてもいるのです。

 恐らく、皆様のRSSリーダーに反映するスピードの比ではない「即時性」で「新着情報」が掲載され続けています。

 同一エントリー記事の更新(改版)情報すら、可能な限り早くお伝えしています。

 

そこに並んでいる、当ブログ個別記事へのリンク数は、常時数百あるはずです(古いものから時々、精選のための「ダイエット」をかけますので、一定数以上には増えません)。

 しかし、敢えて今でも、基本的には「素朴なhtml言語の手打ち」に依存し、javaスクリプトすらないに等しいということで、このトップページそのもののバイト数の多さの割には、表示が圧倒的に軽い筈です(このブログのトップページを表示するよりは軽いと思いますよ)

 
当方のアクセス解析によって、「こっちのページで新着情報見つけるほうが手っ取り早い」ことにお気づきの、毎日数名以上の固定ユーザーの方がおられることは掌握しています(感謝!!)。

 しかし、そうした方の占める比率が以前よりもかなり減っているようにも思いましたので、改めてご紹介させていただきました。

 

今後とも、「カウンセラーこういちろうの雑記帳」をよろしくお願い申し上げます。

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2008/09/24

昨日からにほんブログ村に参加しています。どうかよろしく!!(第2版)

 すでにお気づきの方もあるかもしれませんが、やっと昨日午後から参加しています。

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 私のプロフィールはこちらです。


 《2008/9/25 19:08更新》

・メンタルヘルスランキング 573位 -5167サイト中
 └心理カウンセリングランキング 14位 -130サイト中
・音楽ランキング 1022位 -9033サイト中
 └女性ミュージシャン応援ランキング 8位 -60サイト中
・ニュースランキング 392位 -2540サイト中
 └ニュース批評ランキング 60位 -226サイト中
・総合ランキング 29793位 -218968サイト

です(^^)

今後は、以下のクリック、どうかよろしく!


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2008/02/15

フォーカシングの、世界の最前線の記事たち

 「こころの天気」でおなじみの土江正司さんから以下のニュースをご紹介いただきました:

The Focusing Instituteの定期刊行物、"Folio"の、土江さん、日笠さん、上村さん、土井さん、小坂さん、増田さん、天羽さん、久波さんなど、日本フォーカシング協会の精鋭たちの、多忙な中、時間を割いての尽力による日本語翻訳版です。日本フォーカシング協会サイトにあります。

http://www.focusing.jp/International/folio20-1index.htm

 アフガニスタン中南米にもひろがる、世界のフォーカシング最前線の人たちの肉声が伝わってきます。

 個人的には、ジェンドリン自身「タウン(街)と人間的な注意」という、講演の一部を抄録した記事が興味深いです。

 ジェンドリンは、今も、現在と未来を見つめ、精力的に活動しています。

私がカウンセリングを受けたい人は誰か?

 私も、ある意味で、精神分析を「仮想敵」にして書いてしまっていることは自覚しています。

 他ならぬフォーカシングそのものが、ある種の「島宇宙化」の弊害を抱えている。ただ、「フォーカシング指向心理療法」が、意識的に、すべての流派のアプローチに開かれた心理療法であることを標榜しているということです。

 このあたりは、まだ一般にはよく知られていないかもしれない。ジェンドリンの「フォーカシング指向心理療法」の下巻を読むと、そのスタンスがよくわかります。行動的アプローチ、認知的アプローチ、解釈的アプローチ、ゲシュタルト的アプローチ、夢へのアプローチ、身体に直接働きかけるアプローチ、もう「エンジン」はなんでもありであり、その「エンジンオイル」がフォーカシングなのだという徹底。

 ただ、治療者の逆転移の処理というところまでは、この本でも踏み込み不足。

 ここから先は、ジェンドリンも未踏の領域。

 私はこの本を読んでから10年近く、その領域を前に進めることにエネルギーを注ぎ(その結果、バリントやウィニコット、オグデンの「第3主体論」について、更に深く読み込む必要が生じました)、そこに実践水準ではすでにおおよそのめどがついたので、今は認知行動的アプローチによる適用へ、主なる関心を移しています。

>もし自分自身が神経症やうつ病になったときには、○○さんやこういちろうさん自身はどういうカウンセリングなら受けてみたいと思われるのかな。

 これ、私にとっては「仮定の問い」ではありませんので(^^)

 前の職場をやめたのが、欝のためであることは公言しています。おかげで「薬物療法」を生かすにはどうすればいいのかについての経験値が一気に上がりました。

 その過程で「某派の」国際資格を持つ人(個人的関係は皆無だった先生)に、一年カウンセリングも、一クライエントとして受けていますよ。

 そういう中ではっきり感じたのは、「心理療法は流派と無関係」という強烈な思いです。

 そこそこいい先生なら、セラピストは誰でも「利用できる」(^^)

 そして、私が最後に頼ったのは、他ならぬ私自身の一人フォーカシング能力を極限まで磨き上げることでした。

 私は日本のフォーカシングの領域の頂点のひとりですから(このことをさらりと口にした方がいいなと最近感じてます)、フォーカシング関係者にセラピーを受けることは、あまりにも「政治的問題」であり、関係性の次元での厄介な問題がありすぎるのです(^^)

 それでも敢えて心理療法を受けてみたい人の名前を挙げれば、村瀬嘉代子先生山上敏子先生でしょうか(^^)


*****


・・・・・・恒例、セーイチさんの「発展途上臨床さいころじすとの航跡blog版」のエントリー、「外れた解釈」(すでに119コメント)への私のコメントからの転載。

2007/12/06

ジェンドリンの全論文がネットで読める(講演も聴ける)

> フォーカシング研究所では、できるだけ多くの人に
> 利用してもらうために、関係のあるインターネット上のサイトに
> たくさん、リンクしてもらうというキャンペーンを
> 行っています。

> 皆さんの中でもホームページをもっていらっしゃる方は、
> ぜひ、リンクをお願いします。

http://focusing.org/gendlin/

 これは、フォーカシングの世界では、皆様おなじみ、大正大学の日笠摩子先生からの、日本フォーカシング協会メーリングリストでの呼びかけです。

謹んで転載させていただきます。

*****

 なお、ここに行けば、ジェンドリンの音声ファイルもあるんですね。

 以前の記事でも、何と、iTunes Storeで無料発信されているものがあることをお知らせいたしましたが、† tangine †サイトの nanaさんは、「ジェンドリンのオンライン図書館より」という記事で、

Gendlin, E.T. (2007, June). Focusing: The body speaks from the inside.

をお勧めになっています。

 音声ファイルへのダイレクトアクセスはこちら

 今回のBGMはこのジェンドリンの声.....ということで。


2007/06/29

「フォーカシング指向心理療法」とは?

「フォーカシング心理療法」のセラピストというのは、カウンセリングのプロセスを、クライエントさんが感じている、言葉にならない「実感」(=フェルトセンス)と「照合」しながら進めるように、絶えず気配りできるセラピスト(カウンセラー)のことである。

 クライエントさんには、自分の実感が求めて行く方向にカウンセリングを進める「主導権」があるわけですね。

 だから、例えば、クライエントさんが、

「きのう、職場で凄い失敗をして、家に帰ってからもそのことがあとを引いて、きょうまでずっと落ち込んだ気分でいたんです」

と話していて、カウンセラーが、

「試しにその落ち込んだ気分のそばにやさしくたたずんであげることはできないでしょうか?」

という提案(フェルトセンスに触れるための典型的な提案)をした際に、

「......あの、今はその落ち込みに触れて行くより、まずは、きのう職場で何があったのかをじっくり話してみたいんですけど」

とクライエントさんが言い出したならば、まずはそのことをカウンセラーは受け止め、優先せねばならないことになる。

 つまり、クライエントさんの、フェルトセンスに今は触れたくないというフェルトセンス(!)を優先するのが的確である。

 こういう時に、クライエントさんに、「ほんとはその落ち込みそのものに触れなおすなんて嫌なんだけど、カウンセラーの先生が求めて来たことなんだから、そのとおりやらないと」という方向に向かわせないための柔軟な配慮ができるか?


*****


 更にいえば、その後の展開で、

「昨日のような仕事上のトラブルを起こさないためにはどうしたらいいのかの対策を具体的に、(カウンセラーの)先生と一緒に考えてみたいんです」

と,クライエントさんが言い出したら、どうするか?

 「なるほど、では、私とあなた、それぞれが、どんな対策が考えられるか、これまでうかがった話全体を感じなおしてみながら、探ってみるための時間をしばらく取りましょうか」

などというふうにして、沈黙の時間を数分持ち、その後で、まずはクライエントさんの対策案を言葉にしてもらい、続いて、その案の「しっくり来るところ」「しっくり来ないところ」を感じなおしてみてもらうことも出来るかもしれません。

 当然、カウンセラー側の案も、クライエントさん側がそれを「しっくりくるかとうか」感じなおしてもらう沈黙のひと時をお取りすることになるでしょう。


.......このくらい、柔軟でなければならないのが、フォーカシング指向心理療法だと思います。


*****


 このようにこの記事で説明してみるヒントになったのが、この本。


パーソン・センタード・セラピー -フォーカシング指向の観点から- (バートン著 日笠摩子訳)

2007/06/10

成功したキャリアある開業カウンセラーはひとりでどのくらい稼げているか?

.....というわけで、日本臨床心理士会の「私設心理相談」研修会から帰ってきました。いろいろ、さすがにここでは書けないホンネの話を先輩の先生方から伺えて、刺激があり、元気ももたえたのですが。

 さて、予想通りといいますか、「私設心理相談」という呼称変更は無っ茶苦茶に不評でした。この呼称変更について、この研修会の場で公式に報告された「理由」は、まさにこの記事で私が想定した理由そっくりそのままでした。

 参加者は、恐らく300名にのぼったと思いますが、全体会の後、午後の分科会で分かれた後の配分からすると、半分以上は、「これから開業も考えている臨床心理士の方」、あるいは、「開業カウンセリング機関で働いている臨床心理士の方」だったようです。私は「開業5年未満の臨床心理士」という分科会に出ましたが、そこで40名ほどだったでしょうか。

 さて、トピックとして何をここで取り上げようかと思いましたが、まずは、「開業臨床心理士の収入はどのくらいか?」という、思い切って現実的な話にしましょう。

 全体会で「開業20年」のベテランの先生がお明かしになった数値ですので、ここで公表しても差し支えないと思います(どなたかはお伏せします)

 「病院臨床十数年のキャリアを重ねて、自宅敷地に独立したカウンセリングルームを建て20年。カウンセラーは自分ひとりだけのまま」という先生が、大学の教職との兼業をお引き受けになる前の、もっともケースを引き受けておられた頃の数字です。

 年間面接時間1237時間
 最多月128時間
 年収1200万円
 必要経費300万円

 これを一日当たりに換算すると、最盛期は1日6時間強となります。構造のしっかりとした厳密な心理療法的枠組みをとる面接ばかりです。ここには、記録のための時間や経営上・事務上の雑用や電話での問い合わせや予約への応対時間は含まれていません。

 これを週5日以上のペースで毎週過ごすと、精神的・肉体的に限界状態で、終わった後何もする気が起こらないそうです。これは理解できます。

 この先生の面接は1時間10,000円。キャリア豊富な開業カウンセラーですと、都市部ではごく普通の相場でしょう。

 厳密には、1000万円以上の収入になれば一般消費税もかかります。

 しかし、どうでしょう? 大学院までの高学歴、十分すぎる病院臨床のキャリアと、その学派の心理療法の研修暦を持ち、絶えず専門家として継続研修を重ねて、50代で家族を養って所得が1000万円を超えるのが難しいというのは?

 これが、日本の開業個人心理臨床(.....という言い方をどうしても使ってしまいますね.....)の現場では著名な大家の先生の、めいっぱいにクライエントさんをひきうけた状態の現実です。

 私の現行の料金体系のままだと、ひとり開業である限り、(ケーススーパービジョンやフォーカシングのトレーニングの割合がどうなるかにもよりますが)、幸いにして繁盛させていただいてめいっぱい働けても、そもそも1000万円前後にしかならない試算に意識的に『今のステージでは』たって経営しています。ちなみに私は自宅も職場も賃貸です。これだけで180万円弱減りますので(住宅費の高い大船としては、かなり安く上げてるラインでしょ?)。

 もちろん、経営がある段階に達したら「事業拡張」は考えますし、「スタッフ増員」とか、カウンセラー研修への力点の移動、そして、ほんとうにキャリアを積んだところで教壇「にも」立たせていただけることが夢です。

 でも、少なくとも50代の後半までは、「現場第一線」で何ができるか、踏ん張ってみたいものだと思っています。

*****


 ちなみに、この「私設心理臨床」研修会で学んだことについては、テーマを変えて、いくつか続きを書くつもりですので、お楽しみに!!

2007/06/09

明日は「私設心理相談」研修会参加

 明日は、東京・駒込の大正大学で、日本臨床心理士会の「私設心理相談」の研修会があります。

 午前10時には会場に着いていなければならない性格上、今日は夜更かしは自重したいので、「今週のベスト20」発表はまる一日延期、日曜の晩にします。

 私設(開業)心理臨床というテーマで、日本全国から臨床家の皆様が集まる場が、どのようなものになるのか、まさにこの領域の固有の問題について具体的な議論が盛り上がる場となることを期待しています。

 おそらくひとつの大きなテーマになるのは、臨床家の倫理と法律の問題だろうと想像しますが、経営的なたいへんさだとか、新規にこの領域に踏み出す際に、クライエントさんをどう開拓するか、普段の広報宣伝活動をどうしているのか、などという「現実的な」ホンネの部分での意見交換がどんどん出てくる場になって欲しいなと思っています。

 その内容についての感想も、このブログで何らかの形で報告させていただきたいと思っています。


*****


 一般の読者の皆様の目にどう映っているかと思いますが、日本では、純粋に開業だけで生計を維持している臨床心理士はまだかなりの少数派といっていいはずと思います。この辺、欧米の映画とかに出てくる「精神分析医」みたいなイメージをもたれてしまうと全然違うんですよね。

 いつもいいますけど、少なくともフォーカシングを「表看板に掲げて」開業している「常設相談機関」は、日本・精神技術研究所のオープン・プログラムを別にすると、不詳私の「湘南フォーカシング・カウンセリングルーム」日本最初かつ現在でも唯一のはずです。個人的な面接を結構引き受けておられて、そこでフォーカシングを活用されている方は他にもあるかと思いますが.....

 もっとも、いつも申し上げているように、私のポリシーとして、通常のカウンセリングにおいて、私の方からフォーカシングをお薦めすることは全くしていません。これはお題目ではなくて、本当に現実にそうなのです。

 私は、流派や療法の違いによって、カウンセリングの優劣があるなどというのは全くの幻想だし、ある特定の症状だとか病理水準の人にある特定の心理療法が効果的ということすら全く信じていません

 そのカウンセラーにとっての主たるオリエンテーション(拠って立つ基盤)というのは、あくまでも、その臨床家が、専門家として成熟していく上で、いわば「てこの支点」となったものであるに過ぎないと思っています。

 いわば、「町の開業内科医」のようなスタンスとしての「街のカウンセラー」というものがある気がしてならない。クライエントさんの守秘義務を尊重する形で、精神神経科や心療内科の専門病院・クリニックや、地域精神保健、公的な教育相談や児童相談、そして教育機関やスクールカウンセリングと緩やかに連携し、そうした機関とのクライエントさんとの関わりや活用をサポートしつつも、それらと競争関係にあるのではない、敷居の低い開業カウンセリングというのがあり得ると信じています。

 こうした、まだまもなく開業2周年にすぎない私の発想をいかに具体化するか、開業の先輩方の知恵を借りながら、吟味する場になることも、研修会に期待しているのですが。

*****

 【追記】:研修会に実際に参加してみての感想は、こちらの記事を筆頭として、いくつかのトピックを書いてみるつもりです。

2007/05/05

「開業カウンセリング」ではなくて、「私設心理相談」!?(第2版)

 日本臨床心理士会からの知らせにより、私のようなカウンセリングのスタイルは、今後「開業カウンセリング」という言い方はせずに「私設心理相談」というふうに呼ぶことになったそうです。

 「開業という言葉への他業種からの強い抵抗」が理由、ということからしますと、結局、臨床心理士がまだ国家資格になっていないという点が大きな問題だったのだろうと推測しますが、それなら、国家資格化されたら、もう一度「開業」という表現も公的に流通していいという状態に戻してほしいものです。

 だって、「私設」という表現にしたところで、そこに厳格な資格審査の過程があって「臨床心理士」を看板として開業しているわけですから、何かアマチュアが勝手にやっているかのような逆のイメージも誤解として生じかねない気もします。私のように、経営形態を「株式会社」にまでしてしまうと、いよいよ「私設」という表現がなじみにくくなります。すでに「法的人格」があるわけでして(^^;)

 あくまでも、むしろ国家資格化を後押しするための、一時的な「政治的妥協」として、この変更をとらえて欲しいものだと思います。

 カウンセラーが、どこかに雇われているのが「正常形態」であるなんてとらえられても困るし、「夢は独立開業、自分でオフィスを構えて、資格一本で生きられる専門職」というイメージを、それが現状ではいかに障害が大きいとしても、若い人に抱いてもらえるくらいでないと、この「専門職」に就くことへの若い人の夢と責任感とモチベーションにも影響すると思いますし。

*****

 【追記】:あと、「私設」という言葉は「施設」と同じ読みなので、話し言葉だと、これまた誤解の要因になる。「施設心理相談」......ホズピスでのターミナル・ケアみたいに思い込む人も出るかも???。学会では日本中の,言葉のアクセントが異なるカウンセラーが集うのに。.....このことを検討委員会の誰もなぜ問題にしなかったのか不思議ですが。

 はっきり言って,この名称変更提案は、カウンセラー内部では無茶無茶に不評だろうと思います。「個人経営心理臨床」「カウンセリング個人経営」ぐらいの方が,変えるにしてもよかったかも。無料ということはないでしょうから。

 「経営」の文字はむしろ自覚的に入れてもいいかもしれない。カウンセリングを奉仕活動やボランティアと思い込まれない上でもいいかも。

 「開業」して,いよいよつくづく思うようになったのは、人と一つの部屋で対話するだけで1時間で6000円とか10000円いただいて「食べて行く」ということは、世間の人からすれば、よほどのプロフェッショナリティがないと認めてもらえない仕事で当然ではないかという思いです。

 (間違っても、私とのカウンセリングで、私がいつもこのブログで書いているようなことをしゃべくりまくっているなどとは想像しないで欲しいです(^^;) カウンセリングの「ライブ」と,カウンセリング「について語る」ことは、それこそ生身の牛さん「である」こと.....とまではいいませんが,少なくとも演劇で迫真の「牛」役を演じ切ることと、牛「について解説する」ことぐらいに次元の違うことです)

 少なくとも、プロスポーツや俳優と同じくらいには修行のいるprofessionとむしろ見ていただきたいわけで。

 
 
******

 いずれにしましても、6月10日、大正大学で開催の、日本臨床心理士会の「私設心理相談研修会」には参加させていただく予定です。

 

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