「こども達とフォーカシング」書評
共著者のひとり、マルタ・スタルベルツは、長年、発達障害の子が沢山いる学校で、児童心理士として活躍しておられた方である。
しかし、本書は、子どもや親や学校の関わりのみならず、大人自身が、様々な個人的現実世界や、組織・施設の中で、フォーカシングをいかに役だてられるかにも様々な示唆を与えてくれる。
フォーカシング関連の書物の中でも、訳はたいへん秀逸な部類に入ると思う。原著そのものに、難解さがない、流れるような自然さがあるであろうことも容易に想像がつく。
多少フォーカシングに馴染んだ人であれば、全くスムーズに読めるであろう。
著者は、こども達と関わる上で、普段思わず使ってしまうような物言いをほんのちょっと控えてみて、親や教師の側が、まずは自分の内側の感じに注意を向け、心のスペースを取り戻すことの重要性を説く。そして、子どもの傍らにいる中から生じてくるボディ・センスに感情移入的に注意を向け、丁寧に気持ちを察しながら言葉を返していく(これを「ミラーリング」と呼ぶ)、それだけでも、子どもとの関係性が、たとえそれが赤ちゃんとの関係ですら変わることを示唆する。
そして、子ども自身が自らのボディ・センスに注意を向け、程よい間合いを見い出すことで、自らにやさしい関係を作り、それが行動(かなりの問題行動すら含む)の好転を無理なく促すことに結び付けられるかを、様々なケースについて、思春期に至るまで、年代別に注意すべきポイントを少しずつ変えながら解説してくれる。
子どもがボディ・センスから自分の細やかで複雑な感情や状況を表現するために、言葉だけではなく、絵画や文字などを媒介することを子どもに提案すると、相互作用が深まる様も、こども達の描いた豊富なイラストを挿入ながら理解できる仕様になっている。
また、技法が決して押し付けにならないように、いかに細やかに関係性を築いていくかが前提になっているかについても、非常に示唆に富んでいるだろう。子供達といかに寄り添うか。それは、子ども自身が自分のボディ・センスに親和的になるかと感応しあっているかのようである。
学校教育の現場では、SSTやアサーショントレーニング、認知行動療法的アプローチ、いじめ対策のためのワークがなされている場合も多いであろうが、ここで述べられたフォーカシングの活用は、それらの技法と矛盾したり取って代わるものではない。むしろそうした技法と統合され、しなやかなエンジンオイルを供給するものといえるだろう。
本書の事例を読んでいると、言語の発達や学習障害、自閉、多動、感情の統制などという点で、実は全く平均的児童との隔てがない関わり方の次元があることが生き生きと伝わってくる。本当に「現場型」でフォーカシングの教師としても有能な人たちが書いた本だと思う。
「ここの部分は◯◯技法に似ている」などと安易に類型化して読まないで欲しい。本書の行間に身を委ねて味わって欲しいと思う。そこにはpersonとしての大人と子ども、「人と人」との豊穣なコミュニケーションの世界が広がっているのに気づくだろう。
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以上、未だ途中までの読みかけですが、とりあえずアップ。読み進めるうちに必要を感じれば増補改定します。





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