透徹した「アニメ映像文学」 -新海誠作品-
「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」、一気に観ました(^^)
新海誠監督という名前は、私がアニメから身を引いていた時期にもなぜか目に入り、なんとなく私が非常に好む作風の傑作群ではないかという直感がありましたが、それが見事に当たってしまいした(^^)
三作ともに「星6つ」あげたくなる。アニメ史に残る傑作群ではないだろうか?
・・・・うん、こういうアニメが出てくる方向性をこそ、私は期待していた気がする。
三作に共通するのは、「隔てられた男女の絆」。
そのピュアーで甘酸っぱい(でも少しビターな)描き方は気恥ずかしいくらいですが、十分にリリシズムに満ちた、「オトナの文学」している領域。
「ほしのこえ」はオリジナルバージョンで観ました。わすか24分で感動の渦に巻き込んでしまう密度はとてつもない域。
この作品とと、長編「雲のむこう、約束の空」は、どちらも現代風の日常世界とSF的な別世界がミスマッチ的に共存している点で共通項がある。
特に後者は、ハードSF的な要素もあり、どこまでが夢の世界なのか、現実なのか交錯し続け、観ていて最初の方はそれに戸惑いますが、観ていくうちに謎は解けますね。かなり年季の入った「映画」ファンでないと一回観ただけでは読み解けないかも知れませんが(押井守さんの「イノセンス」に身を乗り出してハマれる人には何も抵抗ないでしょう)、絶妙の構成だと思います。いわゆる「セカイ系」の極みかとも思いますが。
一転して全60分の「秒速5センチメートル」は、「日常系」の何ともしっとりした恋愛もの。一番万人向けなのはこの作品でしょう。普段アニメを見ないオトナでも素直に感動する人が少なくないかと思います。
ハマる人は無茶苦茶ハマる。リアルでスレた現実を生き過ぎている人は、「何、これー?」かもしれないけど、村上春樹の叙情系の作品にハマれる人だと親和性がありそう。
あるアマゾンレビュアーの人は書いています:
「あなたも、心のかさぶたをはがしてみませんか?」
オムニバス形式をとっていますが、3話共に、男性主人公は同じ「遠野貴樹」で、ヒロインの方だけが入れ替わる。実はこの遠野という男性の「恋愛遍歴」ドラマとも言える気がする。
中学時代、高校時代、成人。両思い、片思い、婚約者/恋人との微妙な機微。
そして、「すれ違い」。
遠野って罪作りな男だと思いますが。
ある意味では、男と女の恋愛観の違いも浮き彫りにしてるかも。
男は、いつまでも初恋の女性の面影を追いかけるものだと思う(・・・私がそうなだけか?)
この作品にもロケットがモチーフとして登場せずにはいられないみたいですね(^^)。
****
全作通して、執拗なまでの鉄道へのこだわり。フルデジタルアニメ(あるいはそれに準じる)による透明で空気感に満ち、克明で繊細な日常描写・・・これ以上求めようもない、見事な水準というしかありません。
そして、この新海監督は、脚本から絵コンテ、背景美術、時には作詞まで自分でやってしまうマルチな作家能力。こういう人は宮崎駿しかいなかったのではないか。
この人の作品は「ゼロ年世代」に分類してもいいかと思いますが、こういう「大作家」をこれまで未見だったのは、何とももったいなかったな。
追記:
この作品について、批判的見地から一番まとまったものを紹介すれば、
●新海誠の痛さ(1)懐かしがっているのは誰か?(蕩尽伝説)
といったあたりかと思う。
ただ、この人の現代社会についての見方も、もはやひとつのテンプレかと思う。この人もまた、現代社会の中で疎外され、行き場を見失い、アニメとかのフィクションに身を静める人種であることには変わりない。
いかに今の現実の中で、自分を見失い勝ちだとしても、単にそれを評論するのではなく、足を地につけ、感性を維持した形でそれと戦うことができるというのが私の信念である。
そして、徹底的に、自分の感性を真っさらにして、作品世界に思い切りどっぷりと身を委ね、ビターなものはビターに、リリックなものはリリックに、その作品ならではの味わいを味わい尽くしたいと思っている(もちろん、これらが交錯している場合もあるのだが)。
・・・だから、私は自分が観た作品をクサすことは滅多にない。
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