宮崎哲弥氏、久留米に「たがみ書店」や「リズムレコード」がなくなったことを嘆く
さて、先日の記事でご紹介した、久留米青年会議所主催の、久留米出身の評論家、宮崎哲弥氏の講演会(正確にはパネルディスカッションと対談)、「『日本』、そして『久留米』に元気を! ~私たちが変える~」、面白かったので、早速速報を書きましょう。
会場となった久留米のホテルの大広間は、開始30分前の段階でほとんど満席、主催者発表で660名。
おおおおーっ、日本心理臨床学会大会でもここまで早々に人が集まってる催しはそんなにはないぞ!!
いくら青年会議所とそのバックボーンにある商工会議所の動員力、そして宮崎氏に知名度があるとはいえ、福岡県南部最大の30万都市、久留米のパワーをこれだけ実感できたことは、帰郷してほぼ1年の間にはじめてのこと。早めに整理券予約をしておいてほんとうによかった!!
宮崎さんは、久留米で生まれ、予備校時代までを久留米で育っている。私と2つ違いの方である。これまでも久留米での講演依頼もあったとのことだが、実際に引き受けたのは今回がはじめてとのこと。
宮崎さんがマスコミの表舞台に登場したのは、オウム事件における若者心理について意見を求められることがきっかけだが、あの上祐氏も宮崎氏と同い年、今では久留米市に編入された地域の生まれである。
「最近は政治や経済の評論家とみられてしまうことが多くなったけれども、もともとは若者文化問題や宗教問題から出発した存在に過ぎないので」ということをまず最初に前置きされた上で、司会者に促されて、話は「地方分権」問題へとまずは向かいました。
「東国原知事や橋下知事、全国知事会の発言や提言で、地方分権問題に関心が集まるきっかけとなることはいいことだが、今度の総選挙の争点として見た場合、果たして『地方分権』問題が一大論点とすべき事柄なのであろうか?
まず優先すべきなのは、日本全体の景気底上げ対策であり、それが一定の効果を示さないうちに、単に地方に『権限』と『財源』の委譲を、今、行うだけでは、地域間の格差がひたすら広がるだけになる。地方分権そのものはこれから推進されていくのがふさわしいし、実際勧めていく潮流は動かないであろうにしても」
(司会者:国のそうした政策を単に待っているのではなく、地方の側からできることは何かないでしょうか?)
「いったん景気の底上げがなされた後、それをどのように維持し、展開させるかは各地方の自己責任ということになるだろう。
『内需拡大』という言葉がよく使われるけれども、地域内部における『内需拡大』のサイクル、つまり、その地域内での需要に応える形で、その地域で生産し、その地域で消費活動をするという良循環のサイクルが拡大・成長する必要がある。
そのことが成立するためには、「ここ」にしかない魅力、言い換えれば、「ここ」に住まないと得られない「唯一性」のようなものが、住民に魅力として感じられる必要がある。
久留米もそうした地域自立性の高い経済圏として長年発展してきた歴史を背負っているはず。父祖から受け継いだそうした地域固有のアイデンディディをどのように展開していくかが肝心だろう」
*****
話題はここで一度地域経済の問題を離れ、教育問題に転じることとなる。
「今の時代ほど、世代ごとの情報環境が劇的な格差と隔絶を持つ時代は、かつてなかったと思う。
私の久留米での中高生時代は、ちょうど、テレビゲームが、ゲーセンから家庭内ゲーム機へと一気に転換する時期と重なった。
次の世代は、インターネットに接続されたパソコンによるコミュニケーションを身につけているという意味で、上の世代とは大きくコミュニケーション様式が異なっている。
更に次の世代は、今度はケータイ文化という、大人から見るといよいよわからないコミュニケーション様式を備えている。
これほどのコミュニケーション様式の世代感の隔絶は、人類史上かつてない次元のものなのではないか。
この結果、家庭内の価値観伝達機能はほとんど機能しなくなってしまう危機に瀕している。
以前ならば親の背中から学ぶ、ということがまだしも通用した。親と子の「個体間接触」から子供は学んだ。そして本やテレビを通して、親からの価値観とは異なるものを学んでいた。
しかし現在の若者は、遠隔地のネット上の匿名の他者という、個としての存在がたいへんあやふやな存在に、あたかも身近な他者であるかのように依存しながら価値観を形成していく。
単に背中を見せるだけの親など、価値伝達機能を果たす上では、存在しないのも同然なのである。
これは子供との関係に限らない。自分から言葉でコミュニケーションをとろうとしなければ、相手にとって自分は存在しないも同然で、自分からどんどん離れていくことになりかねない、そんな時代なのではなかろうか」
司会者から、倫理や道徳の問題について振られて、
「『天知る、人知る、我知る』という言葉かある、『天』とは、お天道さまが見ているそ、ということで、『人』とは地域社会の目のこと。しかし私は、『人が止めるから駄目だ』だけでは今の時代不十分なのだと思う。『そういうことをやっていて、おまえ自身が恥ずかしくないか』という個人倫理の形成が大事ではないか。個人倫理の形成は、個人としての自我形成と表裏一体のもののはずである。
司会者から、現在の私たちの知識が情報の渦に巻き込まれている点について問われて、
「マスメディアであろうと、ネットでの口コミであろうと、それを鵜呑みにしないことがまずは大事なのではないか。まずは疑ってかかること。この、疑ってかかる力が、今、弱まっている気がする。
まずは自分の常識と照合すること。実体験と照合すること。今の時代、情報の渦の中で、何が実体験なのかわからなくなっているは確かだが、たとえ自分の判断がいろんな常識に毒されているとしても、人はそれを基に『健全な懐疑』をしていくしかないのだと思う。
新聞に書かれていることであろうと、たとえ信頼できる親友が語ることであろうと、『何かこの話はおかしくはないか?』と違和感を感じたら、心の中でいじくりまわしてみることだ。
多くの詐欺や悪徳商法の勧誘とは、そうした身近な人間への信頼感につけ込むものであることを思い出してみてもいいかもしれない。そのような、親しい間柄での対面的な人間関係ですら、自分で吟味していく必要があるのだ。
そうした積み重ねが、個人として強くなる自我形成なのだと思う」
・・・・・この部分なんて、私も、激しく同意!! の域ですね(^^)
*****
ここから休憩を挟んで第2部、「久留米の地域、そして可能性」に入ります。
司会者から、まずは、久留米の明治通りを中心とする旧市街地のさびれようについての言及がありました。
この件については、私も、
・・・・・という、見かけ上物騒なタイトル(?)の記事で詳しく触れました。
久留米市の商業的中心は、かつては一面の水田とレンコン堀だった、合川地区の「ゆめタウン久留米」を中心とする、高速道路のインターチェンジ近くの、ショッピングモールの一群に、この30年の間に、見事に奪われているわけですね。
こうした前提を聴衆がみんなわかっているという前提で、以下の部分をお読みください。
「私は高校時代まで、たがみ書店やリズムレコード(共に明治通りに並行して今も存在する久留米最大のアーケード街、「久留米一番街」を代表する、久留米最大の書店とレコード店だった)に足繁く通っていましたが、もう今はないんですね。
リズムレコードって、奥に扉で仕切られた、色々試聴できるクラシックコーナーがありましてね。私はそこに足繁く通って、店長にクラシック音楽の手ほどきを受けたんです」
・・・・・わ、私も同じです・・・・・
きっと、2歳違いの私も、宮崎さんを宮崎さんと気がつかないまま、同じ店内で何回も遭遇しているはず・・・・
「先ほども言いましたけど、まさにたがみ書店やリズムレコードには、この久留米にしかない固有の文化というものがあったと思う。そういう、他にはない、「ここ」にしかない、豊穣な経験の場となることが必要なのだと思います。
ところが、今、地方で進んでいるのは、全国どこにでもあるような、メガ・ショッピングセンターができることなんですね。
もちろん、コンビニ文化にもインフラとしての意味があります。どこに行ってもほぼ同じ品揃えの商品が手に入るということの。
でもそれだけだったとしたら、なぜ『この』地域に住まうのか? という『唯一的なもの』がないままなんです。
久留米に生まれ、成長し、死ぬことの意味と魅力が大事。そのためには、久留米の中で生産したものを久留米にいて消費することに意味を感じられないと。
地方都市を単に「ミニ東京」化することばかりが進んで行っては、この町で生きていくことの意味がわからなくなる。そして、例えば福岡(市)に需要を奪われるばかりということになるわけですね。
結局、『制度的な』地方分権ばかりではなく、『マインドの』地方分権こそが本質なのだと思います。
最近、プロ野球の球団も地域が応援するという方向が強まっています。若者音楽の分野でも、ミュージシャンが、有名になって、ヒットチャートに乗る様になっても、自分の拠点となる出身地域から離れないまま活動を続けるというケースが増えています。ヒップホップグループにも、「この町」を大事にするメッセージを発信し続けながら全国区になることが生じている。
そうやって、自分の生まれ育った街から離れたがらない若い人たちが増えてきた。そういう若い子たちの後押しを地域がしていくことが大事で、そうした意味で地域の青年会議所の果たす『黒子』としての役割は大切だと思います。
こうしたことをしていくためには、単なる利潤追求の市場経済原理のどこかで対抗していく必要も出てくるはず。でも、それこそが『地方主権』ということだと思う。
そうでなければ楽しくない。この町にいて『楽しい』と思えるかどうか。主人公は一般の久留米市民なんだと思う。
久留米で生まれたのが必然で、久留米で死ぬのが必然であると市民が自然に感じられるような地域づくりになることでしょう。私も、引退したら久留米で死にたいと思うかもしれませんので、その時は不肖の息子をどうか迎えてくだされば」
・・・・・・久留米に30年ぶりに舞い戻った私の心に響く締めくくりでした。
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