うつ病の2つのタイプ:うつ病になる前の段階で、社会人としての充実感を感じていたか否か?
うつ病になった人の「社会復帰」という言い方がよく使われる。
比較的「古典的な」うつ病患者の皆さん(社会適応水準の高かった双極性障害の人を含めていい)の場合、職場や学校では、明るくて活発、積極的で精力的ですらあるか、仮に穏やかな人だったとしても、責任が強く、任せた仕事は実に粘り強くやり遂げ、同輩や上司(教師)に一目置かれる人だったことが少なくない。ご本人もそうした自分の実力と周囲からの評価にある自負を持っておられたことが少なくないように思う。
こうした皆さんが、うつに陥ると、家族も同僚も、「あの、元気で有能で仕事熱心だったあの人が・・・」などと、以前のその人のありようと比較して、そのギャップに仰天することが多い。もちろん、何より、うつになったご本人が、あまりに変わり果てた自分の現状を情けなく思い、深い絶望と無力感に襲われているのであるが。
このタイプの人の、うつからの回復と「社会復帰」についての願望は、職場の第一線で、以前と同じくらいに精力的に働けるように「回復」することである。このことが、焦れども焦れども容易に実現できず、調子を戻したと思ったらまた欝がぶり返すという中で、苦悩は更に深まる皆さんが少なくない。
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ところが、もうひとつのタイプの人たちがいる。
本格的な欝になる前の段階において、先述「古典タイプ」のような、自他共に認める形で有能さが発揮された「黄金時代」が存在しないのである。
少なからぬ場合、小学校時代(あるいは中学まで)の学業成績はかなりいいことが多い。しかし、一転して、思春期以降の学校や若者集団の中での生活(つまり、学業でなくていいのだ。学校外でもいい。個人的な恋愛だっていいのだ!!)において、充実し、自他共に認める活躍ができたという思い出がほとんど存在しないようだ。むしろ、周囲に溶け込めず、疎外感や劣等感を感じさせられた経験のみがその人の中には残っていることも少なくない。
そして更に進学や就職の段階ですでに何らかの挫折体験をしており、進学したり就職した先でも、上司や教師にも叱られる経験のみが優位で、同輩にも認められす、むしろ自分は落伍しつつあるのではないかという危機感を募らされる経験ばかりが積み重なっている。そうしたストレスに加えて、何らかの外的条件・・・以前よりも責任ある仕事を要求される、不況下における人員削減などで、リストラの対象からは生き延びても、以前のような「モラトリアム的」存在のあり方を職務上許されなくなる・・・・などの中で欝症状が本格化の引き金をひいた人たちである。
このタイプの人は、「非定型うつ病」と診断される人の中のある一定部分(全部ではない)を占めており、あるいは「社会不安障害を伴う」という診断が添えられていることが少なくないように思える。
(この「非定型うつ病」を「新型うつ病」と呼ぶことへの違和については、以前もNHKスペシャルに関連して書いた。実はDSMの診断基準が新しくなっただけ(!)で、以前からこれに該当する状態にある「うつを症状とする」人たちはたくさんいたのであるから。以前だと、こうした人のある部分は、例えば「退却神経症(うつ「症状」を伴う)」などと分類されていたのではないかと思う。「退却神経症」というと、ずっと引きこもったままで社会に出れないままの人のイメージばかりがあったが、それだけでとらえ過ぎると、実は狭すぎたはずである)。
後者のタイプの人にとっては、うつ病からの「社会復帰」とは、「古典タイプ」の人のように「あの日に帰りたい」願望が空回りするという形の堂々巡りではなく、「あの、辛かった世界に再度『参入』し、しかも、今度は挫折しないように、もっとうまくやっていかないとならないのか?」という、遥かに屈折した思いでとらえられていることが少なくないのではないかとも思える。
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もとより、私は、この2つのタイプのどちらのタイプの人が、欝が軽快した後、新たなライフスタイルを徐々に確立していく(私は「社会復帰」という表現をあまり使いたくないのだが)際の困難が大きいのかという問いかけは全く意味をなさないと思う。
そもそも、現代は、この2つのタイプの更に中間形が増えている時代という気もします。
後者のタイプの人に対して、単純に社会参加のための「訓練」に駆り立てるのをよしとするような一部の論調には、私は大いに違和感がある。
前者のタイプの人は、「過去の栄光」にしがみつき過ぎて、空回りやすい。これは少なからぬ回復途上者において本当に「骨がらみ」の悪循環現象である。
後者のタイプの人でも、社会に出る心身の準備態勢が全然ないまま働いていた状態から一度離れ、「うつ病療養」という、いわば「合法的なモラトリアム」を再獲得する中で、ゆっくりと、自分の中の「ひな」を育てていけるという意味で、むしろいいチャンスとなることも少なくないからである。
ある種の抗欝薬や気分安定薬(気分スタビライザ)が適切に処方され、思春期初期から体験していたその人の「軽うつ」状態や内的葛藤を沈静化して、癒してくれ、再出発の助けになることも少なくないことも確かようである。
しかし、投薬の効果を2倍、3倍確実にするのは、医師でもカウンセラーでも、いい援助者との出会いの中で精神療法(心裡療法)であろう(名医だとそれを15分の面接の中でも進めている)。
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