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2009/06/12

NHKドラマ「ツレがうつになりまして。」第3話(第2版)

 これで全3話完結です。(第1話) (第2話)

 最初の方に出てくる、風吹ジュンさん演じるお医者さんの言葉:

「動物は調子が悪ければ、じっとしているだけ。
でも、ヒトは言葉なんていうものを持っているから考えてしまう」

 この前半は私が鬱をとらえる上でのモットーで、このサイトの記事の中でも似たことを何回か言及したことがありますし、先日「こころ相談.com」のインタビューでも使わせていただきました。

 ことばが生み出した「こころファントム(幻影)」の問題というのも、先日ご紹介した神田橋先生の著書の鍵概念ですが、実は、別に鬱についてと限定して先生はお語りだったのはないのですが、「動物は調子が悪ければ、『元気がなくなり』、じっとしているだけ」という言葉に私が出会って、心引かれたきっかけも、この本なんですね(・・・・と、やっと「元ネタ」を明かします)。

神田橋條治/「現場からの治療論」という物語―古稀記念


******


 以下、しばらくこのドラマの展開からは離れますが、このブログをお読みになればお分かりのように、私もまた言葉に淫した人間そのもの、完全主義者ですし、理屈っぽいし、旺盛な文章力と関心ジャンルの広がりという点から見て、かなり「スーパーマン」じみた存在として読者の皆様にも感じられてしまうのではないかとも思います。

 もっとも、私の場合にはこのドラマのツレさんのような、「メランコリー型うつ病」の典型に近いと思われるタイプではなくて、躁鬱的なものが(躁状態の方は目立たない形で)合質している、いわゆる「双極性障害II型」です。

 完璧主義とすごい気分屋でてきとーな部分、感情のままにふるまう部分、事務的な仕事を几帳面にやることが何よりも苦手で、消耗度が人より高い面を、欝なる遥か以前の思春期から併せ持っているかと思います。でも、基本に「人間好き」な面を強く持っているから、カウンセリングという仕事が性に合ったのだとも思います(今でも、私のことを学者やライターがあっていると思っている人は、私の本質が全く見えていないと思う。私の本領は、生身の人間がいる「ライブの」場面。更にうつ病から脱するにつれて、それはいよいよ明確になってきた手応えはああります)

 双極性障害親和的な躁鬱気質と、メランコリー型の単極性鬱病と親和的な執着気質は実は全く別のものであり、両者のライフスタイルの違いを軽んじてはならない(投薬も全く異なりますし)ことについてもすでにご紹介しました

 私は中井久夫先生の「分裂病と人類」を学生時代に読んで感銘を受けて以来、自分をS親和者的=分裂気質的と思っていましたので、自分が医者に「鬱」と診断された時にはかなりの驚きがありました。ちなみに私に「非定型薬」を出す可能性を考えた医師は全くいません(わかるひとにだけわかればよろしい^^)。

 その後SSRIから気分安定化薬のデパケンに切り替えてからはじめて症状が劇的に改善したわけですが、それ以降、自分を、以前ならば全く思いもよらない、「躁鬱気質」の脈絡でとらえなおしてみることをはじめてみたのですね。そうすると、今後の自分のライフスタイルとして一番無理がないのではないかとすら思え始めた。

 ドラマ後半で登場した、ツレさんの「あ・と・で」のモットー、すなわち、

せらない」
「(自分は決して)く別ではない」
きることから」

というのも、これでも以前よりは相当板についてきたかなとも思っています。


 このドラマのこの回でも描かれているように、鬱には波があり、もう大丈夫かと思ったら突然ぶり返すこともごく普通です。そのことに本人も家族も動揺したり落胆したりしがちです。

 しかし、本当は、波があるのが普通である、という前提に立ち、波がないことのほうがおかしいという前提で、人間や動物が、四季の移り変わりや、年毎の旱魃や長雨に対応するために、五感を働かせて刻々とチューニングし、そこそこに無理のないラインで生活できていくことの方が自然なのだと思います。

 ある観点からすると、人間が高性能を維持して故障のない機械になれることこそ理想の労働力とみなされ、日々の生活においても、一年中空調の聴いた部屋の中で、季節の収穫と無関係に同じようなものを食べられて当然と思い込み始める中で、退化し、鈍くなり、自分を年から年中同じ状態にあるかのように欺くのがうまくなったことの裏返しとして、自分の置かれた状況の変化に不感症になり、無理を無理と感じなくなり、鬱の準備状態にはまっているのに、まだそのことに気がつかない人も増えたのかなとも思います。

 今の私は、以前よりも、自分の無理の兆候や、逆にややハイになっている兆候、そして、欝っぽくなっている兆候にはるかに敏感です。

 一度鬱という病に本格的に陥ってしまった皆様の中には、そうした自分の些細なまでの敏感さそのものにむしろ苛立ちを覚え、むしろそれに振り回されて困っている方たちもたくさんおられるかと思います。

 でも、その敏感さが、むしろしなやかで柔軟な、新たなライフスタイルをあなたに導くための羅針盤にもなるはずです。

 羅針盤とは、どっちが北でどっちが南かを見失わないためのものです。多少、航路から外れてきたなと気がついたら、その段階で航路を「完全補正」するのではなく、風向きや地形や気象や波の状態も配慮しながら、そこそこ回り道をして目的地に向かうのも大事な「航海術」かと思います。

 そうした皆様に、その羅針盤を共に見守って、航海を共にしてくれるような人たち(専門家・非専門家問わず)との出会い(出会いなおし)がありますことを。

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