日本臨床心理士会 『私設心理臨床のあり方に関する基本見解』についての感想 [第2版]
「日本臨床心理士会雑誌」60号に、日本臨床心理士会の『私設心理臨床のあり方に関する基本見解』が掲載されました(p.61)。それを熟読した上でこのエントリーを書いています。
確かに、最近の臨床心理士会や資格認定協会の研修会等において、臨士会や認定協会の責任ある立場にある先生が「開業を目指せ。開業を認定した人には、カウンセリングルームの目立つ場所に表示できる特別の認定書を発行する方向で、検討を進めているから」という趣旨の発言を繰り返してなさっています。少し先走りすぎの発言ではないかと危惧してもいます。
しかし、私は何かそれを、働き口がなかなかない臨床心理士(追記:NHK首都圏スペシャルで、「臨床心理士が労働組合結成」というニュースが流れたことを、関東の知り合いから直接知らされました。この件についての現段階でのリンク集はピュアリーさんのサイトの記事のものがいいかも)に「自助努力」を奨めるための発言であると、いい意味でも悪い意味でも(!)解釈しています。
安易に開業することは慎むべき、しかし、開業に踏み切る、実力ある臨床心理士が増えないと、臨床心理士という身分への社会的認知は進まないというディレンマがあると思います。
今回公表された、日本臨床心理士会の『基本見解』(2009/2/25付)は、以前の「試案」段階よりもよほど練り込まれており、現段階ではほぼ妥当な外部向けの公式見解であると、私、阿世賀浩一郎は認識しています。
[ここから第2版で追加]
ただし、「(私設心理臨床以外の)他領域の臨床経験が十分にあること」という形で「基本見解」がまとめられたことは望ましいのですが、そこに含意されているはずの、「主体的で柔軟な、領域横断的な連携スキル(本音では、ネゴシエーションのスキルも含むといいたい)」の経験値ということについて、「基本見解」は、あと一歩具体的に踏み込むべきだったということはいえるかと思います。
[ここまで第2版で追加]
この『基本見解』で示された、今後の具体的な『私設心理臨床登録制度』確立までの動きを見守り、必要あれば、一開業臨床心理士として発言をしていきたいと思います。
○関連記事 :
この問題に関連する、臨床心理士の重要な発言として、
●CPブログ - 開業心理臨床(私設心理相談)について(by 臨床心理士 盛田祐司 www.kokoro,net)
があります。
エントリーでは慎重論が表に出ていますが、盛田さんの危惧と、それでも開業臨床心理士は増えねばならないという主張には全面的に賛意を表します。このエントリーで私も盛田さんとコメントを交わしています。こっちよりはっきり本音を書いていますので、是非お読みになることをお勧めいたします。
【追加速報】
盛田さんサイト、4/10に
という新エントリー追加されています。
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コメント
初めまして、岩手県で相談室を始めて7年になる臨床心理士です。2月からブログを書いておりますが、このほどリンクを貼らせていただきましたので、ご報告します。よろしくお願いします。
投稿: nori | 2009/04/10 08:33
noriさん、ようこそ。
リンク大歓迎いたしますとともに、ご報告をいただきましたことに感謝申し上げます。
サイト訪問させていただきました。
●Walk Don't Run ゆっくりいこうよ
なかなか面構えのいい猫さんですね(^^)
この中での最新記事、
* 臨床心理士が労働組合を結成
の中で、
> こうした動きに対しての臨床心理士たちの反応の温度差は、「それを覚悟で、この世界に足を踏み入れたのかどうか」によっているのでしょう。ある年代以上(40代?)の人たちは、まず覚悟をもってこの世界に入っています。「そんなこと、分かりきったことなのに、何を今さら……」って感じかもしれません。またそうした年代の人たちが、大学で教職についています。
> でも今の指定大学院を出た人たちは、そこそこの社会的ステイタスを伴った「職業モデル」を思い描き、自分への投資をして大学院に進んでいるようです。私の目にはそう映ります。「絵描きやミュージシャンになるのと同じようなもんだから、ダメだったらやめりゃあいいじゃん」というわけには、いかないのでしょう。もちろん幻想をふくらませた側にも責任はあるし、認定協会は臨床心理士の需給見通しと指定大学院の定員数について説明責任を果たすべきです
とのご指摘は、全く賛成です。
すでに言われ尽くした表現ですけど、「臨床心理士バブル」が、この経済情勢の中でまだはじけていないことの方が「奇跡的」というべきですが、それを支えているのが、よきにつけ悪しきにつけ、指定校大学院という名の「雇用先」と、スクールカウンセラー制度であることについて、そもそもマスコミは「もっと率直に」取り上げる責任があると思います。
そして、今現在でも、こうした「働き口」に必ずしも依存することなく、不安定な雇用情勢と、「これは私が求めていた臨床心理士のイメージではない!」という職務内容と収入上のギャップに葛藤しつつ、したたかに「どっこい生きてる」カウンセラーの皆様のリアルな声が、一般の皆様や行政やマスコミに届くことを切に祈り続けています。
noriさん、これからもどうかよろしくお願い申し上げます。
投稿: こういちろう | 2009/04/10 15:23