人はものごとへの対処の仕方のスタイルを受験勉強までに学び終えてしまっている -イリイチの脱学校論の本質-
人は、受験勉強の時代までに、生涯の宝になる、物事への探究のしかたや学び方、問題解決の基礎スキルをほとんどすべて身につけてしまっているはずというのが、私の信念です。
この段階までに、一度学び方において「幻想」に基づく、問題解決上の「悪い癖」をつけてしまうととうなるか?
ここでいう「幻想」、そして、問題解決における「悪い癖」とは、次のようなものです:
1.ものごとには、「一定の正しい答え」があり、それをその社会における権威(政府・マスコミ等)はそれを熟知していると・・・・・いう幻想を抱くこと。
(これは、例えば、ビルボートのヒットチャートはその時点での音楽についての公正な評価と選択の基準であるという誤った信念に基づいてしか音楽を聴かなくなるなどの、偏狭な問題解決行動を生む)
2.公教育が認定する、一定範囲に制限され、圧縮された内容を持つ「テキスト」(教科書)的学習プログラムに基づいて学びさえすれば、物事についてのバランスのいい知識やスキルが得られ、それらはその社会の中で幅広く通用する・・・・という幻想。
(これは、評判の高いハウ・ツウ本さえ読めば、それで十分ものごとに対処できるという幻想という形で、受験期以降も堅持され、迷える仔羊たちは、浅薄な新手の評論家や政治家、宗教者の本によって容易に扇動される事態を招く)
この、受験勉強「期」までの、物事の学び方のスキル(これは、例えば、部活などのグループ活動を生かす力、学校での友人との対人関係能力だとか、携帯等・ゲーム等の新しい文化への順応スキル、いや、ナンパやバイトやセックスのスキルすら含みます)の質次第で、その人がその後社会に出て以降の、公私にわたる学びや問題解決のスタイルそのものに、いかに声高な理念に基づく改善を進めようとしても、不毛なまでに効果を上げない悪循環を生み出すことが多いということです。
*****
それらをラディカルに改善するための猶予期間はいつまでなのか?
.....実は、その人が「一見まっとうな社会人」になれてしまったら、たいていの人においては、時すでに遅しなのだと思います。
不完全燃焼の、周囲とうまくやれない形での社会出立(あるいはそれ以前)の中で行き詰っている人たち「まで」こそが、まさに今後も成長を期待できる予備軍、大げさに言えば、今後の日本社会の活性化のためのホープになるかもしれない人材なのだと思っています。
イバン・イリイチのこの著作は、私が自身の勉強と受験のあり方で悩んでいた、高校生の頃のベストセラーでした。
この「脱学校論」そのものが、特に日本では、単なる「フリースクール」論、公教育否定論、自学自習(自己学習)論、反体制的教育論として「誤」読解されることにより、イリイチのオリジナルが持つ、ほんとうの「牙」を抜かれてしまったと思います。
つまり、イリイチの「脱学校論」をどう読解するかということそのものが、「日本的な」受験勉強の段階で物事の学び方についての進歩と成長がすでに止まってしまっていた「反体制知識人」なる人種の「標準化された指導」によって、その毒と牙を抜かれるという、笑うに笑えない事態(^^;;)が生じた。
これでは、イリイチの言う、社会全体がすでに「学校化」されている、という言葉の骨がらみの核心に手は届いていないのである。
イリイチ自身が、自らこの「脱学校」コンセプトを最初に公表して以降、そうした誤解に苦しみ続けたことは、まさにこの本の中のあちこちですでに表明されているにもかかわらず.....である。
敵が文部科学省だとか教科書検定だと思っている人は甘い甘い!!
ゲームをやるとなると、「公式攻略本」を読まずにいられなくなるその段階で、あなたは受験社会にどっぷり侵されている。
*****
受験勉強そのものは善でも悪でもない。単にある学校に入るための「選抜試験」にいかに勝ち残るかに過ぎない、情け容赦のないサバイバルの場である。
だが、受験勉強期に、受験勉強を通して、その後の人生における、一生モノの宝となる、物事の学び方や解決方法のベーシック・スキルを身につけてしまう人たちもいる。
それは恐らく、実際に入れた大学の偏差値がどうであるかとは、何も関係がない達成なのだ。
* 関連記事
●【日本の議論】日本の大学は多すぎる? 増える「ナゾの学部」(msn=産経)
この記事の末尾の文章だけ引用します:
============引用はじめ================
では、これからの大学に求められるものは何か。
諸星教授は「3ケタの割り算ができない学生に経営学を教えても意味がない。大学全入時代では、そういうレベルの学生が入学してくることを、もはや止められない。大学は社会のリーダーではなく、社会の土台となる大人を育てていくことが求められている。そのためには、それぞれのミッション(役割や個性)をはっきりさせ、学生の力をどれだけ引き上げてあげるかが重要だ。つまり、4年間でどれだけの付加価値をつけて社会に送り出せるか、が問われている」。
============引用おわり================
ただ、私は正直に言って、一部の例外を除いては、大学そのものがこうした点で真の変革を短期間に遂げることを期待できないと感じています。
高校生現役か、浪人時代までに、まだ擦り切れていない潜在力を秘めた、一見「不適応的な」面すらある生徒たちを、個別にサポートして、狭い意味での受験勉強スキルにとどまらない「自己学習能力」を鍛えておく方が、むしろ大学入学後や社会人になってからにも敷衍されていく「一生モノ」の応用効果もあるし、親の教育費を含めての経済的コストパフォーマンスもいいはず。
つまり、それが大組織を基盤にしているか否かは別として.......個別指導重視の私塾(予備校)の役割が、鍵を握るはずです。
******
........チェックメイト(^^)
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