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2008/09/20

「成仏」してもらうためには、「悪霊退散!!」だけではうまくいかない。

 これは、フォーカシングについてのこわーいお話です(^^)


******


 ある位の高い貴族がいました。源の某(なにがし)としましょう。

 彼は以前、出世のために、それまでつきあっていた幼なじみの女性を見捨て、別の女性と政略結婚するばかりか、今後の出世に響きかねない、政治上の秘密をいろいろと打ち開けて来たその女性の存在そのものが厄介と感じましたが、殺すには忍びなかった。

 そこで、その女性の実家そのものにいわれなき大罪を着せ、父母を死罪、一族を、その女性もろとも島流しにしてしまいました。

 女性は、若くして流刑先で寂しく生涯を閉じました。


*****


 ちょうどその頃、源某がついに右大臣に登り詰めたその晩から、怪異な現象が頻発するようになったのでした。

 まず、幾人かいた某の子供が次々と病気になりました。都の彼の屋敷の近辺では、狐火を見たという噂が絶えなくなりました。更に、天候不順で日本中が不作に陥りました。

 こうした中、某自らも塞ぎの虫に取り憑かれ、政務にも出ず、自宅に籠る日々が増えました。

 彼は国内安堵の加持祈祷をたくさんの僧侶に求めました。
 しかし効果は全くありません。

ついには、政(まつりごと)にさし触るという理由で、帝(みかど)から若くして引退し、出家することを勧められるまでになりました。

 そうした晩、枕辺に、おどろおどろしい九尾の狐(王子のきつねではありません.....といっても落語のタイトルにもあらず......)の霊があらわれました。

 彼は恐れおののき、稲荷大権現に参拝し、献金し、更にさまざまな祈祷師に頼みますが、夜な夜なきつねの霊は彼の枕辺に現れ、彼の眠りを妨げるに至りました。


*****


 そうした中、小康を得て、久々に某は少数の家来を伴い外出しました。

 ある他家の屋敷の門前で、門番に厄介払いされ、傷ついたぼろぼろな装束の旅の僧侶を不憫に思った某は、その僧のそばに行き、食べ物と若干のお金を施しました。

 その僧から、

  「凶相が出ておいでです」

と云われた某は、更に彼を屋敷に招き、新しい衣服を与えました。


 僧は云います。 


「その九尾のきつねは恐らく仮の姿に過ぎませぬ。狐の霊が何を伝えようとしているのか、虚心に向き合おうとされましたら、何か答えてくれるかもしれませぬ」 


 某は、その僧にわずかばかりの領地を与え、近隣に住まわせるようかと思いました。

 最初、その僧に大きな寺を寄進しようかと持ちかけますが、僧いわく。


 「小さな庵(いおり)で結構でございます。あとは日々の衣食足りれば」


 某は云われた通りにして、時々僧の庵にお忍びで足を運ぶようになりました。


******


 某は、毎晩、狐の霊が現れる度に、恐れることなく、その霊と対峙しようと試み始めました。

 最初は、狐のおどろおどろしい姿に身の毛が振るえ、布団から顔を出すこともできませんでした。


 「我ながら情けない。どうしたものかのう?」


 と翌朝僧に尋ねますと、


 「しかたありませぬな。最初は布団をかぶったままでもいいでしょう。
 
  ただ、


 『そのへんに狐様がお見えなのは気づいております。

 お姿を拝謁する勇気が出ない私を、どうかお許しください』


 と念じて,そのまま眠りにつくだけでもよろしいでしょう」


 と僧は申します。


 その晩、枕辺に狐が現れた時に、某は僧の言われた通りにしました。

 すると、狐の霊がそばにたたずんでいることに気づきながらも、そのまま安眠することができました。

****


 毎晩のようにきつねの霊は某の枕辺に現れました。

 そのうち、狐の霊を見つめることが怖くなくなってきました。

 最初は怖いばかりと思っていた狐の姿が、実は自分を脅かそうとする様子はなく、静かに、ただ、こちらを見つめているだけであることにも気がつきました。

 「狐様は何を私におっしゃりたいのですか?」

と声をかけてみましたが、返事はありません。

 そのまま沈黙の長い時を、狐の霊と向かい合ったまま、意外なまでに怖さを感じずに過ごすうちに、いつの間にか寝入ってしまう。

 そういう晩が幾晩か続きました。


****

 某は、再び僧の元に出向き、

 「狐様から何の答えも返してもらえないのです。

 そのまま寝入ってしまうことを繰り返しているようでは、

 何か狐様が新たな罰を加えて来られるのではないかと心配になってきました


 僧は答えます。


 「そういう殿の思いをそのまま狐に実際に返してあげてはいかがかのう?」


******


 その晩も狐の霊は現れました。

 そこで、某は、僧の助言通り、

 「狐様のご返事が得られないままであることを、
 まだお許しが得られないのかとも感じ、
 それがしは焦りを感じております」

 と伝えます。

 すると、どこからか女性の声で、

 「きつねは獣じゃ。口をきくわけがございますまい。
  『気配』で伝え、『気』で察するしかありませぬ」

 と。

 それはそうかと得心して、再び狐の霊の方を見ますと、

 そこには、もはや、九尾のきつねではなく、一匹の野ギツネが、じっと座っているだけのように見えました。

 その毛の色は、金色に輝いてはおりましたが。


*****


 某は、そうやって野ギツネに変化(へんげ)した狐の霊と、毎晩出会い、沈黙のまま共に過ごすようになりました。

 もう、怖いという気持ちが薄れ、毎晩キツネが「会いにくる」ことを孤独の中の心の癒しとすら感じ始めました。


 ある晩、思わずキツネに語りかけました。

 「キツネ様は、まるで私を守るために毎晩現れて下さっているようにすら感じるようになりました。私を警護して下さる、番犬のようですらある、こんな番犬なら、現実に飼ってみたいものだ、などという不謹慎な連想すらしてしまいましたが」


 キツネの目が一瞬更に細くなり、満月に照らされて、背中の金色の毛並みが一層輝くかに見えたのは、某の気のせいだったのかどうか?


*****


 その晩、某の夢の中に、あのなつかしい女性の若い日の姿が現れました。


 思わず飛び起きた某は、涙を流しながら、すべてを察しました。


 「お前こそ、そばにずっといて欲しかった人。

  そして、私を守って、魂を癒してくれた、その人であったのに......」 


******


 昔話ではありませんので、この後、源の某がどのように生きたかは、皆様のご想像にお任せしましょう。


 ただ、ひとつだけ言えるのは、僧は、某が再び訪問した時、


 「当面の旅のための蓄えの分だけを謹んでいただきます」


 という置き手紙を残したまま、何処かへと旅立っていたということです。


*****


 これは,フォーカシングを学ぶ人のための、私の創作童話です(^^)


 狐の霊=あなたの中の正体不明のモヤモヤ、フェルトセンス


 ........これだけの説明で、フォーカシング学習者には、更に付け加える言葉は不要かと。


 更に言えば、アン・ワイザーさんの「こころの宝探し(Treasure Map)」ふうかもしれませんね(^^)


●アン・ワイザー・コーネル/フォーカシング ニュー・マニュアル


※関連記事:

●対話で解決しようとばかりする前に(久留米フォーカシング・カウンセリングルーム)


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