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2008/03/10

バウムテストにおける「診断」とフォーカシング(1)

 さて、お約束の、昨日の、神奈川県臨床心理士会の研修会についての報告の続き、各論編です。

 まず、午前中は、京都大学付属病院の岸本寛史先生の「バウムテストの基本的な姿勢 〜コッホの基本的な考え方について」というお話でした。

 一般の皆様向けに簡単に解説しますと、バウムテストというのは、スイスのコッホという人が開発した心理テスト。
 「実のなる木を描いてください」という、ただそれだけの設定でなされる、描画法のテストです。
 いくつかのサイトで、詳しい紹介がなされていますが、

●木を書くだけで「自分の心がわかる」? バウムテスト解答編

を、とりあえず紹介させていただきます。

日本で読める代表的な著作は、

●C.コッホ著 バウム・テスト―樹木画による人格診断法
●ドゥニーズ ドゥ・カスティーラ 著 バウムテスト活用マニュアル―精神症状と問題行動の評価

 前者は、私も大学院生の時代から読んでいる、このテストの開発者、コッホの本。
 後者は、マニュアルとして最近評判がいいもののようです。

*****

 さて、岸本先生のお話は、のっけから、このコッホ自身の書いた、最も重要な古典的著作の翻訳が大問題だ、というお話から始まりました。

 そもそも、これは、この本の翻訳が、読んでも全然意味がわからない本だというご自身の体験から、ご自身で原典を辞書を引きながら試しに訳していったところ、自分が翻訳書で読んで意味がわからなかった部分のほとんどが誤訳であることに気がついた、という、とんでもないエピソードから出発します。

 そもそも、日本の翻訳は、ドイツ語(しかも初版)そのものからの翻訳というより、初版の英訳に大幅に影響を受けた翻訳で、この英訳そのものが誤訳の山だそうです。

 それを日本語に訳する際に、更に輪をかけて誤訳を重ねているそうです。

 しかも、、この初版の後、ドイツ語では、第2版になる段階ですら、分量で3倍近くにすらなる、大幅な増補改定がなされているのに、それらがドイツ語に堪能な専門家によって、ドイツ語からダイレクトに翻訳された新版が出る様子がまだ見られないとのこと!!

 検索かけたところ、この本のAmazonのカスタマーレビューに、いまーじゅ太郎さんが、

バウムテストを勉強しようとするとまずこの本を読まなければならず,私も大学でこれを読んで勉強したのですが,実はこの邦訳,問題だらけのようです。原著の方は,著者コッホが直に手がけた第三版がどんどん重版され第十版まで出ているそうで,しかもこの第三版のページ数は初版の約三倍にもなっているらしい。しかも,邦訳の元になった英訳は,どうやらドイツ語に慣れていない人物による翻訳らしく,信頼するに値しないらしい。つまり,コッホの伝えたかったことが十分に伝わっていないということらしいのです。この辺の事情は,最近出版された『バウムの心理臨床』(山中康裕ほか編,創元社)所収の「『バウムテスト第三版』におけるコッホの精神」(岸本寛史著)に詳しく述べられており,私も最近これを読んで大変ショックを受けました。本書はバウムテストを実施するときには必ず読まなければならないものですが,どうもこれこそがバウムテストの基本だと言うには少々問題点が多すぎるようなので,注意が必要です。

.....とお書きなので、知る人ぞ知るの水準の問題点であることがわかりました。

 この件については、私もまだ読んでいない上述書に譲りますが、それでも、岸本先生のご講演から、私のドイツ語理解力でも十分わかる一例をあげます。

 (これは私のメモからの再現ですので、細かい表現には私の主観が入っているかと思いますので、その点はお許しください)

 この著作の翻訳の、確か37ページに「T字型の木の描画」という言葉が出てきます。この部分、ドイツ語の原書では、"Tannenbaum""T"だそうです。

"O Tannenbaum, o Tannenbaum,
wie grün sind deine Blätter!"

という歌い出しのUwe Christian Harrer & Wiener S?ngerknaben - ザ・クラシカル・クリスマス - もみの木クリスマスの歌でもおなじみですが、これ、「樅(もみ)の木」のことなんですね。クリスマスツリーで知られた、あの木のことです。

クリスマスツリーだと、凄く小さく育てるので、てっぺんがとんがった、二等辺三角形のイメージになりますけど、この木は成長すると、天を突くような、垂直の、真っすぐとした幹になることが特徴です。
450pxmomihinokiboramaru
wikipedia「モミ」の項より)

 このことを理解しておかないと、ここで示唆されているバウム画が、

「画面を垂直に縦断する形で、基本的には同じ太さの幹が描かれていて、上の末端も描かれていない(か、枝分かれがないか、曖昧な)」

そういう図版のことになります。

ほとんど即興で、模式的に書いてみると、こんな感じでいいのかな?coldsweats01

Tannnennbaum

 このような図版は、根っこから頂上に向けてエネルギーが上昇するとすると、エネルギーの分化が生じないまま直接噴出して行こうとしているの指標であるという点については、多少の解釈の相違こそあれ、多くの人が認めていることのようですね。

 根っこから枝先に向かうにつれて、最低2つには枝分かれしていく木の絵が圧倒的に多いからこそ、この「モミの木型」を特異な指標のひとつとして認識しておくことがテスターにとって重要なのに、訳本では「T字型」なので、むしろイメージ的には違う点に力点のある連想をさせかねず、非常にわかりにくくなっているわけです。

 どうも、ここまでは「『T字型』問題」として、すでに幅広く知られている翻訳上の問題のようですね。

 これ以上の翻訳上の問題点については、講演者の岸本先生の上掲書でお述べになっておられそうですので、私も別にバウムの専門家でもないので自重させていただき、更に深追いしないことにいたします(^^;)

*****

(第2回へ続く) 

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