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2008/03/10

バウムテストにおける「診断」とフォーカシング(2)

 前回の続きです。

 岸本先生は、もともとは内科医で、しかも血液内科だったそうです。
 これは、白血病の患者さんが多いということであり、抗がん剤や骨髄移植などの治療を受けて、入退院を繰り返したり、死に到る患者さんの死を共にするお立場だったということになります。

 そうした中で、バウムテストは、診断のための心理テストというより、コミュニケーションの「窓」といいたくなる機能を果たしたとのこと。

 中には、告知を受けて、あるいは完治した思っておられたのに再発して病棟に送られた時点で、放心状態の患者さんも少なくない。そういう患者さんも、木の絵だけは描いて差し出して下さることも多かったとのこと。

 (一回の面談は描画と対話を含めて30分だそうです)

 そして、その描画について、患者さんは話をしてくださるばかりではなく、その描画と一見無関係な話もお話になるわけです。

 こうして、言葉というコミュニケーションの経路だけでは浮かび上がってこないいろいろなものが、バウムを媒介としての関係という中でなされていくことになります。

 こうして、問診だけでは読み取れないコミュニケーションの次元が開かれる。

 1. 例えば、一見明るくて多弁な人もいる。病棟にもなじんでいるかに見える。ところが、非常に貧相なバウムしか描かない人もいるのですね。その人は、表には出さないけれども、すでに精神的にはかなり落ち込んでいたり、荒涼とした思いに満たされていることに気がつけることになります。

 2.逆に、ベッドの上では放心状態なのに、無言で差し出されたバウムには、非常にしっかりした樹が描かれている場合がある。そういう人は、何回もの危機をくぐっても、生き延びていく場合もある。

 更に、

 3. 一見ひどく不器用で貧相な絵しか描けない患者さんが、病気になる前の頃に描いた絵を見せてくれた。すると、病室での絵からは信じられないくらいに表現力あふれた絵を描いていたことがわかったりする。

 つまり、バウムテストの絵だけで、その人の人格のすべてが読み取れると思うのも間違いだということです。
 病気になって、それ相応のショックや不安の中で長期にわたって入院していくという具体的な状況、そして医師との関係性の関数として、はじめてそういう絵が描かれているという側面を、決して見失ってはならないことを、岸本先生は強調しておられました。

 これは、バウムテストに限らず、描画に限らないさまざまな心理テスト、そして面接場面での患者さんの様子にもあてはまる重要な事柄でしょう。

 面接場面でクライエントさんが示しているプレゼンスは、そのクライエントさんの全体像を示しているわけではないという、当たり前のことです。当然、そこでとられる心理検査の結果それ自体についてすら、そのことはあてはまる。

 私が最近自戒しながら心がけているのは、

「面接室に赴く行きがけの道すがら、面接から帰宅する道すがら、家に帰ってから、夜眠りにつく時、仕事の場面などで、クライエントさんが、どんな面持ちで、どんな気持ちで過ごしているか」

....という想像力だけは失うまいということです。

 そういうことを、治療者が自分の中で気にかけているだけで、何も質問しなくても、

「実はあれから家に帰ったら、結構落ち込んで、先生のことを恨みもしました」

「ずっと不安で眠れない夜を過ごしていたんですけど、今朝目覚めたら不思議と身が軽くて。これならカウンセリングに行けるなと。そして、行きの電車の中で、いろいろ連想しているうちに、家にいる時にも、この面接室の中でも思いついたことがなかったような、ずっと忘れていた大事なことを、ひとつ思い出したんです。それは.....」

などというお話を、クライエントさんの方から自然とお話しになることが増え、そのお話までうかがえてほんとうによかったと感じることが少なくないからです。

(第3回に続く)

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