「プレゼンテーター中心主義」 -こころの天気大船グループバージョン-
さて、すでに「大船でフォーカシングを学ぶ会」で2回、四日市の「東海フォーカシング研究会」で1回実施した、「こころの天気」小グループバージョン大船版が、どういう基本原則で実施されているのかを具体的に解説してみましょう。
私が理解している範囲では、島根の土江正司さん開発の「こころの天気」の技法は、非常にシンプルな原則のみで実施可能です。
1.「こころの天気」とはどういうものなのかについては、絵を描く本人の解釈と発想の自由に基本的に委ねる。
「天気」であるからには、晴れとか雨とか、そういう「天候を含んだ風景」でなければならないと言うことはないのです。中には、かなり抽象度の高い描画で、「今の気分」を表現する人も出てくるでしょうし、かなり接写に近い静物画のようなものを書く人もいる。 絵にタイトルを付け、文字で書く人もいるでしょうし、絵の中にいろんな解説の文章を書き込む人も出てくるかもしれない。
中には、絵は描かないまま、紙いっぱいに大きく「気持ち」についての文字を書きなぐる人も出てくるかも。
これらのバリエーションが自然と各人の解釈の元に生じてくることについては、介入しないという基本原則があるように私には思えます。
2.「写生」ふうの伝え返ししかしない。
描かれた絵に、カウンセラーは「伝え返し」をするのですが、この際、絵に現れたままを、俳句で言う「写生ふう」の形で、簡潔に伝え返しをするに留めることを、開発者の土江さんはたいへん重視しています。
前の記事の私の絵を例にすれば、
「夜なのかな。
家が一軒あるね。
窓に明かりが灯っているね。
赤い服を着た女の人が、その窓のそばに立っているね」
くらいです。
(更に、中井久夫先生の「風景構成法」からの転用として、絵を実際に描く前に、画用紙の縁のあたりに自分で「枠線」を描いてもらうことが一般的なようです)
******
こうした、オリジナルの「心の天気」技法を尊重しつつ、同時に、小グループの場の中でお互いに共有するための、場の安全の原則として、私、阿世賀が考案した工夫について以下に述べます。
(以下の内容の著作権は阿世賀浩一郎が有します。無断転載、引用は固くお断りいたします。リンクを張るなどの形で紹介下さる前には、ご一報下さるようにお願いいたします)
1.絵を描く際に、グループの他のメンバーの「面前で」絵を描かない自由の保障(位置を変え、皆に背を向けて「こそっと」描いてもいい)
2.描いた絵を他のメンバーに公開しないままにする権利の保障。
3.他のメンバーへのプレゼンテーションの際に、何も解説しないまま絵を提示する権利の保障。
4.提示された絵に対して、その場のファシリテータのみが、前述の「写生ふうの伝え返し」を必ず行う。
5.絵を皆に見せるメンバー(以下「プレゼンテーター」と呼ぶ)は、他のメンバーに具体的な感想を返さないように求める権利を有する。
6.プレゼンテーターの絵を見守る他のメンバーは、プレゼンテーターに具体的な感想を返さない権利を有する。
7.6.に抵触しない限り、プレゼンテーターは、他のメンバー全員から具体的な感想が欲しい旨、前もって「注文を付ける」権利を有する。
8.プレゼンテーターは、絵についての他の参加者とのやりとりをいつどこで終結させるかの判断の権利を有する。
場のファシリテータは、これらのことをプレゼンテーターに保証するための介入しかせず、それ以外の点では他の参加者と平等な立場にあるように努めることになります。
その結果、自然と生じるのは、プレゼンテーターが持ち回りで2人目、3人目となるうちに、ファシリテーターがもはや逐一介入しなくても、全く自然かつ自発的に、「その時のプレゼンテーターが場の主人公として振る舞うようになる」という現象である。
私は、こうした場の特性を、
「プレゼンテーター中心主義」
と名付けることにしたのだが、いかがだろうか?
なお、この「こころの天気」大船バージョンの成立には、四日市の「東海フォーカシング研究会」での、「藤嶽法」の、すでに数年におよぶ実践の中で共有された知見が、実は大きく影響しています。
すでに10年近く、全く同じ固定メンバーとして毎月1回場を共にしてきた、藤嶽大安さん、渡邊邦子さん、森尾邦江さんに、厚く御礼申し上げます。
« みゆきの「エレーン」を聴いて「こころの天気」を描く会!! | トップページ | 木製であってもなくても、イヤフォン一つでiPodの音の世界は広がる »
「J-POP」カテゴリの記事
- デジタル機器・オーディオのための電源極性管理とノイズフィルター(2012.01.09)
- ユーミンのデニーズ伝説(2005.12.23)
- 「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」の音楽集(2009.11.24)
- 水樹奈々という「現象」(2011.10.10)
- 1つだけ魔法を使えるなら、どれがいい?(2011.10.18)
「カウンセラーへのメッセージ」カテゴリの記事
- 初夢(2012.01.01)
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- 「こころの天気」のご紹介(2012.01.04)
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
「カウンセリング」カテゴリの記事
- 「ふくおかフォーカシング・セミナー」開催中止のお知らせ(2012.01.23)
- 初夢(2012.01.01)
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- 「こころの天気」のご紹介(2012.01.04)
「クライエント中心療法」カテゴリの記事
- 体験過程尺度入門 -カウンセリングが「深まっている」とは、どういうことか?-(すでに第3版)(2006.12.30)
- 佐賀県教育センター教育相談集中講座講師として務めを果させていただいた一日をふり返って(2009.11.11)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(4)(2009.07.18)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(2)(2009.07.16)
- 書評:ジャネット・クライン著「インタラクティヴ・フォーカシング・セラピー -カウンセラーの力量アップのために-」(2009.11.17)
「フォーカシング」カテゴリの記事
- 「ふくおかフォーカシング・セミナー」開催中止のお知らせ(2012.01.23)
- 初夢(2012.01.01)
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- 「こころの天気」のご紹介(2012.01.04)
「フォーカシング指向心理療法」カテゴリの記事
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- 「こころの天気」のご紹介(2012.01.04)
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- 佐賀県教育センター教育相談集中講座講師として務めを果させていただいた一日をふり返って(2009.11.11)
「ロジャーズ」カテゴリの記事
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(3)【第2版】(2009.07.17)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(4)(2009.07.18)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(2)(2009.07.16)
- 書評:ジャネット・クライン著「インタラクティヴ・フォーカシング・セラピー -カウンセラーの力量アップのために-」(2009.11.17)
- フォーカシング技法の成立過程から現在の動向まで (togetter)(2011.05.11)
「ワークショップ」カテゴリの記事
- 「ふくおかフォーカシング・セミナー」開催中止のお知らせ(2012.01.23)
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- 佐賀県教育センター教育相談集中講座講師として務めを果させていただいた一日をふり返って(2009.11.11)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(7)(2009.07.25)
「中井久夫」カテゴリの記事
- ドナ・ウィリアムズ著「自閉症だったわたしへ」を読み始めて。(2010.06.20)
- 壺イメージ療法 -「容れもの」「置き場所」を想像してもらう技法- (1)(2007.06.01)
- 壺イメージ療法とフォーカシング(第3版)(2009.06.11)
- 田嶌誠一 著 「現実に介入しつつ心に関わる」(2009.12.16)
- 「甘え」と「KY」 -土居健郎先生ご逝去に寄せて- (第2版)(2009.07.06)
「中島みゆき」カテゴリの記事
- 「臨在」="presence"(第4版)(2010.02.06)
- 浜崎あゆみの詞における「僕」と「君」、「わたし」と「あなた」 -サリヴァン的次元で解説してみよう- (第2版)(2010.02.08)
- 安易に共感されると人は自分自身でいられなくなる 〜中島みゆき「エレーン」「異国」「空と君のあいだに」に寄せて〜(2005.04.13)
- 現代日本の諸悪の根源は、すべて「あなた自身」のせいであると発想してみよう (第2版)(2009.12.16)
- 「カウンセラーこういちろうの雑記帳」の主要過去記事を一番簡単に一覧するには(2009.09.03)
「四日市」カテゴリの記事
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- 「カウンセラーこういちろうの雑記帳」の主要過去記事を一番簡単に一覧するには(2009.09.03)
- Interactive Focusing Therapy(第4版)(2005.03.15)
- 治療関係のベースライン(第2版)(2008.03.27)
- 「湘南フォーカシング・カウンセリングルーム」の「カウンセラーこういちろうの雑記帳」をよろしく(2005.08.01)
「場の空気」カテゴリの記事
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- ドナ・ウィリアムズ著「自閉症だったわたしへ」を読み始めて。(2010.06.20)
- 周囲の人は双極性障害2型の人の「気遣い」にどれだけ助けられているかに気がつかない・・・・内海健 著「うつ病新時代 -双極性II型障害という病-」 書評 (第2回)(2009.09.17)
- 佐賀県教育センター教育相談集中講座講師として務めを果させていただいた一日をふり返って(2009.11.11)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(3)【第2版】(2009.07.17)
「大船」カテゴリの記事
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- 単なる「ロールプレイ」より効果的なカウンセラー訓練(第4版)(2006.06.21)
- 「1カ所限定『どこでもドア』、行き先はどこにする?」(2010.11.25)
- 認知行動療法について -NHKスペシャル 「うつ病治療 常識が変わる」への感想(6 一応の最終回)- [第6版](2009.03.13)
- 「カウンセラーこういちろうの雑記帳」の主要過去記事を一番簡単に一覧するには(2009.09.03)
「大船でフォーカシングを学ぶ会」カテゴリの記事
- バウムテストにおける「診断」とフォーカシング(3)〔第2版〕(2008.03.10)
- 認知行動療法について -NHKスペシャル 「うつ病治療 常識が変わる」への感想(6 一応の最終回)- [第6版](2009.03.13)
- 「カウンセラーこういちろうの雑記帳」の主要過去記事を一番簡単に一覧するには(2009.09.03)
- 「私はフォーカシングができているのでしょうか?」(2009.05.18)
- 昨日からにほんブログ村に参加しています。どうかよろしく!!(第2版)(2008.09.24)
「学問・資格」カテゴリの記事
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- ドナ・ウィリアムズ著「自閉症だったわたしへ」を読み始めて。(2010.06.20)
- 抗うつ薬で眠くなるのは「副作用」? -そもそも「副作用」という概念をどうとらえるか-(2009.06.29)
- 周囲の人は双極性障害2型の人の「気遣い」にどれだけ助けられているかに気がつかない・・・・内海健 著「うつ病新時代 -双極性II型障害という病-」 書評 (第2回)(2009.09.17)
- 体験過程尺度入門 -カウンセリングが「深まっている」とは、どういうことか?-(すでに第3版)(2006.12.30)
「島根」カテゴリの記事
- 「カウンセラーこういちろうの雑記帳」の主要過去記事を一番簡単に一覧するには(2009.09.03)
- こういちろうはいかに短期療法に入門したか(後編) -ライブ・コンサルテーションという名のケース・スーパービジョン-(2009.05.24)
- 速報!! 2009年5月、フォーカシング国際会議、日本の淡路島で開催決定!!(第3版)(2006.11.25)
- ブログ「こころの天気を感じてごらん」のご紹介(2005.09.13)
- フォーカシングの、世界の最前線の記事たち(2008.02.15)
「心と体」カテゴリの記事
- 「ふくおかフォーカシング・セミナー」開催中止のお知らせ(2012.01.23)
- 初夢(2012.01.01)
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- 「こころの天気」のご紹介(2012.01.04)
「心理学」カテゴリの記事
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- 「こころの天気」のご紹介(2012.01.04)
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- ドナ・ウィリアムズ著「自閉症だったわたしへ」を読み始めて。(2010.06.20)
「心理療法/精神療法」カテゴリの記事
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- 「こころの天気」のご紹介(2012.01.04)
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- 抗うつ薬で眠くなるのは「副作用」? -そもそも「副作用」という概念をどうとらえるか-(2009.06.29)
「心理臨床」カテゴリの記事
- 初夢(2012.01.01)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- 「こころの天気」のご紹介(2012.01.04)
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- ドナ・ウィリアムズ著「自閉症だったわたしへ」を読み始めて。(2010.06.20)
「湘南フォーカシング・カウンセリングルーム」カテゴリの記事
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- 単なる「ロールプレイ」より効果的なカウンセラー訓練(第4版)(2006.06.21)
- バウムテストにおける「診断」とフォーカシング(3)〔第2版〕(2008.03.10)
- 私のスーパーバイズ ~実践編~(2005.09.19)
- 「ケーススーパーバイズ」とは何だろう ~入門編~(2005.09.19)
「臨床心理」カテゴリの記事
- 「ふくおかフォーカシング・セミナー」開催中止のお知らせ(2012.01.23)
- 初夢(2012.01.01)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- ドナ・ウィリアムズ著「自閉症だったわたしへ」を読み始めて。(2010.06.20)
「自然」カテゴリの記事
- オーディオにおける接点復活剤について(第3版)(2006.07.25)
- バウムテストにおける「診断」とフォーカシング(1)(2008.03.10)
- 「臨在」="presence"(第4版)(2010.02.06)
- SEASONS(2010.06.15)
- 通算2000番目の記事 : バリント著「治療論からみた退行(Basic Fault)」(2009.11.27)
「藤嶽法」カテゴリの記事
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- 佐賀県教育センター教育相談集中講座講師として務めを果させていただいた一日をふり返って(2009.11.11)
- 単なる「ロールプレイ」より効果的なカウンセラー訓練(第4版)(2006.06.21)
- バウムテストにおける「診断」とフォーカシング(3)〔第2版〕(2008.03.10)
- 私のスーパーバイズ ~実践編~(2005.09.19)
「表現療法」カテゴリの記事
- 佐賀県教育センター教育相談集中講座講師として務めを果させていただいた一日をふり返って(2009.11.11)
- 壺イメージ療法 -「容れもの」「置き場所」を想像してもらう技法- (1)(2007.06.01)
- 壺イメージ療法とフォーカシング(第3版)(2009.06.11)
- バウムテストにおける「診断」とフォーカシング(3)〔第2版〕(2008.03.10)
- バウムテストにおける「診断」とフォーカシング(2)(2008.03.10)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/70854/17956490
この記事へのトラックバック一覧です: 「プレゼンテーター中心主義」 -こころの天気大船グループバージョン-:
« みゆきの「エレーン」を聴いて「こころの天気」を描く会!! | トップページ | 木製であってもなくても、イヤフォン一つでiPodの音の世界は広がる »




コメント