さて、お約束の「ピアノの森」でっす。
●以下、核心にまでは迫らないけど、そこそこネタバレ注意!!●



念のために言いますと、一色まことさんの原作、連載開始時からの評判の高さは知っていましたが、モーニングでの連載再開直後の数回だけしか実際には読んでいません。
私は、アニメに限らず、原作ものの映画は、映画として自立しておもしろいかどうかを重視することにしています。その上で、原作の持ち味で映画に生かせたかもしれない部分を想定するという思考法を取ることが多い。それこそ、「ナウシカ」にしたところで、原作に思い入れがある人は、当初いろいろ不満がある人が多かった、という現実があるわけで。
そこで、映画を観た後で、原作のおおよそのストーリーの流れや原作時に演奏されたとされている曲名は掌握し(私がこれまで聴いたこともないクラシックのピアノ曲が出てくる心配はまずない域のクラシックファンですから)、ネットのあちこちでの評価も読んだ上で書いています。さすがに原作を実際に読んでから(5巻までのストーリーに当たるそうで)というのでは、up to dateでなくなりますから。これから原作も注文して、それを読んだ上での感想も後で書きます。
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まず、ストーリーとしての「一本の独立した作品」としてのまとまりという点では、平均以上だろう。ただ、
アニメ「時をかける少女」のオリジナル作品としての魅力よりは、やや「穏健」な印象。アニメ「時かけ」は、私の世代のようにNHK「タイム・トラベラー」と
原田知世の大林宣彦監督作品映画のどちらにも思い入れがある世代でも、それらや原作とどう違うかなど、この際どうでもいいやと感じさせる、ある意味では「過去の映像化なんて知らないよ!、原作はアイデアの素材なのだ」とまで開き直れる。「自立したオリジナル劇場映画作品」として十分堪能だけの"something"あった。私の「アニメ「時かけ」評はこちら。
その意味では、「ピアノの森」の場合、原作を知らなくても十分楽しめる域とは思うが、"something"はどうだろう? きっと、(私はほんの一部分しか読んだことないのに、過去の類似の経験から想像して言うと、)少なくとも原作ファンの「熱狂的ファン層」はいろいろ言いたくなるだろうと想定できた。.
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修平が森ではじめて耳にする海(かい)のオリジナルの曲が、もろ、ドビュッシーもどきの曲(ひどい!! と別サイトでいわれちゃったけど、これ、褒めてるつもりです.....浅い次元ではない完成度!!)。確かこれは、この映画のためにアシュケナージが弾いた演奏だが、深みのある音色でなかなか聴かせる。「もどき」曲としては実に良くできた曲だと思うが、原作ファンにとってはこれではイメージが違う人もいるかな
(追記:原作第1巻今読了。CDも到着。映画でのオリジナル曲は期待を裏切らない、ベストの水準と認定!! ここでのアシュケナージさんの演奏は素晴らしいと思う)
全体のキーになる曲を、モーツアルトのK.310,イ短調ソナタ(以前は第8番とされていたが、最近は第9番としている場合ものあるので要注意!!)にしたのは、これはこれでいいのではないかと思う。(調べたところ、原作では別のシーンで出てきたそうで)。クラシックを聞き慣れない人でも、このソナタは、はじめて聴いても多くの人にインパクトがある、「後をひく」曲だと感じさせるだろう。一見シンプルな曲なのに、そこにここまで一聴してデモーニッシュ(悪魔的)な深みを感じさせる曲はそう滅多にないと思う。主人公の海が、第3楽章について、「1回で聴いて覚えた」というのは、すごく自然に(?)理解できる。演奏の天才が作曲の天才に触発されるというのには、いかにもと思わされる、「強い曲」なのだ。
有名な「トルコ行進曲」付,K.331ではピンと来にくいモーツァルトの「意外な」魅力に気づかされ、この曲なら原曲全体を聴いてみたいという気になりやすい。個人的にも、モーツアルトのビアノソナタの中で、いや、ピアノ作品全体と観ても普段から一番繰り返して聴く曲のひとつ。だから、映画を通しても、出てくるシーン1回1回の演奏の質の違いが私には受け止めやすく、そういう点で、この映画は演奏そのものにまで、作中の登場人物の個々のシーンでの心情が「演出」されているのはわかる。監督さんはクラシックになじみのない人だったらしいけど、音のスタッフにそういう点を考慮できる人がちゃんといたのだと思う。
私はシフ盤やタッキーノ盤(どちらも現在アマゾンでも楽天でも入手無理)になじんでいますけど
ではピリス盤ということで(.....あれこれ試して、やっと検索できた!!)。この「映画の」空気に一致するのはこの演奏が一番かなと思います。清廉だけどテンションが高い。ピリス自体がボーイッシュなところがある人だし(少なくとも録音した頃は)。

この曲ではクールド盤もおもしろい。
ともかく、モーツァルトのソナタの時のクールドくらい、「何なんだ?!」と感じる演奏は滅多にないだろう。このイ短調ソナタの場合も、「冒頭の音」からして異色な扱いです。ピアニストが自分の音の世界をとことん一貫するという意味では、「ピアノの森」精神に通じる演奏家も。クラシックの曲がみんな同じに演奏に聴こえる人には、このアルバム全体がお薦めです。
原作のK.280,ヘ長調ソナタは、これに比べると独特の深みこそあるけど、その深みとは、かなり「通好み」の陰影だと思う。これを機会に聴きなおしてみたけど、上述のクールド盤(この曲も同じCDに収録)は、この作品の陰影のダイナミズムをくっきりと聴かせるという意味で、この曲をはじめて聴くのにもベストかも知れない。
ライバル、"ウェンディーッ!!" 誉子のコンクール課題曲をバッハのイタリア協奏曲の終楽章にしたのは、原作ではどうだったかかはわからないまま書いてるけど、私はよかったと思う。バッハの鍵盤曲の中では一番ゴージャスな聴き映えがする曲だし、誉子の代りに実際に演奏している若手の人のも、スピーディーで音の粒のそろった、いかにも若手らしい演奏だし。私はピアノではクルダ盤を愛聴してます。
では敢えて、本来のチェンバロでの曽根麻矢子さんの演奏にしておこう。
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「イタリア協奏曲」ついでにいうと、結構「専門家的に」喜んで笑ったのは、海が誉子に緊張解消法として提示したやり方(あれって、原作では、別のシーンでもともとは阿字野 壮介センセーが海に暗示したやり方らしいですね)って、フォーカシングの世界では、メアリー・マクガイアが論文で書いている技法を思い出させる部分があって。大学院時代に個人的に全文訳出したことがある。
私はそこで、原文の"solid place"を「確かな居場所」と訳したけど、実は、まあ映画で描かれたような場所を思い浮かべることです。まさに、「そんな場所や記憶はない」という人に、「それでも、日常のさりげない場面で、どこかあるのでは?」と、うまく水を向けると、まさに「ああいう場所」でだけはほっとしている自分がいるうことを思い出したりするのである。
そういう、さりげなさと「意外性」のある現実場面が浮かぶことに意味があるのです。
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一色さんの「出直しといで!」やいくつかの短編は全部連載当時に読んでますけど、彼女の作風って、泥臭い場面ではむっちゃくっちゃ泥臭い、破天荒、そして結構シビア、という特性がありと思うんだけど、その点でいうと、きっと「大人しい」と思う人があると思います。かーちゃんの勤める歓楽街のシーンありますけど、かーちゃんが、さりげなく、金回りが良さそうな怖いおにーさんと一緒にいるあたりで、彼女がどんなきわどい生き方してるか暗示してますけど(初代「ガンダム」で、アムロの再会したおかーさんが男連れなのをさりげなく描いていたのを思い出す「本放送世代」だが,,,,)、原作では遙かにきわどい描写を重ねていることは容易に想像がつく。小学生とかも観ることを考えての限界でもあるのだろうけど。
ラストのコンクール予選シーンでの、海の暴走に関しては、私はあのアドリブ程度では納得しないぞ。ルール違反やるなら、私も当然予選通過させない!といたくなる。原作との比較をしなくてもね。よほど、誉子や修平の演奏シーンの方が、コンクールで勝ち残るのは、いかにもこういう演奏だろう(いい意味でです)、と納得できてしまう気はする。全部アシュケナージさんが弾いてはならないのだ!!
私がこの映画から勝手に想定すると、阿字野センセーのピアノは、
エミール・ギレリスばりの、外面的ではないが、構築的でしかも奔放でsolidなテクニシャンのイメージになる。アシュケナージさんとはかなり異質の(^^;)
(上記のギレリスのライブは、以前から紹介しようと思っていた、高校時代にFMでエアチェックして以来、「隠れた」名演と思っていたのだが、なぜこういうのはiTunesで日本でも買えるのだ???)
でも、全体としてのまとまりには破綻がないし、登場人物の心境の動きもまったく自然には描かれていて、1時間40分で描くのにはちょうどぴったりのサイズにまとまっていて、一本の劇場作品として、十分良作と感じた。演奏の質を含めて暫定★★★★。
声優さんにも海役の上戸彩さん含めて、私は違和感がないです。「時かけ」の方が、露骨に下手な人がいた気がする。あと、ピアノ演奏シーンは、ホントに画面と音が自然に一致していた。アシュケナージさんの演奏をビデオで撮って、手書きで動画を起こしたといパンフにはある。
あと、動画はしっかり細やかに作ってるけど、原作の一色さんの描線のつややかな美しさを感じる側面の再現は、どうなんだろう???? 先ほど書いた、「泥臭さ」との落差あっての美しさという点では、十分に表現されているのか???
でも、この記事の最初に掲示している「サントラ盤」(ホントのサントラ盤は「これ」です!!)、この記事書くのに届くの間に合わなくて、まだ未聴だけど、映画館でも「聴く」上でベストのポジションで観てますから(^^)、最良のこのサントラCDが独立したアルバムとして高水準なのは、まず間違いないでしょう。
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これ以上は、原作の少なくとも5巻までは読んでから、書きましょう。
......あと、「時かけ」について、私なりに追加したいことがあるけど、別の機会に。
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