格差社会の中での開業カウンセリング
とりあえず、「私設心理相談」研修会関連の記事、これをシリーズの最後にしたいと思います。
あるベテランの開業カウンセラーの方がいわれたことが心に残っています。
「戦後の日本は、いわゆる『中流』層を分厚くし、その消費活動によって経済を支えるという形で成り立ってきた。正直なところ、開業カウンセリングもそうした層を主に対象としてきたところがある。
しかし、今や『中流』層を維持する力を日本経済は失いつつある。だからといって、これまで同様に中流・上流層のみを当てにして開業カウンセリングを続けようとしたら、生活者としての国民全体の実感とは離れたところでしかカウンセリングをしないことになり、それはカウンセラーの感性をも麻痺させてしまう危険がある。
そうした意味では、いろいろな団体や機関のボランティアに自分から志願するような形ででも、様々な所得層の人たちの相談に応じるような姿勢は重要だし、クライエントさんの一定の部分について、ディスカウントした料金で面接を引き受けるような態勢を考慮に入れた方がいいのではないか。
多くの人に安くカウンセリングの場を提供するために、1回あたりの面接時間を30分にして料金を引き下げるなどという対策を考える人たちもいる。しかし、50分話を伺うからこそ意味のあるカウンセリングとして深まることが多い気がするので、安易にそうした手法を採用するのはどうかと思う。
これからは、例えば、生命保険会社などが、電話相談サービスを臨床心理士を雇って引き受けるなどといったことももっと広まっていくだろう。そうした中で、1回50分、特定のカウンセラーのもとに繰り返し足を運んででも相談することの意味という点を、カウンセリングを求める人たちに伝え、カウンセラーも、自分に何ができて、何ができないのかについて、クライエントさんに明確に伝えられるようになっていかないと」
経済的にも危機が生じるからこそ、はじめて専門家に相談したくなるとという人は明らかに多いと思います。賃金に引き合わない労働環境で、将来への見通しが具体的にイメージできない「出口なし」を感じながら何とか働き続けている、30代くらいまでの層の方からの相談も、私がお引き受けする中でも一定の比率を占めています。そこに「ワーキング・プア」という概念を当てはめてとらえる意識が我ながら遅すぎたかな、という思いがつい先日したことは、別の記事でも書きました。
たいていの臨床心理士も、実は自活して生計を立てていこうとすると、決して恵まれた環境にいるわけではありません。クライエントさんの問題は、我が身の問題でもあります。
「カウンセラーがたどり着けたところまでしか、クライエントさんを導くことはできない」というユングの言葉を、こうした意味でもわきまえながら、一生活者としての自分とも向き合いながら、「お金を払っていただける専門職」としての技量を磨き続けたいと気を引き締めるのでした。
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