開業カウンセラー「についての」臨床心理学(?)〔第2版〕
「開業するとは、それまでカウンセラーとして持っていたものを一度すべて失うことである」
これは、分科会で、ベテランの開業臨床心理士の方(前の記事とは別の先生)がお話しになったことです。
もちろん、給与を失います。それに伴う諸手当も失います。社会保険や厚生年金も失います。税金も自分で払うわけですね。
相談機関の経営の問題を考え、責任を取ってくれる上役もいなくなります。予約の管理をしてくれたり、問い合わせに答える受付のスタッフもいなくなります。それまではクライエントさんはその相談機関の「名前」を信用にして自発来談されたり、紹介されておいでになったりしていたわけで、いかに「集客するか」という問題と直面します。医療をはじめとして、連携する外部相談機関との絆の再構築も必要でしょう。
相談機関の「備品」、例えば面接記録用紙ですら、たいていその機関共通のフォーマットのものが常備されているわけです。心理テストの質問紙や箱庭等の備品もです。それらを調達し、補給し続ける必要もあるわけですね。
ケースの進め方や精神医学的なアセスメントについて話し合う上司や担当医師、同僚カウンセラーもそばにはいなくなります。
こうした、物理的・経済的・対人的・心理的な喪失のことを、その先生は「原初の喪失」と名付けておられました(^^;) このようにして、何を自分は開業の際に喪失することになるのかを冷静に確認しておくことが重要とのことです。
そして、これらの「原初の喪失」をいかに取り戻していくかという点で軌道に乗るまでに、だいたい5年間必要とのことです。
【追記】ここまで述べた部分、実はこの研修会で別の開業カウンセラーの方が言及された、ロバート・キヨサキの「金持ち父さん 貧乏父さん」シリーズのうち、
「起業する前に読む本」の冒頭の部分とそっくりなんです。結果的に似たのかもしれないし、念頭においておられたのかもしれません。
それまでの最初の数年間、開業カウンセラーは、こうした「原初の喪失」と、はじめて直面する「経営の不安」に対する防衛規制として、hypomanicな(軽躁)状態にいつの間にか陥っていることが多いといいます(^^;)。
これは開業カウンセラーに限らず、およそ独立自営に踏み込む様々な職種の事業者が陥る「創造の病(???)でして、要するに「なーに、大丈夫さ」「これくらいたいしたことない」と思いこみやすいし、しなくてもいい大きな投資をしてしまう誘惑に駆られやすい。例えばむやみやたらと立派な面接用の椅子を注文して、実際にはそれをあまり使いこなさないままといった症状(?)が生じる。
(椅子に関しては慎重を期しつつもむやみに高級化しなかった最初の選択は冷静で賢明だったという自負は私にはありますが、この、全般的な「躁的防衛」傾向については、過去2年間を振り返ると我ながら(^^;;;;)というしかないかもしれぬ)
これに拍車をかけるのが、クライエントさんから感謝されたり持ち上げられたりした際に「自己愛の肥大」に陥る危険に歯止めするブレーキが効かなくなることである。自分から外部の研修を受けない、クライエントさんや他者からの批判を受け入れなくなる、などが主な「症状」である。
このようにならないためには、
1.他業種の個人自営業者との異職種間のコミュニケーションをこころがけること。経営のヒントももらえるし、岡目八目的に、「あ、あの人は結構ヤバイ状況に陥ってるのに気がついていない」というのを観察できることを「他山の石」とすることができる。ただし、こうした経営的不安につけこむコンサルタントの類からの勧誘には慎重に対すべきである。
2.自分が主役や先生にならなくてもいい、外部の事例検討会やワークショップに一参加者として参加し続けるようにすること。
3.同じように「組織化」されず、孤立しやすい開業臨床心理士同士の地域的なネットワークを率先して作り、定期的に会うなどしていくように努めること。
4.自分なりの「シェルター」作り。仕事を離れ、家族とも離れてひとりになって安らげるような、しっかりした「タコツボ」を生活の中に組み込むこと。
....などがあるそうです。
*****
「私設心理相談」研修会関連では、少なくともあとひとつ書きます。
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