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2007/06/02

"container(容れもの)"と"content(内容)"の弁証法 -壺イメージ療法(2)-

 前回述べたように、壺イメージ療法とは、本来、単に、困難な問題や感情を「容れておき」「封印する」ための壺をイメージ的に想起してもらう方法ではない

 むしろ、「標準的手続き」に見る限り、こうしたありがちな先入観とは手順が逆転している。つまり、悩みや感情が「何なのか」を最初に対象化できている必要はなく、いろいろな心のありようが「何か」入っているであろうと想定される壺を、幾つも具体的にイメージしてもらうことしか求めていない。

 壺の中に入って感じてもらうというのは、あくまでも壺を幾つか思い描き、気持ち的に無理のない形でイメージ空間に並べてもらった後で行う手続きである。

 しかも、こうして、壺の中に入って、味わってもらうところまでやらないと、この療法に効果がないというわけではない。得てして、壺を想起し、置き場所を見つけてもらうだけで(しかもそれが1個だけでも)十分セラピーの援助となり、それだけでクライエントさんの改善に効果があることが少なくないのである。

 これをもとに、心の内容や心的葛藤、苦しい情動等に直面したり触れたりしないまま「距離を取る」工夫をするだけという点で「安全」であるという考え方、あるいは、そもそも、内的葛藤や情動に「直面」したり「再体験」したり「徹底操作」することが治療的であるという、多くのセラピーの前提は「間違って」おり、むしろそれらにうまく「触れないでいられるように工夫ができるようになること」こそが心的治療の達成であり、心の健全であるという極論すら想定できることになる。

 これに対して、中井久夫先生は、「壺イメージ療法は、一見心的内容に『触れないままににしておく』技法に見えるが、実は『開披的な』技法である」という逆説を提起した。

 この、逆説的な『開披姓』について、以下で私なりに考えてみたい。

 壺イメージ療法が、クライエントさんが、フリー・イメージ療法のセッションの中で、たまたま、「洞窟の中に、いくつもの壺が並んでいるのが見える」というイメージを語ったことがきっかけとなって生まれたことは、前回紹介した2つの文献の中で述べられている。ある意味で「偶然に」発見されたものなのだが、イメージ化の具体的対象として、壺を指定するフォーマットを作るという、単純なことが、どうしてこれだけ奥の深いアプローチを生み出したのであろうか?

 私はそれを、壺という対象(object)固有の、「外界」と「内部」との弁証法的関わりと関係するものとしてとらえてみたい。

 ここでいきなりだが、以前このブログでもご紹介した、中井久夫先生が「治療論からみた退行」と「スリルと退行」の翻訳を通して紹介された、バリントの「前-対象関係」についての考え方、すなわち、オクノフィリアとフィロバティスムの関わりの脈絡で考えてみたいのである。

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