この事件については、報道のあり方にもご再考を求めます(第2版)
msn=毎日より。
タイトルは、ちょっと引用するの、忍びないので。
......というか、こういう場合って、被害者の尊厳と個人情報保護の観点からみて、少なくとも40名の人間にとって、その人の個人的記憶が残る事柄について、乗った列車と逮捕の罪状が明示される形で報道されるあり方そのものについてご一考願いたいです。
極端に言えば、犯人のやったことと同じくらいに、あるいはそれ以上に、
1.まずは、見て見ぬ振りをした40人の乗客=ひいては「世間」というものへの基本的信頼に傷ついた傷
2.ひいては、それを報道を通して世間の匿名の大衆に「好奇の目」で見られたという思いからの心の傷
が大きくなることが明白だからです。
極論すれば、被害者に打診し、「この記事を報道していい、いや報道してく下さい」という受諾の言葉を得た場合ですら、どうだろう? (そのような事態は、とてもありそうにないが)
PTSDとは、半年後になってはじめて症状が明瞭化する場合もありますから、仮にご本人が直後は気丈なことを言っておられても、あとの反動が本人も全く予想外のことは、当然あり得ます。
*****
この記事を明瞭に示唆する形でこの記事を書くことそのものがそれを増幅する危険もあることへの危惧も感じ、ダイレクトなメールでのサイトへの抗議にとどめることも考慮しましたが、むしろ臨床心理士としての立場を明確にして、こうやってオープンに記事をのせることの「中和効果」を信じることにしました。
そして、はっきり申し上げると、乗客の皆様、このケースは情けない。その場にいたら、「事態が想像できなかった」などとはとても言えません。
「男が戻って来た後が怖かった」なんて言い訳です。
男が被害者と共に客室から姿を消した時点で、車掌に通報して、あとは取りあえずその車両に戻らなければいいのですから。私は、その場にいたら、絶対に通報したという自信があります。
このケースにおいては、車掌は、「臨時停車」→「駅での警察の導入」を運行本部に無線で上申することになったと思いますし。
こうやって「車掌さんに後のことは任せる」のが、こうした場合の唯一の「社会的な」対応でしょう。このケースの場合、「5分、10分の違いが大きな意味を持つ」ことは明白でしたでしょう。
乗客からの通報後の対応に迅速さが欠けていたりしたら、JR西日本さんは、またもや無茶苦茶お株を下げるところでした。どうみても、最低、「急病人発生」と同等の緊急処置がなされるべきケースですし。恐らくこの種の「乗客の安全に関わる犯罪」の場合、少なくとも「警察が対応できる最寄り駅での臨時停車」というふうに業務マニュアルはなっている筈と思いますが。
ちなみに、ここまで書くなら、逆に「どの駅で」「どういう経緯で」、犯人の身柄拘束、逮捕に至ったかを報道は明示してもいいかと思いますが。
なお、この文を書く際に、「見て見ぬふりをした」少なくとも「大人の」乗客の皆様の「心の傷」まで私は配慮しません。被害者の傷を「分け持って」いただきたいので。
子供さんとかがいた場合、事態の本質はわからなくても、「何か言葉にならない異様な」恐怖が残ったかもしれませんが、そういうことで子供ににきちんと向き合ってあげるのも親の、大人の務めでしょうから。
仮にその場では大人自身何も出来なくても(人間、そういうことはあります。私も、子連れで、つれあいに止められたら3分余計に迷ったかも。逆に子供の身の安全を思うからこそ躊躇したという人もあるかもしれない)、最低限、「その後の(post trauma)」子供の反応にどう応えるは大事にして下さい。あとあとまで残る,親子コミュニケーションの「奥歯に挟まる『もの』」になるかもしれません。
ほんとは、こういう時に、「車掌への通報」において迅速にさりげなくあっさりふるまう方が、子供の教育にもいいかと思いますけど。それひとつで、「生涯にわたる」子供との信頼関係を築けるくらいの。
もとより、何より、犯人への公正な処罰を祈ります。
以上、「臨床心理士としての」発言として公開します。
阿世賀 浩一郎
追伸:後半は第2版で増補しましたが、前半は、ほぼ同様の内容で、毎日新聞社にもメールで直接伝達いたしました。
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