秘密は曲順と歌唱「モード」の切り替えの絶妙さにある?-DVD"ayumi hamasaki arena tour 2006 A”(2)-(第2版)
さて、すでに代々木での今年のカウントダウンコンサートの一日めが昨晩終わったところでしょうが、ayu様は、ご機嫌うるわしうごさいましたでしょうか?(^^)
それはそうと、DVD"Ayumi Hamasaki Concert Tour 2006 A”を題材に、ayuのライヴ歌唱力の向上の秘密を探るシリーズ。
前回は、そのようになる上で大きな転換点となったと思えるのが、2004年のMTV AWARDの授賞式の日の"Becaou of You"一発ライヴでの、それまでとは異次元のayuのパフォーマンスではないかという私見について述べました。
今回は、この最新ライヴDVDが収録された、代々木のツアー最終日を実際に観客席から観た時の印象と、DVDで観なおして感じられて来た、具体的なポイントについて、コンサートの曲の流れに即して述べて観ようかと思います。
ちなみに、ライヴDVDそのものは、微妙にシーンによって「つまみ(短い編集カット)」をいれていますが、少なくとも大半のシーンは「最終日そのまま」の映像と歌唱だと思います。楽日の前日の代々木でも、撮影の予行演習も兼ねてカメラは回していたのでないかと思いますが、このへんのことは私は知らないままです。
....それにしても,体育館天井下に設置された長いレールを、リニアモーターカーのように猛烈な勢いで、ステージ側とバック(代々木体育館では東西方向ということになる)をシューンと行き来する自動カメラには、見晴らしのいい2階席の前寄りの席だった当日、会場でたまげたけど、DVDでも鮮烈な映像効果出してますね。すごい広角レンズをつけてたわけだ。これは初の試みですね。
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さて、ともかくayuの歌唱力は伸びている。少なくとも最終日にステージ上で音程を乱してしまう瞬間が皆無に近くなってるし、長野の2日めでも、"STEP you"までは音程こそ結構外したけけど、この曲を境に、驚くべき「立て直し」に成功し、
"is This LOVE?"、
" (miss)understood"あたりでは、
アルバムCDとはまた別の次元で曲の深みを感じさせてくれる名唱になり、あとは最後まで度肝を抜かれ続けたわけです。
ayuは、コンサートライブにおいて、ツアーにおける基本的な舞台装置と、曲順の基本ラインはいじらないけど、刻々と試行錯誤と手直しを続け、SEも毎回変わり、ある意味で、2度と同じライヴをやっていないかのような印象を与えることは、おっかけのコンサートゴーアはご存知でしょう。昔から知られた「恒例曲」の配置や曲そのもの変更は結構やっていくようですが。
そういう中で、演出の細部を洗練させ、新たな工夫を加え、より無理のない曲順と歌唱法へと「煮詰めて」行く。結果的に、ツアーの最後には、全く余計なものがなくて、引きしまった演出と歌唱に到達します。それは実は、エネルギーの無駄が全くない、効率的なのに、新鮮な印象を効果的に与える方向への微調整の繰り返しのように思います。
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ここで、ayuの声の質の変化の問題に触れておきます。
現在のayuは、声において、かなり明白に、2つのモードを使い分けています。
ひとつは「胸声」モードというべきもの。上半身で歌うモードです、これは昔ながらのayuの、あの「かん高くてハスキーな」細いけど通る声です、軽やかに音がころがり、細やかな歌い回しの魅力に秀で、チャーミングで、まるで、ayu自身の頭蓋骨を響かせているかのように聴こえます。聴いている側も、頭蓋骨に響いてくる印象です。恐らく周波数特性をグラフにすれば、高い周波数帯域にピーク成分がくる筈です。
昔のayuと現在のayuで異なるのは、このモードで長く音を引き延ばして歌う際に、途中から絶妙のヴィヴラート(声の震わし)をかけて、余韻と、声の伸びを感じさせる技術に磨きがかかっていることです。恐らく、ヴィヴラートなしのままでこの声ののばし方をすると、声帯にかなりの負担になり、声が枯れるのが早まる。
ヴィヴラートは、いわば音程をとる上で、「波」にすることによって音程そのものを「確率論的」な逆説的安定にします。まるで物理学の量子論みたいな話ですが、特定の周波数のみに声帯を共振させない分だけ、声帯の疲労はしにくくなるのに、声は雄大に響くという利点があると思います。
以上のタイプを今後、ここでは【胸声】モードと呼ぶことにします。
もう一つの声のモードは、お腹から下に重心をおろして歌うモード。これを「腹声モード」と仮に名付けましょう。これは、ayuの声の甲高さが目立ちません。重い声質で、聴いている側にも「腹に響く」感触になります。
周波数帯域の、高域のピーク成分は、同じayuの声なのに、「胸声モード」より目立たないはず。
ちょっと「男っぽい」声ともいえますが、声帯で歌うというより、腹筋で歌い、胴体に響かせている分、実は喉への負担は小さい。しかし迫力のある声になるわけですね。細やかなニュアンスづけはしにくいのですが、音を引き締まった形で、しかもノン・ヴィヴラートでリスミックに小刻みに押し出す限り、一息で、的確な音程の連続を生み出すことは可能です。その意味では、この、重心が低い歌い方は、実はエネルギー効率のたいへんいい歌い方になります。
こちらの歌い方を今後,この記事では【腹声】モードと呼ぶことにします。
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ayuは、数年前から【腹声】モードの習得をしてきていたのですが、(少なくとも2002のスタジアム・ツアーの頃から明白化してきている)今度は、この声の「小回りの利かなさ」をやや持て余していたようにも思います。以前からのレパートリーとこの声の質が一致しない場合がある。そして,急に静かなバラードに切り替えるとなると、音程と繊細さが追従しない。ayuの声そのもののキーが以前より少し下がって来たことも拍車をかけました。
こうした中で、
1.ライブの常連だったどの曲を少しずつ削って行くか。
2.曲によってはさりげなく途中でキーを変える編曲にする決断をするか。
3.今のayuの声に向いた、実は低域に重心を移した新曲を新たな人気曲に加えて行けるか。
4.【胸声】モードと【腹声】モードを、曲によってモードチェンジして「使い分ける」ことにいかに習熟するか。
5.それを効率よくするために、ライブでの曲順、演出のスタイル、CDとは異なる歌唱モードを敢えて用いて、むしろライブでそれを新鮮と感じさせるやり方の洗練。
6.仮にライブで声の出し方が危うくなる危険を察知したら、歌いながら早い段階で無理なく、しなやかに「立て直し」す準備を開始し、もう一つの「歌唱モード」に、数十秒かけずに切り替えてしまえるだけの、自分の身体感覚の変化への冷静な観察眼を養うこと。
......などが必要になったと思います。
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次に、実際のライブで、そのへんをどのように処理したかについて、あくまでも私の主観を通してですが、一曲ごとに見ていきます。
1.
Born To Be...
冒頭は、スデージ中央の大きなバラの花の花弁の中に立つayuがいきなりスポットライトを浴び、足元でダンサーたちの華麗な群舞。曲のオープニングにふさわしい華やかさが見事に一致する。
曲は、【腹声】モードで伸びやかに声をスムーズに押し出すことをキーにすれば良い。この曲全体のキーがayuとしてはかなり低めなのに、ヒロイックで祝祭的で派手でリズミックな曲に響く曲なのである。
そして、バラの花の中のayuは、手先を除くと、ほとんど身体の激しい動きを必要としない。
こうした意味で、実はこの曲をの冒頭に持って来ると、実は「歌うayu」にとっては、緊張感も少なく、「腹を据た」声の出し方に執心すればよく、省エネで済むのに、えらく舞台映えするし,声も出しやすいし消耗しにくい。
2.
audience
コンサートの常連曲なので、ayuは「反射神経で」歌える。観衆も手拍子などで「参加意識」を一気に高められる曲。
この曲への移行は、ayuaは衣装を一枚脱ぎ捨てて、バラの花のセットから階段を降りるだけでいい。原曲より巧妙にキーを下げている。基本的には【腹声】モードのまま。ayuはここでやっと「歌って踊って」モードになるが、群舞の中にあり、そんなに凝ったことまでしなくていい。
3.
evolution
"audience"に引き続いて基本的に同じような群舞の中で歌う。これまたayuのコンサートで歌われないことはない曲。ayuの「反射神経」で歌える(カラオケで歌おうとすれば、最も難しい曲のひとつだと思うが。何も考えなくても反射神経で歌えるまで歌い込むと、凄く長いフレーズが「一息で」無意識に出るようになります)。聴衆にはお決まりのフリで曲に「参加できる」場所なわけで、このへんで一気にコンサートへの一体感が会場にあふれかえることになり、ayuもそれに「支えられる」、聴衆と場作りモードが一気に完成する。声は,私の分類では【腹声】モードのまま。
4.
STEP you
この曲に入る前に、ayuはステージ中央後方の歌っていた位置からそのまま奈落に降りて、舞台から姿を消し、聴衆を"STEP you"を予感させる映像に目を引きつけさせる形で、ayuが次に歌い出すまでに数分の間が生じている。この映像そのものが、その後舞台で演じられる内容の「前半」という性質を帯びていて、反射効率の高い、舞台天上から吊るされた数枚の帯状のスクリーンを舞台の前面に移動させることで、映像ということを意識させずに、次のシーンへと観客を誘える。
ayuはこの間に衣装替えのみならず、気持ちの切り替えをして、マジックもどきのかなり細かい舞台上での演技を、限定されたダンサーたちとハイスピードで息をあわせて演じねばならない状況へと気持ちを切り替える間合いを得る。
この"STEP you"という曲は、【腹声】モードのままで歌い出すことはできない。軽やかで小刻みな音階上昇正確な繰り返しが必要。長野2日めのライヴではこの歌い出しに失敗して、音程が外れ続けたのだが、最終日に向けて、曲順を含む手直しがなされていた気がする。一番を【胸声】モードで冒頭ははじめ、「ウォーウ、ウォー」のあたりから【腹声】モードに乗り換え、あとは2番以降も【腹声】モードでの短いブレスに乗せて『一見軽やかに」音階上昇部分を聴かせる方向に「すり替える」しかない。だから、実は声の質は、曲の3分の2以上、CDとはかなり異なり、かなり朗々としている。
5.
Ladies Night
舞台ではマジックめいた寸劇を続けながらayuはこの曲を歌うわけだが、個々のダンサーとの呼吸には、このツアーのプログラムで一番気を使う曲であるが、結果的にはそんなに身体そのものは「大きく」動かさなくてもいい寸劇なのね。そして、この曲、間奏が長いし、ラップ風の部分はayuはナマでは歌っていないので、実は曲の進行中の半分以上の時間、ayuはライブで「歌う」必要がないまま「歌の中休み」を小刻みにとれていることになる。声は、基本は基本は【胸声】モードだが、かなり重心が低い。
曲の後半で、ayuと主要女性ダンサーの4人は、ステージ中央から張り出した渡りステージ(?)を通って、丸い張り出しステージに向かう。"Because of You"のライブでayuが寝て歌う演出で使われた回転円形張り出しステージのリサイクル(?)だが、今回は,回転も上昇もしない(^^;)。その代わり、曲の大詰めでドカンと煙幕を張って、その間にayuは雲隠れ。ここから真下に降りてしまったようである。
円形舞台には4人のダンサーのみが残り、曲の終わりのエンディングは引き延ばされ、ダンサーと「映像の中」ですでに休息しているayuとの「かけあい」、続いてダンサーも舞台から消えて今度は映像の中に登場する、という形で、自然に、観衆の目をを舞台から映像の方に引きつける。
結果的に数分間の間合いができる。ayuは、この間に次の「サーカスもどき」への準備をじっくり整えられるわけである。映像の中のayuの急転直下のオチの付け方。これが次の曲への,舞台の雰囲気の転換になる。
(4.以降、映像と舞台をつないでいくと物語的にもここまでの経過を,すべて自然な流れで「意味付けられる」けど、それは略)
(この最後の項、06/01/18に若干増補)
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こんな調子でコンサート全曲をDVDみながら分析したメモはすでに作ってありますが、
.......そろそろ代々木に出発準備の時間に入ったので、続きは新年に!!
皆様、よいお年を!!
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