フォーカシングで修論を書く、臨床心理系大学院生の皆様のための、比較用語辞典 1
主として、ジェンドリンの
『フォーカシング』(1981)」(以下、《フ》と略)と、
『人格変化の一理論(1964)』(《人》と略)
における用語の関係、そして、
体験過程尺度(experiencing scale)などとの関係について、簡単にまとめておきます。
これだけを一般の皆様がお読みになると、何が何だかわからないでしょうが、フォーカシング関連で修論を書こうとする心理臨床系の大学院生の皆様には、これだけでも重宝していただけるはずと思います。
*****
●[技法としてではなく、自然に人の中に生じる現象としての] フォーカシング(focusing) 《フ》
=直接のレファランス(direct reference) 《人》
=体験過程尺度 stage 5
●フェルトセンス(felt sense) 《フ》
= 直接のレファラント(direct referent) 《人》
=[体験されている]暗黙の意味(implicit meaning) 《人》
●フェルトシフト(felt shift)[あるいは、略して、「シフト」(shift) 《フ》
=ひらけ(unfolding) 《人》
=体験過程尺度 stage 6
●連鎖的、拡大的な連続シフトが生じること 《フ》
=全面的な適用(grand application ) 《人》
=自己駆進的(self-propelling)体験過程 《人》
=体験過程尺度 stage 7
●フェルトセンスとしてですら、感じようとしても感られない 《フ》
=「暗黙の意味」が感じられてない《人》
=構造拘束的(structure-bound)[な体験過程様式のもとにある]【注1】 《人》
=凍結した全体(frozen whole) 《人》
●フェルトセンスとしてすら感じようとしても感じられなかった「何か」が、注意を向ければ、フェルトセンスとして体験可能になる過程 《フ》
=再構成化(reconstituting)【注2】 《人》
●情動(emotion)に巻き込まれた 《フ》
=距離が取れて(make a space)いない 《フ》
=脱同一化(disidentification)されていない【注3】
*******
【注1】
「構造拘束的(structure-bound)」体験過程様式の対義語は「過程進行中(in prosess)」である。1990年頃までの日本の研究論文には、"structure- unbound"という言葉が散見されるが、ジェンドリン自身の論文にはそんな用語はない....というより、体験過程理論がほんとうに理解されていない時代の遺物と思って欲しい(ゴメンね、使った先生方m(_ _)m )。
このことを学術論文上で公式に指摘して、その後"structure- unbound"なる言葉を、新たな学会誌から放逐するきっかけとなったのは、大石英史氏の論文による指摘である(大石さーん、「まだ」開封してない引っ越し荷物の段ボールの中です。具体的論文名ご紹介できなくてスミマセン)
【注2】
この「再構成化(reconstituting)」という用語をに関しては、現在でも日本の研究者の論文では、正確で厳密な使用がなされていると確信できるものを私は読んだことがない(^^;)。ジェンドリンがちゃんと「人格変化の一理論」で、厳密に説明しているのに......
「再構成化」によってフェルトセンスとして体験可能になった場合にしか、フェルトセンスと「象徴化」の相互作用における、体験過程の「推進(carry forward)」は生じない。
逆もまた真であり、フェルトセンスと「象徴化」の相互作用における、体験過程の「推進(carry forward)」によって、「再構成化」は徐々に進展するのである。
......ああ、このことをここで紹介してしまうだけで、フォーカシング研究者向けの、大サービスである(^^;)
【注3】
「脱同一化(disidentification)」は、フォーカシングを学んだ人にはおなじみの、アン・ワイザーさんがフォーカシング技法論に導入した概念である。
精神分析用語的に言うと、「意図的(意識的)な『解離(dissociation)』」という、論理的には矛盾のカタマリに思える状態を指すことになる(これについては、松木邦裕先生と田嶌誠一先生からの直接のご示唆に感謝いたします)。
しかし、実は誰にとってもごくありふれて生じている現象である。
アイデンティティの概念を広めることになった、精神分析のエリクソンの「同一化(indentification)」概念とは何も関係ない。
むしろ、トランスパーソナル学のケン・ウィルバーが「ケンタウロス段階」における現象として用いた「脱同一化(disidentification)」に起源があると推測できる(そういえば、Ann自身にこのこと確認しないままだ)。ケン・ウィルバーはこの点ではフォーカシングを正しく理解しているし、Annの用法とも矛盾しない。
しかも、それを「更に」遡(さかのぼ)ると、サイコシンセシスの創案者アサジオーリに起源があるようだ。
(確か、ウィルバーのこの著作での吉福氏の訳注にこの解説がある。もとよりアンへの言及はない)
だが、アサジオリまで逆にたどると、吉福氏にの記述に拠る限り、アンのそれとは、かなり意味が異なりはじめるかなと思う。
*****
............以上、パーペキに専門家向けですが、(カメラ用語を除けば)ネット上で「フォーカシング」という用語で検索エンジンかけると、このブログがヒットする率は凄く高い現状下で、私の果たすべき学問的責任と思うので....
« 「監督」クリント・イーストウッドと浜崎あゆみの共通項 | トップページ | この「図」こそ、待ち望んだ「図」なのだ!! »
「アン・ワイザー・コーネル」カテゴリの記事
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- 佐賀県教育センター教育相談集中講座講師として務めを果させていただいた一日をふり返って(2009.11.11)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(6)【第2版】(2009.07.22)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(3)【第2版】(2009.07.17)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(7)(2009.07.25)
「ジェンドリン」カテゴリの記事
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(3)【第2版】(2009.07.17)
- 夢フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- フォーカシング関連書籍、全員集合!!(2011.12.31)
「トランスパーソナル」カテゴリの記事
- ユーミンのデニーズ伝説(2005.12.23)
- 「ゴースト」と「ファントム」 -押井守と神田橋條治の共通項-(2009.06.19)
- 「思わずツッコミを入れてしまうのは?」(2010.11.24)
- 少年は本当に神話になりつつあるのか? -ヱヴァンゲリヲン 新劇場版 破-(2010.10.21)
- 私のスーパーバイズ ~実践編~(2005.09.19)
「フォーカシング」カテゴリの記事
- 「ふくおかフォーカシング・セミナー」開催中止のお知らせ(2012.01.23)
- 初夢(2012.01.01)
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- 「こころの天気」のご紹介(2012.01.04)
「体験過程」カテゴリの記事
- 初夢(2012.01.01)
- 「藤嶽法」のご紹介(2012.01.05)
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- 体験過程尺度入門 -カウンセリングが「深まっている」とは、どういうことか?-(すでに第3版)(2006.12.30)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(6)【第2版】(2009.07.22)
「大学院」カテゴリの記事
- 体験過程尺度入門 -カウンセリングが「深まっている」とは、どういうことか?-(すでに第3版)(2006.12.30)
- 単なる「ロールプレイ」より効果的なカウンセラー訓練(第4版)(2006.06.21)
- 成熟の過程で人は何を失う危機に立たされるのか -「魔法少女まどか☆マギカ」についての臨床心理学的小考察- (第4版)(2011.10.18)
- 田嶌誠一 著 「現実に介入しつつ心に関わる」(2009.12.16)
- カウンセラーは勉強すればするほどダメになる? -田嶌誠一 著 「現実に介入しつつ心に関わる」への感想 追補-(2009.12.18)
「学問・資格」カテゴリの記事
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- ドナ・ウィリアムズ著「自閉症だったわたしへ」を読み始めて。(2010.06.20)
- 抗うつ薬で眠くなるのは「副作用」? -そもそも「副作用」という概念をどうとらえるか-(2009.06.29)
- 周囲の人は双極性障害2型の人の「気遣い」にどれだけ助けられているかに気がつかない・・・・内海健 著「うつ病新時代 -双極性II型障害という病-」 書評 (第2回)(2009.09.17)
- 体験過程尺度入門 -カウンセリングが「深まっている」とは、どういうことか?-(すでに第3版)(2006.12.30)
「田嶌誠一」カテゴリの記事
- Skype(インターネット音声動画通信)を通してのフォーカシングへの誘い(2011.12.18)
- フォーカシング(?)がなんとなく苦痛 (転載)(2011.12.26)
- 単なる「ロールプレイ」より効果的なカウンセラー訓練(第4版)(2006.06.21)
- 壺イメージ療法 -「容れもの」「置き場所」を想像してもらう技法- (1)(2007.06.01)
- 田嶌誠一 著:「児童福祉施設における暴力問題の理解と対応」(2011.11.15)
「福岡」カテゴリの記事
- ドナ・ウィリアムズ著「自閉症だったわたしへ」を読み始めて。(2010.06.20)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(2)(2009.07.16)
- 私の今年の年賀状の文面です(2012年版)(2011.12.30)
- 対面での個人面接をインターネットカフェで再開します。(2011.12.29)
- 壺イメージ療法とフォーカシング(第3版)(2009.06.11)
「精神分析」カテゴリの記事
- 周囲の人は双極性障害2型の人の「気遣い」にどれだけ助けられているかに気がつかない・・・・内海健 著「うつ病新時代 -双極性II型障害という病-」 書評 (第2回)(2009.09.17)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(4)(2009.07.18)
- フォーカシングのグループ活動において、身体の感じを通して傾聴し、言葉にしていく関係性の場を、さりげなく生み出すということ(2)(2009.07.16)
- 壺イメージ療法 -「容れもの」「置き場所」を想像してもらう技法- (1)(2007.06.01)
- 壺イメージ療法とフォーカシング(第3版)(2009.06.11)
「臨床心理」カテゴリの記事
- 「ふくおかフォーカシング・セミナー」開催中止のお知らせ(2012.01.23)
- 初夢(2012.01.01)
- インタラクティブ・フォーカシング 技法の実際(2012.01.02)
- フォーカシングへの誤解を解く(?) その2(2006.11.14)
- ドナ・ウィリアムズ著「自閉症だったわたしへ」を読み始めて。(2010.06.20)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/70854/13227435
この記事へのトラックバック一覧です: フォーカシングで修論を書く、臨床心理系大学院生の皆様のための、比較用語辞典 1:
« 「監督」クリント・イーストウッドと浜崎あゆみの共通項 | トップページ | この「図」こそ、待ち望んだ「図」なのだ!! »




コメント