カウンセラーのネット活動についての大いなる誤解に挑戦する!!(第5版)
恐らく、カウンセラーの皆さんの中には、私がこのブログで、自分の趣味や好みや考え方,感じ方を、しかも「実名で」さらし続けるばかりか、なんと自分が「映像出演」する形で自分のカウンセリングルームの宣伝をしたり、
「自分は『生活の糧を得るために』カウンセラーをしているだけである。だから私の『生計が成り立つ程度』にはお客さんに来てもらわないと困るから、『経営的観点から』宣伝を現段階でこのように繰り広げているのである」
ということまで、公然と書き続けていることに、ある驚きと反発を感じておられる方もあるかもしれない。
実は、これは私がある意味で意識的に選んだ戦略である。
はっきりいうと、こうしておく方が、私のもとを訪れるクライエントさんにとってセラピーとして有益である、少なくとも「害はない」ということに「確信」があるからである。
実名で通すことの意味については、実はかなり以前の別の記事で暗示しているのだが、
私は少なくとも、ネット上で,
自分がカウンセラーであることそのものを
「全く伏せて」
ブログやホームページをやる意志が「ない」人、
すなわち、
「匿名で」
「自分の所属機関も明示せずに」、
誰でも読めるネット上のオープンなスペースで
ブログやホームページをやって、
しかもそこで、
カウンセリングや精神療法についての
私見を書くことそのもののもつ、
ある「危険性」になぜ気づかないのかと思う。
そういう「匿名の」カウンセラーが語る記事の内容が、思いもよらない、見も知らない全国各地のクライエントさん「たち」に
「実は『自分の』カウンセラーの自分との面接「について」の書きこみである
と「勘ぐって」かかるきっかけを与える危険について、皆さんは考えたことがおありですか?
そのように「勘ぐる」クライエントさんは、皆「妄想的」なのだ、で片付けるおつもりですか?
恐らく、あなたはひとつ記事を書くたびに、日本中の、最低10数名の「思いもよらない」クライエントさんが、あなたが知りもしない、日本全国、最低十数名の「そのクライエントのカウンセラーさん」に疑惑を向け、それを口にできないままでいて、その「カウンセラーさん」とクライエントさんとの関係をい、いつの間にか混乱させている可能性まで考えたことはないのですか?
それなら、自分はどこどこの所属機関にいる、○○というカウンセラーだ、と実名まで明示して、自分のクライエントさんたちとの関係の上で「害にならない」し、万が一、害になった場合には自分で責任を取る覚悟で書けることだけを書くべきだ、というのが私の考えです。
********
さて、自分のクライエントさんとの面接過程を、「本人の同意も得ないまま」「軽率に」ネットに載せることが論外であることは言うまでもありません。
私は、事例めいた話題に触れる際には、必ず「架空の事例」といえるところまで徹底的に換骨奪胎して、一般化し、抽象化しています。
面接の中で思いつき、クライエントさんに思わず口にしたテーマを、このブログで面接の具体的な脈絡から切り離して書くことは少なくありませんが、そうした場合は、ほとんどのケースで、クライエントさんに、
「こういう形でテーマをたてて,こういうふうにブログで書くから」
と、おおよそのあらすじまで即興で披露して、クライエントさんの同意を得て、書いています。
もちろん、「これをネットで書いてしまうのは、自分のクライエントさん(の誰か)に悪影響を与える」危険を感じた場合には、そういう思いが少しでもかすめたら、クライエントさんにもそういう提案はしないし、ブログでも書かないままです。
いずれにしても、そういう私の提案に対して、
「先生の言われたことは、自分と同じような状況にある人に有益だと思いますから、むしろ書いていただける方がいいと思います」
とまではっきり言い出すクライエントさんも少なくありません。
だから、次の面接の時にクライエントさんから、
「あ、あのテーマ、実際に書いてくれたんですね。あれから、あれを家のパソコンで読み直すことで,自分が面接した時にやりとりしたことを振り返り、自分なりに更に考えてみる上で役に立ちました」
とすら言ってもらえることが結構あるぐらいなのです。
つまり、私のブログの書き込みは、クライエントさんにとって、ウィニコットの言う意味での「移行対象」としての意味(=面接の時以外でも、クライエントさんと私との間に<絆>があるのだという安心感を与える媒介[medium,複数形で「media=メディア」」]としての意味)を、面接と面接の「間の期間」に持つように、むしろ積極的に配慮しているつもりです。
もちろん、中には、「あの記事,私のことについて書いたのですか?」
などと、「思いもよらない」クライエントさんが言い出す場合ももありますが、私はそういう時に,正直に、
「その時は特に君のことは意識しなかったけど,私は私のどのクライエントさんがその記事を読んでもいいし、ひょっとしたら役に立つかもしれないと思うことしかネットで書かないことにしている。だから、君が、私のあの記事から、どういうふうに、自分とも関係があると感じたのかをきいてみたいんだけど、どうかな?」
というふうに「面接を深めるのに役立てる方向に」話を進めます。
つまり、このブログ、「カウンセラーこういちろうの雑記帳」と、私の「現実の」湘南フォーカシング・カウンセリングルームの面接室そのものが、ネットのバーチャル空間とリアルタイムで通底し、一体化した形で有効に作用するように配慮しているのです。
「だから」私は「映像出演」までするし、浜崎あゆみのカレンダーを面接室にむしろ飾る「必要がある」のです。「ほんとにiPod好きなんですか?」ときかれれば、喜んで自分のバッグから取り出してみせます。
でも、私に迎合して浜崎あゆみを聴き始めたらしいクライエントさんは、なぜか誰ひとりといません。
音楽の話題になっても,「自分の好みを私の前で押し通す」クライエントさんしか私のクライエントさんにはいません。
なぜなんでしょうね?
「うわあ、ネットで書いてる通りの、ほんもののこういちろうさんだ」
と、むしろ安心してもらえる仕掛けにしているんですよね。
だから、クライエントさんは、安心して、「自分自身でいられる」のではないかと思っています。
*******
いずれこれはまた別の機会に論じますが、私は、治療者の「中立性」とは、そのクライエントさんなりの、クライエントさんのリアリティを「わざわざ」破壊する、「余計なファンタジー」をかきたてる装置なのだと思っています。

(増井武士先生が、
これに近い見解をお持ちです。
「フォーカシングの展開」(伊藤義美 編)の、
増井先生による、
第8章、「関与的観察としてのフォーカシングの臨床適用」を参照)。
フロイトが「神経症」の症状を、面接室という場の中での「転移神経症」という「より安全な」ものに一度置き換えて解決するのだ、と言ったのは、実際には、ブロイラーに続いて、フロイト自身が、患者さんの「転移」に無っ茶食っ茶に死ぬほど悩まされ抜いた挙げ句、
「そうか、この一見やっかいな『転移』をむしろ生産的に生かして治療できるのではないか」
というところまで、「逆転の発想」で「開き直る」に至るプロセスがあって、はじめて言い出せた「逆説」なんですね。
つまり、「相手の自分に向かってくる力を利用して、しかも安全に相手を投げ飛ばす」というのは、
実はすごーーーーーく高度なエキスパートにしかできない世界なんです!!
そして、フロイト自身は、実はこの「転移を生産的に生かす」ことに、生涯の事例の中で,果たして「8勝7敗」あげられたかどうかも怪しいことは、すでに論じ尽くされている通りです。
中井久夫先生が、古典的なフロイト的治療法を、明らかに「リスクが大きすぎる」ものとみなし、
「自分がもしすでに亡くなった欧米の精神分析系の他の医者に患者を紹介するとしたら、ウィニコットかバリントだけだろう」
ということを、バリント「治療論からみた退行」(中井久夫訳 金剛出版 ; ISBN: 4772400842 絶版 ) のあとがきで、はっきりお書きなのに、私も同意します。
**********
ネットでのカウンセラーの活動についてですが、
たとえそれが、臨床心理士しか読めない,厳格な入会資格を有するクロースドな会員制のブログであったとしても、そこでなら、クライエントさんについて意見を取り交わしてもいいと安易に考えるのであれば、私は、それを「クライエントさん本人に読まれない」という「防壁」を勝手に作った中で繰り広げられる、治療に有害な、治療者自身の「行動化(acting out)」であると考えます。
それどころじゃあありません。
はっきり書きます。
たとえ面接がうまくいかないからといって、
自分の担当している事例を安易に「事例検討会」、
ましてや
(たとえ本人の同意を得たものだとしても)
学会の「事例研究発表」に提出する
という行為そのものが、
治療者自身にとって、
クライエントさんとの関係性を破壊する
"acting out"のリスクを持っている、
ということに、今日どれだけの配慮がなされているでしょうか?
(この問題について、こちらの新記事で具体的に論証していきます)
事例検討会の後、それがほんとうに有益に役立った場合というのは、一般に考えられているより遥かに少ないのではないか、よくて、事例検討会が「無害」だったにとどまるケースが、結構多いと、私は思っているのですが。
事例検討会「にもかかわらず」、むしろそこで「自分なりの」見直しの機会としてしか「活用しなかった」、主体性のある問題意識を「自分で」育て続けた治療者のみが、最終的に,学会で、クライエントさんが仮に発表のその場にいても喜んでくれそうな域の、ほんとうの成功事例の発表ができていることが多い、と私は感じています。
少なくとも、私は、他の人のアドバイスに「そのまま」従った結果いい結果を出せた事例の経験を思い出せませんし、私のスーパーバイジーたちも、必ずしも私のアドバイスを忠実に実行「しない」からこそ、「私の想像力を超えた」展開で、いい面接ができていることが多いと思います。
スーパーバイジーのカウンセラーの方々も、クライエントさんも、私の予想を裏切る、思いもよらない形で「しか」成長して「いかない」から「こそ」真の成長(ユングの言う意味での「個性化」)なのだと思います。
********
かなり逆説的な問題提起だとは思いますが、意外と、「ホントはそうだよね」と感じて下さるカウンセラーの方も少なくないかと思います。
*********
ふと思い出しましたが、中井久夫先生って、患者さんが読んでも決して悪影響が出ない文章しかお書きになっていないんですよね。
そして、
「なぜ精神療法家をしているかと問われれば、
ただ『日々の糧を得るため』
と答えられるべきである」
「患者に高く買われそうになったら、早めに
自(みずか)ら買い戻せ(discountせよ)」
というのは他ならぬ中井久夫先生の名言の一つである。
似た表現はこの記事の末尾に示した「あの本」にも出てきますが、そのまた「原典」の論文ぐらい、少なくとも病院臨床のカウンセラーならとっくに読んでいる「べき」なのです。(中井久夫著作集のどこか.....ま、いいか、「軽症........について」という「名論文」なんですが.....ぐらいはヒント出しておきますね)。
これは結果的に,中井先生が「転移」の治療的効用にかなり疑問を持っていることを示唆していると理解するしかなかろう。
この辺、「面接」即「収入」という、私の現状は、完全に「自己一致」してこの言葉を使えるので楽である。私を「金の亡者」か何かと勘違いした時点で、そういう「治療者」は勝手に私に「陰性転移」、ないし、「投影同一視」を向けているだけである。
試しに、一回の面接料金6000円(内税!!)で、更に所得税もきちんと納めるためには、週5日働くとして、一回一時間として、一日「平均で」何ケース持たねば経営が成り立たないか試算してみて欲しい。月収手取り40万(ボーナスなし)相当とするために、でいいので。
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結局この「カウンセラーのネット活動について」の記事も、「第4版」で、リンク・内容等を大幅に増補しました。
かなりのメジャーアップデートですので、この記事に関心を持ってくださった皆様には、ご再読いただく価値はあるかと思います。
投稿: こういちろう | 2006/07/22 21:19
なお、この記事は特定のブログやウェブサイトや掲示板について批判するために書いたわけでは「全く」ありません(^^;)。
(この記事を来た後、この問題について論じられているブログの記事のやり取りを教えてくれた同業者の知り合いがおられましたが、それこそ「そのブログへの」批判であると「その方が」思い込まれた結果でした(^^;;;;;;)
私は、必要を感じれば、特定の人の人名を上げて批判することを全く厭わない人間です(少なくとも、それが誰であるかを「間違いなく示唆できる」形でしか書きません)。
「あなた」という表現を使ったのは少し私のちょっとしたいたずら心なんです。きっと、私が知りもしないホームページやブログをやっている全国数十名のカウンセラーさんが「私のことか?」とおもいこむに違いないと思って(^^;)
つまり、実名で書いて、「自分の」クライエントさんに記事を読まれたら困る、という観点からしかとらえていないカウンセラーさんは、匿名で書くことにより、その方の「見も知らぬ」全国どこかのクライエントさん「たち」が、そのクライエントさんの「カウンセラー」の発言だと思い込むというところまでなら、健康な水準の人ですら陥る可能性の方がむしろ実は高いのではないか、という「想像力」がどうして働かないのかなあ、ということを一般論として書いたまでです。
ここまでなら、ネットをやろうという気がある人間なら働かすべき「現実吟味」の力だというのが、私「個人の」考えです。
少なくとも、私は、すべて見解が一致しなくても、何らかの意味で評価すべき点,情報源として優れていると感じたホームページやブログにしかリンクは張りません。そういう意味では、不器用なくらいに正直な人間ですので。
投稿: こういちろう | 2006/07/28 00:42
追伸です:
> 試しに、一回の面接料金6000円(内税!!)で、
> 更に所得税もきちんと納めるためには、週5日働くとして、
> 一回一時間として、一日「平均で」何ケース持たねば
> 経営が成り立たないか試算してみて欲しい。
> 月収手取り40万(ボーナスなし)相当とするために、
> でいいので。
ちなみに私は、少なくとも、40代前後までの方が「自宅で」カウンセリングルームを営むのは、そのカウンセラーが家族をお持ちであるか、独身であるかにかかわらず、避けた方が望ましいのではないかというのが「一般論」としての見解です。
(個々のケースによっては、これらのことが全くマイナス要因にならずに済むカウンセラーの方はおられると思うので、自宅開業を、私は即否定的には考えておりませんが)
.....ということは、「自宅」と「事業所」という、2件の家ないしアパート、マンションの部屋を、それなりに距離が離れた場所に確保することになります。
....ということは、少なくとも部屋代や光熱費、水道料金、電話代、インターネット料金などを、「2軒分」支払うことになるわけですね。もしオフィスが自宅から遠くにあれば「交通費」もかかったりする。
(もとより、これらのうちのオフィス関連はほとんどすべて『必要経費』で落とせ、還付があるるわけですね。心理学関係の書籍の購入や学会参加費・交通費・宿泊費すら「必要経費」!!
その他の日常的必要な業務の上での「消耗品」費用って何? となると、何とパソコンやFAXやカルテの用紙代、プリンタのインク代、トイレの消臭剤とトイレットペーパー代、若干の洗剤、季節の花を買い換える代金くらいですか。
大爆笑なのは、私がこれだけ力を注ぎ込んでいる、このブログの料金は、私がどれだけ文を書こうが書くまいが、月825円(だったっけ?)であることには変わりがないがないという事実!!
ちなみに、私がアフィリエイトやクレジットカードのポイント交換サービスを含む「楽天系」、およびリンクシェアとamazonで得られている「小遣い稼ぎ」総額は、まあ、一番多いときでも、まだ1万に乗ったことはないかな........ぐらいです。でも、これで、ispotと提携する以前の、ネットでの宣伝広告費のほとんどは、トントンにまかなえていました!!
これを首都圏郊外であるとはいえ、交通の要衝である大船駅から10分の場所で開業しているとすれば....ここまででだいたい20万弱で済めば相当ラッキー!! でしょうね。
それで、月収「所得税別」で40万、国民健康保険と国民年金、地方税、広告費(!)もその40万の中からきちんと支払うというシミュレーションなわけです。
夢分析を別にすると、私のカウンセリングルームの、一般面接1時間6000円というのは相当に安い設定です。
フォーカシングを「学びたい」という方、ケーススーパーバイスの方は、主体的に自分のスキルを高めたいという皆様ですから、これより少し高めの料金設定にしていますが、最高額コースでも9500円というのは、「首都圏では破格」の設定です。
本文では「週5日」と書きましたが、実際には土曜は月2回お休み、しかも、そのうちの週一日は、23区内での非常勤カウンセラーの仕事で、面接料金の歩合給「7割」プラス交通費が支給されます。だから、祝日や学会参加のために休む日=「出費だけの日」があるにしても、それらの日々はこの「週2回か3回は仕事としている日」の分に吸収されるので、週5日の試算が非常な現実性を帯びてきます。
23区どころか川崎市や横浜駅近辺でないとできない買い物は、その「1ヶ月に1日しかない第3土曜日の23区内での非常勤勤務」にとことん集約しています。大船駅のそばにはヤマダ電機大船店という、たいていの電化製品やパソコン関連商品が安く買える「大型家電店」あります。
だから、私は月に一度の四日市での研究会を除くと、皆さんが驚かれるほど、「大船の街の中でだけ生活して」おり、しかも交通機関は徒歩か自転車なんです。バスやタクシーにも滅多に乗りませんしね。運転免許も追っていない。
さあ、この辺を参考にして、一日何人面接する必要があるかを計算してくださいね。
もし、「各種コース取り混ぜて」、となるのなら、まあ、そんな無茶な数字は出ないと思いますけど。
私個人の現在の「具体的状況」に合わせて試算したら、
「各コース取り混ぜて、一日平均3人」
と出ました。(夜7時半開始の面接まで受け付けています)
意外と、平日の「昼間に」おいでになれる方も少なくないので、皆さんが想像されるほど。土・日に面接は集中しないで済んでいますが。
むしろ、なぜか、今のところ、日曜日「が」ねらい目ですよーーーー!と宣伝させていただきます(^^)。
11月に職業別電話帳に囲み広告が出たら、真っ先に埋まっちゃうかもしれないので。
当然、現状では、「平日の午後6時以降」がゴールデンタイムです。でもまだ空きがあります(^^;;;;;)
投稿: こういちろう | 2006/07/29 02:26
この、未だに反響が続く論考本文の久々のアップデートです。
第5版は、増井武士先生が、いわゆる「治療者の中立性」に異議申し立てをしている論考の中で、一般に手に入りやすいものを収録した「フォーカシングの展開」(伊藤義美 編)のご紹介の箇所のみのアップデートです。
ちなみに、増井先生がこの論考をおまとめになる上で、神田橋條治先生と中井久夫先生とのディスカッションから触発されるものがあったことが明記されています。
投稿: こういちろう | 2006/08/05 21:18