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2006/06/21

単なる「ロールプレイ」より効果的なカウンセラー訓練(第4版)

 カウンセリングを学ぶ人たちの入門期の実習として「ロールプレイ」というものがあります。

 これは、訓練生のひとりがカウンセラー役になり、もうひとりがクライエント役になって「模擬カウンセリング」をすること、と理解していただくといいかと思います。
 得てしてこれは訓練生同士がカウンセラー役とクライエント役を交換して行ない、終わった後で、お互いに感想を述べあうなどするわけですね。

 恐らく、カウンセラー養成のための研修機関や、講座や、臨床心理系の大学・大学院で、「ロールプレイ」をその課程に含んでいないことは、流派と無関係に決してないはずです。

******

 この「ロールプレイ」より遙かに強力な、カウンセラー訓練生への「傾聴訓練」の体系を、The Focusing Instituteが国際資格を認定したフォーカシングのトレーナーはトレーニングの際に教え、用いる技能を持っています(.....持っている「筈」です....)

 その代表的なものの一つが、

 "Focuser as Teacher"
フォーカサーリスナー・ガイド役指導者となる訓練法)

といいます。

Focusingworkbook
 詳しいことは、
例えば、
この著作に、
非常に行き届いた解説がなされていますが、以下、私なりに、この訓練の面白みを解説してみましょう。

*****

 フォーカサーがリスナー・ガイドの指導者になる!!

 これは、「クライエントさん」役が「カウンセラー」役の指導者として、しかも模擬面接のライブの中で刻々とコメントを挟んでいくことになります!!!

 フォーカシングは、もともと、いわばクライエントさんに当たる人が自分で自分に施す「セルフ・ヘルプ」の技能です。

 あるいは、少なくとも、一般の人が、日常の中で、フォーカサー役と、リスナー・ガイド役を、お互いに役割交換しながらフォーカシングができることをめざしています。
 これを、「フォーカシング・バートナーシップ」あるいは「フォーカシング・コンパニオン」といいます。

Focusing_hyoushi
「フォーカシング」(ユージン・ジェンドリン著)で述べられている通り、フォーカシングの創始者ジェンドリンがフォーカシングに抱いた夢は、フォーカシングを学んだ一般市民同士が、お互いにフォーカシング/リスニングをすることにより、世間のカウンセラーのかなりの部分は不要になり、「失業状態」に追い込まれる社会を作ることです!!

 ですから、フォーカシングのトレーニングとは、その人が、フォーカサー役とリスナー役、どちらをも、ある程度以上「自律して」発揮できることを目指す訓練であってこそ、はじめて意味があります。

*******

 つまり、ある程度フォーカサーとしてのスキルを自律して身につけた人は、自分自身のリスナー・ガイドにも、「一人二役」で、ある程度なれる人ということななります。

 だから、自分で自分のフォーカシングを進めながら、なおかつ同時に、ガイド・リスナー側に、その傾聴や教示の仕方についての「感想」や「修正意見」を提示するという、マルチタスク能力をすでに持っています。
 いわば、試合中のスポーツ選手が試合の実況のコメンテーターを同時進行させるということができるのです。

 例えば、

「今のあなたの伝え返しに対して、私は、リスナーとしてのあなたに、私の気持ちを十分汲んでもらえたと感じました」

「すみませんが、もう一度、今の伝え返しを、もう少しゆっくりと、繰り返していただけませんか?」

「私は、私の言ったことの中の『○○』という言葉を、あなたに、そのまま大事に伝え返して欲しかったんですけど。すみませんが、もう一度、『○○』という言葉を大事にしながら伝え返しをやりなおしていただけますか」

「この場面では、何も伝え返しはいりません。ただ、黙って聴いていてくださるだけでありがたいです」

今、私は自分でどうフォーカシングしたらいいかわからなくなっています。よろしければ、あなたなりに、この後どう進めればいいかのアドバイスとなる提案をいただきたいんですけど」

*******

すごい世界だ!!

とお感じの方もあるでしょう。

 でも、こうして、フォーカサーが「注文をつける能力」((c)田嶌誠一)を発揮してくれたら、リスナーは、フォーカサーの注文に応じていけばいいわけですから、実はなのです。

 同様に、実はここで"as Teacher"役の体験を深めた人自身も、それこそ、流派に関係なく、カウンセラー相手にクライエントとしてカウンセリングを受ける際にも、カウンセラーに、gentleな形で自分の意見を言う能力を獲得します。

 「あの、今、先生がおっしゃったことの意味がよくわかりませんでした。すみませんが、もう一度、少し別の言い方で伝え直していただけますか?」

 「先生、私に2分でいいから時間をください。先生がいまおっしゃったことについて、今、私の中でいろんな思いが生じています。それをじっくり感じて、言葉にできるようにするまで、しばらく沈黙して、待っていていただけませんか」

 こんなことを言い出すクライエントさんがいたら「厄介だ」と感じるカウンセラーや精神科医なんか、私は....(以下略)

     フォーカシングは、
     あくまでも、
     「フォーカサー中心の」技法であり、
     リスナーやガイドは、
     フォーカサーの求めに応じて機能する
     「サポーター」に過ぎない。

 これが、フォーカシングの根底に流れる理念です。
 

******

私のフォーカシング個別指導においても、私は、その人にある程度フォーカサーとしての力がついてきたと感じたら、何と私の「リスナー」になってもらうことを提案します。

   そして、
   フォーカサーとしての私が、
   ”as Teacher"として、
   もちろん、優しく、ですが、
   訓練生に、.

   「今の伝え返しは私の役に立ったよ」

   とか

   「ここでは、私の語った言葉の中で、
   『△△』だけを、もう一度投げ返してくれるかな?」

   などと指導していくのです。

*****

Interactivebooks
 なお、この、"Focuser as Teacher"を当然の前提として内に含みつつ、
更に進んだステップの訓練として、
「インタラクティブ・フォーカシング」があります。
著作はこちら

 そして、私も共同研究者をしている、「東海フォーカシング研究会」の藤嶽大安氏の「藤嶽法」もまた、相互傾聴訓練としてきわめて効果的です。

 なお、この、「フォーカシングの主役はフォーカサーその人であり、トレーナー(リスナー)はそのサポーターに過ぎない」という問題については、こちらに、更に過激な続編が、創始者ジェンドリン自身の著作からの抜粋を引用する形で展開されていますので、とうかお楽しみに!!

*****

なお、"Focuser as Teacher"については、こちらから、続編の掲載を始めています。

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コメント

 自己レス、更新通知です。

 第2版では、"Focuser as Teacher"を通して、フォーカシングが、本来、あくまでも「フォーカサー中心」の技法であり、「クライエント中心療法」のスピリットをもろに継承した流れの一つであることををより明確に説明する方向に改訂しました。

 更に、そうした流れの別の支流として「親業」が位置づけられる、ということにも言及しました。

 早くもマイナーアップデートです(^^;)

 フォーカシングを学んでいると、クライエントとして「他流派の」カウンセラーや精神療法家のカウンセリングやスーパーバイズを受ける際に、どのような形で、それらのカウンセラーやセラピストをを「有効活用」できるか、という、エグい実例を更に増やしました。

 これは、確かアン・ワイザーさんが「やさしいフォーカシング」の中で、独立した一章を費やして既にお書きのことがらです。

ジェンドリンが述べた事が理想ですよね、人間関係としては
カウンセラーの方々は、大変ですが・・・
しかしながら、カウンセリング等を必要とされる方の大半が聞き手となる事はある程度できても、自らの言いたい事を話すのが苦手、場合が多いのではないでしょうか
以前他の記事でも書かれていたかと思うのですが、クライエントさんはカウンセラーが相手でも恐縮してしまうぐらいですので

 コメントありがとうごさいます。

 ジェンドリンがここまで過激な理想を抱いていたことは、意外と知られていないでしょう。

 ジェンドリンの主著たる「フォーカシング」は、一般市民向けに優しい言葉で書かれたもので、原著は、アメリカでは、何と最初からペーパーバックで出版されました。

 でも、たいていのガウンセラーは、この本すら「通読」したことがないまま、一人の講師と数十人の参加者というワークショップに一回出て、かじっただけで「フォーカシングとはこの程度のものか」とわかったつもりになっていることが多いと思います。

 後半の話はごもっともです。私は、クライエントさんの方がカウンセラーに気を使い続けている現実告発したい。

 少なからぬカウンセラーは裸の王様だと。

 クライエントさんのそういう微妙な引け目とかを雰囲気で察して、適切な言葉かけをする「感度」を上げる上でも、流派に関係なく、カウンセラー自身が、まずは「一フォーカサーとして」「自分のために」、フォーカシングを学ぶことは、クライエントさんの「言葉にならない思い」を汲む力を高めます。

 このことは、精神分析の世界での日本での「神様」の一人、神田橋條治先生が、セミナーや著作の中で、ことあるごとに。しきりと吹聴してくださっているだけでも、感謝に耐えません。

 この、"Focuser as Teacher"とロールプレイの比較論も、たいへん多くの方にお読みいただき、感謝に堪えません。
 今回のはマイナー・アップデートです。この記事の続編にあたる、ジェンドリンの著作「夢とフォーカシング」での叙述の焦点を当てた記事への直接リンクを文末につけました。

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