面接中、クライエントさんは、カウンセラーに対して「感情移入的理解」を向け続けている!!(第3版)
このタイトルだけで、
............え? あ? ん?
ぎょええええええ!
と、一瞬の「沈黙」を経て、思えた人は、カウンセリングの基本的な勉強をなさった皆様です(^^)
一般の皆様向けに説明しますと、日本でカウンセラー教育の基礎の基礎として今でも、多くの場合、大事にされている(はずな)のが、来談者中心療法の祖、カール・ロジャーズ(我がフォーカシングのジェンドリンの「共同研究者」です)が言い出した、
「セラピーの三要件」
と呼ばれるものです。
......といわれて、さっと答えられない、臨床心理系の大学の、学部の2年生がいたらそいつはモグリといわれてしかたない。あるいは、よほどその大学の先生方のカリキュラム作りに問題があるはず、と断言します。
精神分析系、ユング系、障害者心理学系、家族療法系、行動療法系・認知療法系の先生が多い大学でも、入門の最初の基礎教養としては当然おしえてしかるべきはず。
*******
,,,,,,などど、一発挑発めいた言葉で、読者を引きつけといた上で、本題にもどります(確信犯)。
その、ロジャーズのいう、「セラピーの三要件」とは、
.
1.クライエントさんへの「無条件の肯定的関心(unconditional positive regard)」
2.クライエントさんへの「感情移入的(empathic)理解」
3.カウンセラー自身の「純粋性(genuinness)・自己一致(self congruence)」
のことです。
(ここまで読んでほっとした臨床系の学生さんの多からんことを。ちなみに臨床心理系の学部への編入試験や大学院受験をする人は、英語でも覚えておいてね。専門の英語の出題の論文の中であたりまえのようにさりげなく出るかも)
******
さて、今、ここで問題にしようとしているのは、この3要件のうち、2番目の、
「感情移入的(共感的)理解」
ですね。
ロジャーズは、これについて次のように注釈しています。
「ここでいう『感情移入的』理解というのは、あたかも(as if)その人(=クライエントさん)であるかのように、という状態を失わず、(いわばクライエントさんの感情に巻き込まれることなく)、クライエントさんのパーソナルな世界を、セラピストが感じようとすることである」。
これを、フォーカシング指向心理療法ふうにいいかえれば、
「クライエントさんが、自分で内側に注意を向ければ感じているであろう漠然とした曖昧な感覚(=フェルトセンス)は『どんな感覚』なのかそれ自体を、カウンセラーは『擬似的に』自分の身体で感じてみようとするようなつもりで傾聴すること。しかし、それを、面接のその場でカウンセラー「個人が」感じているフェルトセンスと混同せず、『感じ分ける』こともできなばならない」
となるかと思います。
(これだけで、
「あ、勉強になりました。フォーカシングとロジャーズ派カウンセリングの接点は「そこ」なんだな、とはじめて気づきました」
と感じていただける臨床系の学生さんや、勉強を深めておられる現場カウンセラーの皆様がおられると、私は光栄に思います。)
ちなみにここまでのことは、このブログで、「受容・共感と自己一致の相克シリーズ」という連作で、もっとかみくだいた言葉で書いてみてますので、その第1回はここからです(注:第2版までより一つ前の記事にリンク張り直しました。その方がわかりやすいので)ご一読ください。
******
さて、ここでもう一度、今回の記事のタイトルに戻りましょう。
面接中、クライエントさんは、カウンセラーに対して「感情移入的理解」を向け続けている
というのが、専門家が読んだら一瞬ぎょっとする「逆説」的問題提起だということは、これで、ある程度幅広い層の皆様にも理解していただけるかもしれません。
でも、よーく考えてみてくださいね。
面接の、少なくとも初期2,3回の段階で、
「相手に気を使い」、
「相手にどう思われているのかに注意を向けている」
のは、
カウンセラーと、クライエントさんとの、
どちらが強いでしょう??
おそらく駆け出しのカウンセラーの頃を別にすれば、たいていの場合、
クライエントさんの方が、
カウンセラーに『ほんとは』どう思われているか
に、戦々恐々としていて、当たり前だと思いませんか?
自分が本当は話したい悩みのことすら
「ここまで話したら、
さすがにカウンセラーさんにでも軽蔑されるかなあ」
とか、迷いつつ言葉を選んでいるでしょうし、
「あ、私の長年の『秘密』口にしたとたんに、
カウンセラーの先生の顔の表情が一瞬硬くなった。
やっぱり、こういう秘密を持つ私を、
カウンセラーさんは心の中で軽蔑し、
嫌悪を感じたんだろうな。
そのあとは、
いかにもにこやかに話を聞いてくれたけれども、
あの一瞬で、
もう、私は取り返しのつかないミスをした。
次の面接、何か理由をつけて断ってしまおうか」
こうして、その人は別のカウンセラーを捜し歩く日々をくりかえしていましたとさ。
.........などという例、多いと思います。
そういうふうに「人の顔色」を気にしすぎ、すぐに嫌われた、あるいは「傷つけた」と思いこんでしまうのが、そのクライエントさんの「病理(嫌な言葉ですが)」といえばそれまででしょう。
でも、そういう「被害念慮的な対人恐怖」を何とかしたいから、そのクライエントさんはカウンセリングの扉をたたいたはずです!!
*****
面接のさなかに、
「実は、先生は私のことを心の底では馬鹿にしているとずっとこれまで思って来たんです」
「前回、私は少し見栄を張って、『少し元気になった』と言ってしまったんです。私の中の、先生に褒めてもらいたい気持ちがそれを言わせたんです。だから面接から家に戻って、すごく落ちこみました。先生は、きっと、この前の私が、そうやって『無理して』元気なふりしていたの、実はその場で見抜いておられたようにも感じられてきて、また落ち込んで以前と同じに逆戻りした私をみて、『やっぱり無理してたんだね。仕方ないな。』といわれそうで、ほんとは今日、ここへくるのが怖かったんですよ」
..........みたいなことまではっきり言い出してくれたら、実は継続的カウンセリングとしては「第3クォーター」の深さまで進んで生じることが多いでしょう。
私は、こうしたことを語りはじめてくれたクライエントさんに、ある厳粛な畏敬と、感謝の念すら感じることがあります。
******
とにかく、敢えて多くのカウンセラーのみなさまにお勧めします。
日頃の面接の中で、
カウンセラーとしての自分の方が、
クライエントさんに「気を使わせ」続けて
いないかどうか?
....と、振り返ってみることを。
これだけで、「転移」「逆転移」とかの概念の「頭での」お勉強より、クライエントさんとの「関係性」の問題の本質的な核心に一気に気がつけるかもしれませんよ。
******
「面接の最中、クライエントさんもカウンセラーに刻々と『感情移入』している」
という問題について私が論じた初出は、
現代のエスプリ 410 「治療者にとってのフォーカシング」(伊藤研一・阿世賀浩一郎 編 )
所収の、拙論、
「クライエントの体験過程を抱える『容れもの』として機能する技法の試み」
にあります。
でも、今回の「二番箭じ」の方が、5歳経験を重ねた分だけ、問題の核心に要領よく迫れているかもしれません。
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