中島みゆき/予感(1983リリース)
この、通算10枚目(注参照)のアルバムで、中島みゆきの「第1期」が見事に終焉する。
前作、9枚目の
「寒水魚」は、確か1982年、アルバムとしては日本一の売り上げ枚数を記録したと思う。
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ここで、中島みゆきについて最低限のおさらいをしておこう。
ヤマハのコンクール(通称ポプコン)が発掘した、北海道出身、1952年生まれの、日本の生んだ稀代の女性シンガーソングライター。
桜田淳子の「しあわせ芝居」、研ナオコの「あばよ」をはじめとして、他の歌手への提供曲で大ヒットした曲も多い。くわしいことはWikipediaを参照ください。
私の声が聞こえますか
(1976年発売のファーストアルバムです。くわしくは後述するように、みなさんが耳になじんでいる、アコースティックギターのみの伴奏の「時代」は実はこのアルバムにでしか聴けない!! ちなみに、「時代」は、何と、彼女が高校の文化祭で歌った歌らしいので、恐らくその時のオリジナルに一番近い編曲のはず)
彼女の一つの特性は、「最初から、アルバムアーティストだった」という、恐るべき事実である。
つまり、シングル(EP)のヒット曲が2,3曲あって、アルバム(LP)発売の際にはその他の曲を「埋め草」的に作るという、当時の日本のヒット歌手の常識を根底から覆した。
(欧米では、逆に、最初にまとめて個々の曲でも大ヒット可能な曲をアルバム(LP)として先に発表し、あとで「ほとんど全曲」シングルカットすることもあるようだが。私のアナログ時代からの愛聴盤、
Billy Joelの当時の大ヒットアルバム"An Innocent Man"がそういう売られ方をしたのは確かである)
みゆきの場合、何しろシングルのヒット曲(たとえば「誘惑」)をアルバムに収録しないままということすらままある。そして、シングルのB面曲でアルバム未収録のも多い。
逆に、今日皆が思い浮かべる、あのギター伴奏の超ウルトラ名曲、「時代」は、前述のファースト・アルバムでの”リミックス・バージョン"なのだ(正確には、高校時代の「原型に戻した」というべきと推測できるのはすでに述べた)。
通算2枚目のシングル盤として実際に出たものは、今は
"singles"に含まれます。みゆきの
"Past Masters"です。
(.....で通じない人はビートルズを一から勉強してね!!)
このシングル盤の「時代」をラジオのリクエスト番組で下手に流そうものなら、
「何これ? これじゃないぞ!!」
と、リスナーから抗議の嵐が舞い込むことは、当時のラジオ局スタッフの常識だったと思う。
このシングル盤の「時代」は、ある意味でみゆきをどう売り出したらいいのかを「まるで勘違い」していたポニーキャニオンレコードの空前の大チョンボとして歴史に残っているのではなかろうか。
私のただの想像ですが、おそらく、デビューシングル、「アザミ嬢のララバイ」と、それに続く「時代」のシングル2枚を出した後、いざファーストアルバムを作る際に、みゆきが頑強に、アルバムバージョンのあのシンプルさじゃなきゃだめだ!! とゴネまくったのではないかとも想像する。
恐らく、あのアルバムバージョンが作られたから「こそ」、「時代」は、日本の歌の歴史に永遠に忘れられない名曲になれたのはまちがいない。
「編曲」だけで曲を生かすも殺すも決まる。このことをプロデューサーが認識していなかったために世に埋もれた曲や歌手は山のようにいると思う。
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ともかく、このファーストアルバムを聴くと、一方に、その後のみゆきからするとあまりに「初々(ういうい)しい」曲や、少なくとも編曲がミスマッチかなという曲が一部あるのは確かだが、みゆきが、フォークのみならず、ジャズやアメリカン・ポップス、シャンソン的なものなど、何とも広い範囲のスタイルで自在に曲を作れてしまうこと、そして、後にオールナイトニッポンのDJでも有名になる、あの「曲によって声色をまるっきり別のものにできる」希有な才能をすでに発揮している。
私の分類だと、「酔っぱらい無頼はしゃぎ系」「男勝り系」「透明系」「振られた女の泣き濡れ系」「つぶやき系」「カマトト系」等々、名づけたくもなるが、それをどう呼ぶかは別として、みゆきの声に幾つもの「モード」があることは、ファンの皆様、認めて下さるだろう。
いずれにしても、「私の声が聞こえますか」は、今の若い人が聴いても、
「こ、これがファースト・アルバムだったんですか?」
とショックを、いろんな意味で受けることは間違いなかろう。
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アナログLP時代は、せいぜい片面20分、両面でも45分どまりでしか収録できなかった(針が内周に進むほど音がひずみやすかったので、クラシックでのやむを得ない場合を除いては、片面30分収録なんて決してしなかった)。つまりひとつのアルバムは10曲がせいぜいだったし、「A面」と「B面」でひっくり返すことが「幕間い」のような意味を持つことを意識し、A面の最後をどのような曲で終わらせ、B面の頭をどの曲にするかまで、周到にアルバム構成を考えるのがふつうでした。
だから、CDになったら、「オリジナルのLPではここでB面にひっくり返していた」ということがわからないままアルバムに接することになります。
これだけでも、実は、CD世代は、「アルバムの構成そのものが演出だ」という感覚が希薄になってる気がします。欧米の、オリジナルジャケットも復刻したCDの中には、敢えて"Side A:" "Side B:"という曲の表記までそのまま復刻しているのがありますよね。日本ではほとんどないことです。
みゆきの「純粋アナログ」時代のアルバムは、ほんと、この、曲の配置や構成をどうするかへの神経の使い方が半端ではない。どのアルバムも、ビートルズでいうと
「サージェント・ペパーズ.....」みたいな「コンセプト・アルバム」です。
アルバム一枚が、見事な完結したドラマになる。
なのに、一曲一曲の水準が、
単独でも、もう「唖然とするほどに」高い!!
基本的に毎年1枚のペースアルバムを出しながらも、アルバム一枚のすべての曲が、他の歌手ならシングルとして発売可能だろうといいたくなる、当時のみゆきの創造性は異常なエネルギーがあったといわざるを得ない。
ファーストアルバムには、後のみゆきへのステロタイブな固定観念になった「振られた女の恨み節」タイプも何曲がある一方、「歌をあなたに」「海よ」のような、何とも初々(ういうい)しい曲も含まれる。恐らくアマチュア時代の早い時期の曲だろう。
だが「海よ」なんか、明るいメロディの中に、実はさりげなく、後のみゆきが「海」を題材にする際に繰り返す、人生の辛辣な現実と、「死」のイメージがすでに歌詞に読み込まれているあたりなど、結局、その後のみゆきの萌芽はすべてこのファースト・アルバムに含まれていたとも感じさせる。
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いずれにしても、アルバムCDではディスカウントして再発かけないのがポニーキャニオン→ヤマハの(み、みゆきの?)方針みたいなので、実はみゆきのCDはリマスタリングされないまま売られてるんですよね。今もみんな2700円のままです。
つまり20年近く前にアナログのマスターテープからマスタリングかけたままのが売られているんです。
初期(前述の、10枚目のアルバム「予感」までを「初期」と呼ぶことにします)のみゆきのアナログ音源のアルバムって、アルバムごとに、マスターテープの製造会社をみんな変えているんでないかというくらいに音のテイストがアルバムによって違います。
幸いなのは、前述のファースト・アルバムはかなり聴きやすい音質でまとまっていること。
5枚目の「親愛なる者へ」から
8枚目の「臨月」のあたりは、結構「曲者」の音作りです。
そして、アナログマスタリングの最後を飾る2枚のアルバムが、9枚目の「寒水魚」と10枚目の「予感」なんですよね。
この2枚は、アナログLPが出た時点で、この美しさとインパクトが共存した名録音と私は感じました。そのため、この2枚のアナログLPを、納得いく音で聴くことを基準に、当時の私はカートリッジ(アナログLPの針のついている部分のこと)を買いあさり、結局、オーディオテクニカのMC型の傑作で、何と今も製造されている(受注生産にハなりましたが)
AT-33のラインコンタクト針バージョンでないと駄目! という結論に達したのをよく覚えてます。
ちなみに、今回、敢えて、これまでCDからのロスレスコピーでiPodに入れてたのに加えて、何曲かiTunes Music Storeのダウンロード購入してiPodできいてみましたが、ロスレスコピーに負けない、いや、ひょっとしたらある意味ではもっといいくらいの非常に良心的なダウンロードファイルに仕上がってますよ。
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,,,,,,,,ここまでで、「予感」本論に入る前に、ファーストアルバム「私の声が聞こえますか」の紹介で、十分な長さになってしまった!!
以下、「予感」論は続編に続く!!


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●注●
みゆきのアルバムを「○枚目」と勘定する際に考慮すべきななのは、他の歌手に提供した曲を、みゆきが自分でセルフカバーした曲だけを集めたアルバム(例えば、
「おかえりなさい」)を「オリジナルアルバム」に含めるのかという問題が生じること。
私はこのタイプのアルバムを「オリジナルアルバム」と同列のものとみなし「○枚目」に含めることにした。
ただし、「大吟醸」と「大銀幕」という、純粋の編集ものは含めないこととします。
●蛇足●
私が、実はayuだけではなくて、みゆきにも「業が深い」つきあいをしてきた(?)ことがこれで一気に暴露ですね。
ただ、私は同時代的にみゆきを聴くことからは、アルバム「予感」の次の
「はじめまして」で終わってしまってます。
(この「はじめまして」も、頂点を極めてもなお、みゆきが自分を更にステップアップするという、ほとんどの歌手が超えられなかった壁に果敢に挑み、一定の成果を上げた、すごい水準のアルバム。
このアルバムからデジタルになります。しかし当時のCDプレーヤーは音が堅すぎた。そのことも、このアルバムで私のみゆき追跡が一度終わった一つの理由だったと記憶します、
最近久しぶりに聞き直したら、曲もみな思い出し、「す、す、すげえよ、このアルバムも」とあっさり思えてしまった)
かの有名な、新宿のシアターコクーンでやってた演劇的ライブ、「夜会」にも行ったことないですから、ほんとうのみゆきの長年ずっとのファンの皆様、若い人たち向けに書いてるつもりですので、多少どんちんかんなことを書いていてもお許しくださいね。
みゆきに関しては、ネット上の個人サイトの情報やカスタマーレビュー等の評論も、そのひとなりのみゆき観をしっかり言葉にした、読ませるものが多いですね。そりゃ、同時代ファンはもう40歳から60歳ですから、当然といえば当然でしょう。、
ayuの場合は、ほんとに質のいいものはなかなかないですが。
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