私がポラニーの哲学とフォーカシングを関連づけたきっかけ
やっと,ハンガリーのポランニ(ポラニー、ポランニーと表記することもあり)の著書、
「暗黙知の次元」への私の関心について、1からもう一度書く気持になりました。
実はこの関心は私の中でたいへん古くからあるもので、今を去ること15年前、1992年に刊行された「人間性心理学研究」第9号に掲載された、
「フォーカシングにおけるセラピストとクライエントの弁証法的相互作用について:技法論を越えた視点から」
という、私のたった2つしかない「学会誌原著論文」のうち、最初のもので、ポランニを引用して論じたものが、唯一公式に発表したものです。
(業績目録を参照下さい)
私がフォーカシングと運命的な出会いをしたのは1982年の5月ですから、もう25年、ちょうど四半世紀のつきあいになります(法政大学の学部を卒業した年の卒業直後の5月、市ヶ谷の法政の生協で、ということは、生涯忘れまいとずっと思っていたので、簡単に正確な年月が出てくるのです)。
ポランニとの出会いは、すでにフォーカシングと出会ったしばらく後、恐らく1985-86年頃、本屋でたまたま偶然に、上述の「暗黙知の次元」というタイトルが目に止まり、これはジェンドリンの体験過程理論と関係あるのではないかという直感で手に取った結果でした。
今はついていませんが、当時刊行の紀伊國屋書店の発行の訳本(訳者も違います)
(これ↓)
には「~言語から非言語へ~」というサブタイトルもついていましたし、
ジェンドリンの体験過程理論において、「暗黙の意味(implicit meaning)」と「明示的な意味(explicit meaning)」の相互作用というのが重要な鍵概念であることはすでに熟知していましたから、
「暗黙知」という言葉だけで思わず私のアンテナが反応して、それこそたまたま当時の紀伊國屋書店の新宿本店で、中身もめくらずにタイトル買いしたのをよく覚えています。
ちなみに、ジェンドリンの体験過程理論についての必読文献が、「人格変化の一理論(A Teory of Personality Change,原書1964)」であることはすでに何回かこのブログでも書いてきました。
この英語原典(後日その表紙をこで、例によってスキャナでご紹介します)の書籍としての入手はもはや困難になっていますが、幸いThe Focusing Instituteのwebsiteで、今もhtmlとpdfファイルの形で全文入手できます。
恩師村瀬孝雄による日本語旧訳も、websiteで入手できます。この旧訳の今も捨てがたいところは、ジェンドリンが「最終的には削除」した、フロイト、サリヴァン、ロジャーズの理論との比較論の長大な部分を、村瀬先生が敢えてお訳しになっていることです。website版にもそのまま収録されています。
話がわき道にそれますが、実はこの「最終的には削除された草稿部分」があるとないのとでは、ジェンドリンの体験過程理論そのものの「臨床的理解」に「雲泥の差」がでるはずの部分です。
ところが先に述べたinstitute公開のジェンドリンの原文でもこの部分はカットしたままなので、何と、この「草稿」部分に接することができるのは,現在でも、村瀬旧訳=日本語がわかる人だけなのです!!
(その草稿の部分を村瀬先生がジェンドリンにお返ししたのか、それとも日本のどこかにまだあるのかは、さすがに私も生前の先生にお伺いしないままでした。私もその現物は見せていただいたことはないままです)
ジェンドリンの英語は「ドイツ語で考えた英語」ですから、関係代名詞や、動名詞を正確にどう読み解くかにはかなり困難な個所も多いのですが、私は、研究対象としてフォーカシングにに関心を持つ臨床家は、「人格変化の一理論」の原文を、日本語訳と比較しながらでいいので、目を通すべきと考えています。
ちなみに、この村瀬旧訳が今日本で新たに中古書籍として入手可能かを改めて調べてみましたが、検索不能でした。
この村瀬訳は、若干の改訂の上で、

池見陽先生編・解説のジェンドリン論文集、「セラピープロセスの小さな一歩」に収録されていますが、前述のフロイト、サリヴァン、ロジャースとの比較論の部分は掲載されていないことが、私には残念です。
******
話がポランニから離れてしまいましたが、
ポランニにおける、
「暗黙知」
と日本語で訳されている言葉は、英語版では、実は
"tacit knowing"
なんですね。
ジェンドリンの体験過程理論における、
"implicit meaning"
とは全く異なります。
しかし、やはり、理論的にcrossingさせると、興味深い共通項がやはり浮かび上がります。
このあたりについては次回、解説することにします。
*****
なお、なぜ私とポランニ哲学の出会いが1985-6年と「推定」したかと言いますと、
ジェンドリンの2回目の来日の際の東京・中野サンプラザにおけるワークショップが、1987年9月であり、その時、私はジェンリンに直接ポランニの哲学についての見解をお尋ねしたかったのですが、
当時の私は小心者過ぎて、
結局、この数日間のワークショップで彼と出来た会話は
「エレベーターはどっちだ?」
「この階の向こう側のロビーです」
だったことを何年も後悔していたからです。
(え? 今の私からは想像できない?
ただの大学院マスター1年目でしたから)
****
ちなみにこの時のワークショップ全体の記録は
として出版されています。
巻末に掲載された、ジェンドリンの奥様、メアリー・ヘンドリックス先生による、
「治療変数としての体験過程レベル」(大田民雄訳)
は、カウンセラーの皆様におすすめの論文です。
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