「わらしべ長者」と「下克上」の時代
さて、ここからはじまった、「わらしべ長者」論の更に続編なんですが。
私の、高橋留美子を通してのayuとの出会い、という方向に前回は力が入りすぎましたので、
もう一度、この昔話そのものに立ち返って、私なりの、「こうも解釈できる」というあたりを述べてみようかと思います。
********
ころんだ偶然に手にしたわらしべを、ないがしろにせずに、「いじくりまわして」いるうちに、これまたたまたま回りを飛んでいてうざったかったあぶをく繰りつけて振り回し、それを牛車に乗った子どもが欲しがり、みかんと交換して.....と。ある意味で成り行き任せを重ねて行くうちに、本人も思いもよらなかった長者になりわけです。
前回までは、その「偶然の積み重ねの、成り行きに身を任せる」態度を、目標を目指して効率優先で脇目も振らずにがんばっては挫折するパターンを持つ人間に欠けた「何か」を示唆しているのではないかという観点から見ていったわけです。
今回は、この主人公の別の側面から光を当ててみます。
*******
観音様のお告げは「まず最初に手にしたものを大事にせよ」というだけで、それをほしがる人とどんどん物々交換していけ」などとまではいっていない訳です。
文字通りに「大事にせよ」というだけなら、牛車の子供がそれを欲しがった時に、みかん3個とはとりかえないままにすることのほうが、観音様のお告げに従うことだったはず、とも解釈できます。
しかし、かれは、その段階で自分の「唯一の所有物」であるわらしべを、子供にくれてやる決断をした訳ですね。
その後も基本的に同じパターン。反物の時は3つの中でひとつだけで馬と交換して、残り
2つで装束を整えるという知恵を発揮してますけど、それを除くと、ともかくその時点での所有物すべてを相手に提供するという態度で基本的に一貫してます。
しかも、相手がその代償として提供するものを断りもしなければ、逆にそれでは足りないと駆け引きすることも一切ない。遠慮がないとも言えますが、「ありのままに」受け取るのみともいえます。何の計算も入ってないんですよね。
何の計算も入ってないまま、それを欲しいという人が現れた時、はじめてすべてを差し出す。そしてその代価をありのままに受け止める。
ある意味で「欲がない」というか、「執着」というものがない。自分からは何ものかを欲しがろうともしない。
その点からすれば、実はこの主人公そのものが「仏様」の境地にあるとも言える気がします。
:******
あと、この説話の時代背景を、勝手な思い込みで考えてみました。
この話、封建制度ががっちりと機能している、江戸時代以降に時代設定すると成り立たない面がある気がします。むしろそういう制度のたがが緩んでいる時代。
牛車というものがいつごろまで貴族階級に使われたのかわかりませんが、あえて時代設定すれば、応仁の乱の室町後期から戦国時代ではないかとも思えます。物々交換でばかり話が進むのは、貨幣というものの信用がまるでない時代と想定できます。
そして、最後に「戦に出向くために」馬と領地を交換する武士というのも、江戸時代の幕藩体制の元では考えにくい話で、「どこかの領主に自分を売り込み、戦いで手柄をたてて一気に成り上がろう」と考えていた、ごくごく小規模の領地しか持たない貧しい武士だったと想像できます。
主人公はその小さな領地に満足し、そこをまじめに耕す中から得られた利益で満足していた。幸い、領地争いの戦とも無縁な、地政学的にも地味な土地だったんでしょうね。だから「長者」といっても、ものすごいお金持ちではなくて、せいぜい村の庄屋さんとして土地を貸した小作農からの上納米をもとに取引できるぐらいの収入が得られたので、一般の百姓よりは1ランク羽振りがいい、それ以上の欲もなかったのだと思います。
恐らくこの時代、領主が誰かもはっきりせず、それこそ
映画「七人の侍」のように、野盗や山賊まがいの支配者が、武力で兵糧や若い女を略奪し、一つ間違えば、丹誠込めたせっかくの田畑が戦場として踏み荒らされる、ある意味でまさに「わらにもすがって」いないと、明日の生活がどうなるかもわからない中で、土地に縛られずに、臨機応変に刻々と変わる現実を受け止めて生き延びた風来坊の中に、むしろ本人も予想していなかった「階級上昇」を果たした連中も、少ないながらもいたのだと思います。
*****
私たちは。今の現実が同じように明日も続くという前提に立って、今の経済や社会の継続を前提にした「長期的計画」のもとにやっていることが多すぎるのではないでしょうか。
敢えて言います。
明日地震がきて、自分が死んでしまっても、悔いのない人生、生きてますか?
*****
死ぬまでに、『七人の侍』と
『ローマの休日』だけは観ましょう!!
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