あの日にかえりたい 〜果たして、ユーミンは「明るく」て、みゆきは「クラい」のか(ひょっとしたら「その1」)〜
どっちかというとみゆき党で、ユーミンの方は「荒井」時代をほとんど知らず、いきなり、
"REINCARNATION""VOYAGER"
"NO SIDE"
とアルバム3枚を学生時代にリアルタイムで買って、その後も詳しくは知らないという私なんです。
この3枚、プラス、
「荒井」時代のシングル全集
を繰り返し聴くうちに、
「みゆきはクラくて、ユーミンは明るい」
という、ありがちなイメージに何か凄い違和感が出てきました。
このことについては、時を置いて何回かいろんな観点から書きたくなる気もするし、"My Favorite Disk"の方でもこれから書くかもしれないけど、とりあえず書いてみたいことを、まずはユーミンの方から書いてみます。
******
この歌、「調布基地」から、恐らく遠く見積もっても八王子インターまでという、ひどく短い距離しか情景描写されていないことをどのくらいの人が意識しているだろうか?
八王子といえば、学生時代のユーミンが住んでいた土地である。つまり、どこまでも「彼氏に家まで送ってもらっている」歌なのだ。
そして2番の歌詞になると、唐突に、
> この頃は ちょっと冷たいね 送りもせずに
となる。1番の歌詞とさりげなく「時制がすり替えられている」のだ。
つまり、曲が終わってみれば、「中央フリーウェイ」で彼とドライブしたのは、すでに「過去完了」の「思い出」の歌」というふうになってしまっている!!
*****
次に。私が個人的に、シンコペーションが効いたリズムに乗ったメロディラインが大好きな「川景色」("REINCARNATION"収録)を取り上げよう。
まるで、この時のことがすべて過ぎ去ってから振り返っていることであるかのようにも誤解させる「現在形」と「過去形」の微妙な混用。
> 恋が消えてしまったら この景色も消えるから
まるで、「どうせこの恋も終わる」とすでに決めてかかり、だから「今の」この瞬間を楽しんでいる、ということを「自覚して」しまっている。
これじゃ心の底では不安を実感してしまっていていて、「今」に刹那的に浸りきれない「脱同一化(disidentification)」された「もう一人の自分」の醒めたまなざしが絶えずそこにあるということではないか。
> 流れが音を立てて 足元を危うくする
などというあたりも、この恋そのものの危うさ、儚さの詩的隠喩といえるだろう。
もし、こうした次元での「詞の深み」に、むしろ「大人の女」(人によっては逆に「大人になりきれないモラトリアム少女」などと言い出すかもしれないが)を感じて、自分の恋愛体験と重ねて、深く共感して、ユーミンを愛している層がかなりいるのだとすれば????
もしそうだとすれば、男たちは、結構鋭い刃物を陰で突きつけられながら「にこにこ笑っている」ユーミン好きの彼女の外面にだまされている、「懲りないやつら」と言えるかもしれない
***
以前、「天気雨」
について紹介した時の、鉄ちゃんならではの分析は該当ページの終わりの方を参照してほしい。
いずれにしても、この歌、茅ヶ崎で彼とはじめて合流する「おしかけデート」の歌であり、「クールな彼」に気持ちがほんとは通じていないのを「顔で笑って心で泣いている」=「天気雨」の歌なのである。
****
このように見てくると、
「決してこの恋は報われない」
という強迫観念に近いものが「荒井」由美時代の「後期」から実は執拗に繰り返し歌われていることに気がつく。
そのもっともストレートな表現の曲が、ユーミンの不滅の代表曲である、
であり、
> 次の夜からは欠ける満月より
> 14番目の月が一番好き
そして、松任谷プロヂューサーとの結婚を機に、「荒井由美」卒業、引退も考えていたという、「ひょっとしたら最後の曲になるかも」
という深い思いの中で作られた
で、なぜか
> 輝きは戻らない
> 私が今死んでも
という、荘厳なまでの超傑作の「別れの歌」となってしまっている、ということにもつながるのである。
ユーミンにとって、結婚という「満月」に達することそのものは、それまでの自分全体の「死」の危険を犯すことでもあったのだろう。
幸い、ユーミンの真の円熟期は、そのもう少し後の「松任谷」時代にあらわれた、最初に述べた3枚という気が私はするのだが。
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