音で「見る」こと ~「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」体験記~
実は予約していた竹節さん(先日当ブログへのコメントも下さったので、お礼を込めて名前をお出しします)が急用で出られなくなったとのことでしたので、入場券を譲っていただき、本日、広尾のドイツ大使館となりで開かれている「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」に、事前にその日の仕事の予約は入れないようにして、行ってまいりました。
これは、真っ暗な部屋部屋を、視覚障害者の方の案内で、杖を頼りに約1持間巡り歩き、いろんな体験をするというもの。橋や階段があったり、ホーム際の点字ブロックがあったり、ついには真っ暗闇のバー(当然、注文に応じる人もみんな真っ暗の中で作業してます)で乾杯までするという、アトラクション性を持たせた、視覚障害者の体験世界を疑似体験する啓発的な場を、一般の人たちにも幅広く体験してもらおうという企画で、今や世界のあちこちで開催されているようです。
関西地方で開催された際参加されたフォーカシング仲間が、いろいろご自身の体験をfocusing-netで書いてくださっていたことが予備知識的にも幸いしたのでしょうが、ほとんど何の当惑緊張ももなく、さらりと体験できてしまったのには自分でも驚きました。
私が興味深かったのは、結局何より耳のステレオフォニックな反響音がたよりになるということ。人がどっちを向いて話しているかもちゃんと聴覚的に感じられるし、杖というのは、床の状態や段差を測るためというより、自分で杖を突く音を響かせることによって、その反響から残響から空間の大きさや広がりを、まるで「目で空間を測定するように」体験できるということでした。
普段からそれなりに凝った装置で音楽を聴きなれていることで「同相」の音と「逆相」の音(FMでスピーカのとかのザーという音を流して片チャンネルの端子をブラスマイナス逆ににつなぎかえると容易に体験できます。要するに片方のスピーカーが同じ音を1ミリ前に張り出して鳴らしている瞬間に、反対のスピーカーは逆に1ミリ後ろに引っ込んで鳴らしている。これは音の定位を独特の形で歪ませ、不自然によじれた音空間を作ります。自然音もあちこちに反響する中で「逆相」成分が生まれます))が入り混じり反響する中に生じる「空間プレゼンス」に敏感になっていたのも幸いしたかもしれません。
間に人が立っていれば、音は単にソフトになるばかりか、ちょうど人間サイズの独特のやわらかい音響吸収・反響体の両側から「回りこんで」来るのが、壁との反響の関係で聞き分けられます。
においにも自然と敏感になりますね。
また、フォーカシングになじんでいたせいでしょうか、「身体内部」感覚がもともと鋭くなっていて、自分の手足や指が今どこにあるのか、全く外れないのです。
たとえば暗闇で杖を持った右手の人指し指に左手の親指をくっつけようとしても全く期待通りの場所にくっつけられます。グラスを口元に運ぶのにも全く狙いが外れず、中のジュースがどれくらい傾ければ開けた唇にどのくらい流れ込むのかも完全に掌握できました。
中にはグラスを歯にぶつけたり、鼻に流し込んでしまおうとした人もいたようですが(^^;)
というわけで、フォーカシングなじんでいる人は、「身体内部感覚」に敏感な分、目が不自由な皆様の感覚の仕方に一般になじみやすいのでは、という仮説すら立てたのですが。
ともかく、面白い体験でした。視覚障害者の方は「たいへんだなあ」というより、目が見える私たちと違う形で、周囲の世界を鋭く体験し、視覚という「意味情報」に依存しない分、世界を『濃厚』に「身体で」浸って味わっておられるのではないかとすら、感じました。
我々にも、目を頼りにしている分、普段は味わい逃している「豊穣な体験世界」が、実はいつも自分を包んでいるのだと。
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