相談に来た方の話を「受容しよう」と「がんばる」ばかりのカウンセラーの弊害
特に、カール・ロジャーズのクライエント中心療法的なカウンセリングの教育を受けたカウンセラーの陥りがちなジレンマは、
クライエントさんを受容しよう、しようと「がんばる」
ばかりとなり、
クライエントさんを「受容できない」カウンセラーとしての自分を、まだ「未熟だ」と責め苛(さいな)む悪循環にはまりやすいことです。
これが、もともと、他の人の顔色を伺い、本音を出せず、自分の気持ちを押し殺して順応する傾向が強かった人がカウンセラー修行を始めた場合、どうにもならない行き詰まりを生み出すことがあります。
私は、
カウンセラーの、クライエントさんへの共感的理解とは、『努力』して『達成』するものではなく、
カウンセラー自身が、
ありのままの自分=ありのままの「世界」
に開かれていれば、『向こうから自然とやって来る』ものではないか
と感じ始めています。
*******
このように言うと、少しカウンセリングを勉強した人だと、
「受容、共感だけではなくて、カウンセラーが「自己一致」していること、
つまり、自分の経験と感情に開かれた、自分に正直でいられることと両立しないとならない、
とは、ロジャーズが「治療の3要件」として述べている。
そのことでしょ?」
とお感じかもしれません。
なるほど、私は、これまで言い習わされてきた言い方で言うところの、
「カウンセラーの自己一致」
と「共感」「受容」のジレンマという問題について述べているつもりです。
では、現実のカウンセリング場面で、カウンセラーとしての「あなたにとって」、自己一致する、とは、どのようなことですか?
例えば、クライエントさんの語ることがあなたにとって不快なときに、
「あなたのそんな話を聴いていると嫌な気分になります」
と告げることですか?
それをやったら、今度は「受容」の方の条件が満たされなくなりますよね?
「自己開示」
という言葉が最近安易に使われる傾向がある気がします。
私がこの言葉がうさんくさくて大嫌いだ、ただの美辞麗句に過ぎないと感じているあたりは、
「私のフォーカシング」第1部最終回でも書きました。
> 石が『自己開示』しますか?
> 空の星が『自己開示』しますか?
などという挑発的な言い方で。
ひとは「そこにーいる」というだけで、すでに自分の存在を世界に曝(さら)しています。
これは先日、心理臨床学会での青山学院大学の北村文昭先生の「カウンセリングにおける身体性」と題するご発表で、アフォーダンスと関連付けて述べられたことを会場で聞かせていただいた私が報告した時にも、北村先生自身のご発言からを引用したとおり、
「『非』言語的コミュニケーション」とは、ほんとうは「顛倒した」言い方であり、「身体性を持ってそこに存在し続けている」カウンセラーとクライエントさんが、まず先に「そこに-共にーある」。
ここからは私の感想も入りますが、カウンセラーとクライエントさんの「言語的相互作用」なんて、その身体性の上に「乗っかってる」やり取りに過ぎないわけですね。
敏感なクライエントさんは、カウンセラーの語る「意味内容」と、声の調子やそぶり、漂わせる雰囲気が「一致していない」ことを、何となく察知しているものです。
もとより、クライエントさんによっては、すごい、歪曲された形でそれを「意味づけ、カウンセラーの『本心』を決め付けてくる」ことも多いのですが、それはクライエントさんの生育暦や素質のせいばかりではなく、その火種は、必ずカウンセラー自身も、たいてい「見え透いた、形だけの、薄っぺらな受容」という形で蒔いています。
私は、クライエントさんが、えらく根の深い、ある種のボーダーライン性や妄想性を持つ場合は、「薄っぺらの」受容、あるいは「無理を重ねた」受容しかしなかった「歴代」カウンセラー、精神科医によって、「引き出され」、「増悪された」繰り返しの結果の可能性があると思います。
だから、私は、みゆきの
「空と君のあいだに」を引き合いに出して、
> 君の心がわかると、たやすく誓える男(=カウンセラー)に
> なぜ女(=クライエントさん)はついていくのだろう、そして泣くのだろう
といいたくなるわけです。
*****
では、私の考える、実際の臨床現場での、真の「受容・共感」と「自己一致」との共存とは何か?
それについては、続編で論じます。
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