アフォーダンスと洞察の接点
再び心理臨床学会の興味深い報告より。
仁愛大学の駒米勝利先生(ロジャーズ派カウンセリングについての研究と大学学生相談の世界で著名)を座長とし、
青山学院大学の北村文昭先生の「カウンセリングにおける身体性」と題するご発表。
北村先生は、本来実験心理系の研究者で、臨床にも長年携わっておられた、キャリアのある先生ですが、何と心理臨床学会でははじめてのご発表!!
認知心理の世界では有名な、ギブソンの「アフォーダンス」という概念をキー・ワードにして、できるだけ従来の臨床心理学のの専門語を使わず、とことん「ご自身の言葉で」事例報告を発表をなさろうという、論文集の文面に私はいたく共感し、この、一見別次元の「アフォーダンス」概念と臨床との出会いについてのご発表に出席することに「チャレンジ」したのです。
実は、私自身が、以前精神分析対象関係論で特異な位置にある、ハンガリー出身のバリント(左のブックレビュー参照)の「フィロバティズム」概念とフォーカシングの関連について人間性心理学会で発表したとき(私の著作・発表リスト参照)、姫路獨協大学の實川幹朗先生から、突然この「アフォーダンス」との関連について質問され、うまく答えられずに、その後自分なりにアフォーダンスについて調べたけど「腑に落ちる」に至らなかったという経緯があり、そのとき以来ひきずるモヤモヤを、この先生の発表が解決してくれるのではないかという期待もあったのです。
それは見事に当たりました!!
アフォーダンスを、理屈だけできくと、たとえばこんなふうになり、よくわからなくなってしまうのですが、例えば、真ん中に消失点のある4本の放物線を結ぶかのように大小の長方形を重ね書きすると、人にはそれが「奥行きのある通路」のように知覚されます。この図版を大スクリーンに「傾けて」表示すると、それに伴い人間の身体的重心の安定度が失われることが重心計で確認できるそうです。
これと同様に「社会的アフォーダンス」というものがあると北村先生は考えました。人間のコミュニケーションは、実は非言語的・身体的な次元での相互認知による次元こそが基本にある。「『非言語的』コミュニケーション」という表現そのものが実は「倒錯した」用語法であり、言語的コミュニケーションなど、実は身体的コミュニケーションの上に乗っかっているものに過ぎない。
クライエントさんと、カウンセラーが、身体性をもって「そこに確かに居続けている」という基盤の元になされる身体認知的な相互作用こそ面接の基本にある。
そして、身体が表現しているものと、言語的な相互作用に一種の調和のようなものが相互に承認(compliment)された時、カウンセリングでも「おのずから」相互理解が進展する。
このことの説明を受けた瞬間、ギブソンの古典的な立体透視図版が、私には「ほこら」のように見えました。
「ほこら」=「洞」、つまり「洞察」であり、「見通し」が持てること、
です!!
実際、いわゆる「病態水準の重い」クライエントさんと面接していると、クライエントさんの「身体言語」と、「言葉として発している意味内容」のズレに、私たちカウンセラーは翻弄されます。
死にたくなるような傷つく経験をしていることを「言葉では」語っているのに、表情や身体のかもし出す雰囲気は「けろーっ」と、何でもないかのよう。摂食障害やリストカッターの女の子に多いですね。
おいおい、そんなにけろっとしてるから、男たちや周りの女友達はあなたが傷ついていることに気づかないで、ひどいことを平気で無神経にするんだよ、といいたくなる。
ふっと、そんなことを思い出させてくれました。
實川先生、やっと、先生が、バリントのいう「魚にとっての水になる」ということとかと、「アフォーダンス」概念をひきつけたくなったのが、「少し」わかったような「気がしました」。
(これこそ「錯覚」かもしれませんが(^^;)
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