5分診療の神経科・心療内科の現実といかに対処するか
昨日の「欝」についての記事は、どうも当ブログ始まって以来最大の反響を呼んだようで、upした直後から現在まで、記事数の多い私のブログの中で、シェア4分の1近くを占め続けています。
「働け過ぎ」(誤字ではありません)と欝の問題に、どれだけの方が身近な切実な問題として直面しているのか、伝わってくる思いをさせていただきました。
そこで、もうひとつだけ、現場カウンセラーとしての私の本領発揮の、でも、あまり話題にされず、しかしこの問題で悩んでいる人が多い話題を書きます。
******
地域のたいていの開業医は、待合室に十数人の患者さんが寿司詰め、お医者さんと話ができるのは数分間という状況で運営されています。
これは、精神神経科や心療内科でも同じことでして、
カウンセリングに来る方から「通っている病院では十分話を聞いてもらえないから、ここに着た」という話をよく聞きます。
実は、病院でのカウンセリングの「保険点数」はきわめて低く、それで2,30分も保険診療の枠内で一人の患者さんにかけていたら、病院の経営が成り立たないわけです。
仮に、そのクリニックが別にカウンセラーを雇っていても、実はカウンセラーを雇う経費という点だけからすれば赤字になるのを覚悟で雇っているところが多い。
******
そこで、日本では、現実的には、医療とカウンセリングが「別の場所」となる役割分担と相互の連携が必要なクライエントさんがたいへん多いはずということになります。
しかし、こうした「通院中のクライエントさんに、カウンセラーがどういうサポートができるか」という問題について、本当に徹底した議論がなされてきたとは私には思えません。
薬はお医者さんに任せ、カウンセリングするだけ、
大変になりすぎた時だけ、「お医者さんに『ゆだねて』しまう、
といったことが、まだかなり多い気がします
(ちょっと皮肉を込めたつもりですが....)
カウンセラーは、単に5分診療のお医者さんに話せないクライエントさんの、もっと話したい欲求を「埋め合わせる」ためにのみ機能すべきではないし、
かといって、反対に、単なる「カウンセリング」や「心理療法」をする存在にとどまってはならないと思います。
*****
敢えて結論から言います。
そのお医者さんとの「5分間」でクライエントさんが何をお医者さんに伝えると「効果的」かについての「コーチ」役、
ということがまだ忘れられてはいないでしょうか。
何しろ50分から1時間の話をクライエントさんから聞けるのです。一見主訴とは関係なさそうな話題をクライエントさんは山のように話しているはずです。
(いつも主訴に関わる話題だけになるクライエントさんとしか会っていないカウンセラーは、クライエントさんにひどく窮屈な思いをさせて、「カウンセラー中心療法」をしているのでは? と疑いたくなります。
そうした中で、クライエントさんは、カウンセラーがクライエントさんの「状況を俯瞰して」みる限り、もしそのことを医者が知らないままとすれば、あまりにもったいない、といいたくなる話を、なんともさりげなく始めたりします。
クライエントさんご本人も、それが自分の主訴の治療に関係ないとすら思っている場合の方が多い。
例えば、うつ状態の改善をめざして通院しつつもカウンセリングに通っている患者さんが、
「実は一緒に住んでる母が、今度入院して手術を受けることになったんです」
「実は親父がリストラで会社を首になったんです」
などという話を、何かのきっかけで話したとします。
「それ、あなたの会っているお医者さんに伝えた?」
というと、
たいてい「いいえ」といわれます。
回復期の欝の人に限らず、およそ通院が必要な水準まで心の問題を抱えている人は、それを支えている家族の他の誰か一人が家の中で機能しなくなるとか、「実家の」経済基盤に大きな変化が生じるというだけで、実は相当なストレス要因、あるいは「余裕の喪失」を抱え込むことになります。薬がそれに応じて変更されたとしても何もおかしくありません。
あるいは、精神症状と一見無関係な一見些細な身体症状の変化。
「風邪を引いて2日仕事を休みました」
「最近下痢が増えました」
とか。
私は、こうした時、よほど特別な場合を除いては、お医者さんに宛てて「○○クリニック ○○先生 御机下」に始まる「公式の『経過報告書』」を書いて、クライエントさんに持たせるということもしません。
「1.○○○があった
2.△△△になった
3.身体の調子が□□□だ
この三点だけは、「絶対」、今度お医者さんに会ったらお伝えするようにしてね。
私は医者じゃないから、確言できないけど、ひょっとしたら薬の処方とか、変わるかもよ」
念のために、それらを箇条書きにして「メモ用紙に」書いたものと、私の名刺一枚を、クライエントさんに渡して、
「お医者さんに渡してね。お医者さんが、私からもっと詳しい状況を聞きたければ、『いつでもお電話下さってかまいませんと、カウンセラーが言っていました』とも伝えてもらってもいいから」
ということまですることもありますが。
******
私は、特別な場合を除き、こうしたことをお医者さんに伝えることを、クライエントさん本人に委ねます。
カウンセラー自身が、クライエントさんの許可を受けた上だとしても、クライエントさんの「頭越しに」医療機関へと連絡を取るのは、ほんとうにこのままでは本人の心身に多大な悪影響が出る可能性が高い水準の「危機介入」が必要な場合と考えています。
もっとも、本人があまりに心細そうだったら
「あなたの了解の下に、お医者さんに電話を入れてもいいよ」
とも、わりとあっさり応じますが。
(もとより、カウンセリングのはじめに、通院していると知った時点で、「カウンセリングを始めたことは、お医者さんに伝えて欲しい」とは、名刺を渡して必ず言い添えています)
*******
こうしてお医者さんの「5分間診療」の密度を上げ、
「そうか、こんなことをお医者さんに伝えればいいんだ」
ということをクライエントさんに「身につけて」もらう為にも、
ほんとは、こんなふうな、
「コーチ役」、
カウンセラーにとって、大事な役割だと思ってます。
これは、そんなに高度な医学についての専門知識がカウンセラーになくても、できる筈のことです。
ちなみに、カウンセリングを始めてからお医者さんを紹介する時は、原則的にきちんとした『紹介状』を書きますよ。
(すでに信頼関係と過去の実績があり、紹介状なしでもそのクライエントさんに間違いのない対応をして下さる確信が私の中にある、ほんの2、3の開業医の方を除いては)
クライエントさん本人にも読んでもらい、納得してもらえる形でのものにします。
*****
【追記】
私が実際の開業心理臨床の現場で、通院中のクライエントさんのために、いったいどのくらい、精神医療との関わりについてのサポートをしているのかについての具体例を、次の記事で詳しく書きました。
●薬をやめることをお焦りにならない方がいいですよ(当サイト)
よろしければ、ご参照ください。
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