Interactive Focusing Therapy(第4版)
ジャネット・クライン著
Interactive Focusing Therapy
「インタラクティヴ・フォーカシング・セラピー
カウンセラーの力量アップのために」
が、やっと出版されたとのことです。
このホームページではこれまで言及しませんでしたが、従来のフォーカシングの応用形として開発された、Interactive Focusingには、大変興味深い点があります。
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まずは、インタラクティヴ・フォーカシングそのものについてご紹介させていただく前に、「通常の」フォーカシングの場の構造について説明させていただきます。
普通のフォーカシング・セッションだと、自分の中の曖昧な感じ(フェルトセンス)にぴったりの言葉やイメージを見つけるのはフォーカサー(自分の内面に触れ、フォーカシングをするその人)自身なんですが。リスナーないしガイドは、そのフォーカサーの話を傾聴し、共感的な伝え返しをすることと、教示をフォーカサーに提案することが役割として固定されたまま、1セッション」を通して行います。
セッション時間は、(15分、30分、45分、成り行き任せ(^^;)など、その場の状況にあわせて自由に設定可能。少し慣れてくると、短いなら短いなりに、まとまったセッションとして体験できるスキルが身につきます。
その人の内面が深い問題を抱えている場合には、45分などという長い設定時間の方がいいかもしれませんね。しかし、時間の設定を「ある程度」事前に明確にしておく方が、面白いことが起こる場合もあることは、この記事でのセッションの実例で、お分かりですよね(^^;))
フォーカサーがA、リスナーがBだったとすると、この後で、「役割交換」して、フォーカサーがB、リスナーがAという形でセッションを進めることができます。まるで野球の「表」と「裏」、昔のアナログレコードやカセットテープのA綿とB面をひっくり返すようなものですね。このような役割交換を自在にできる関係を「フォーカシング・パートナーシップ」あるいは「フォーカシング・コンパニオン」といいます。
そして、まさにこのような、リスナーとフォーカサーのどちらの役割も取れるスキルを同時に磨いていくことが、フォーカシングの学習の基本形なのです!!
つまり、フォーカシングのスキルを身につけたものが仮に集団として10人いるとすれば、その10人同士が、双方の合意が成立したら、全く自由な組み合わせで臨機応変にセッションを持てる状態が理想とされているのです。
中には、他の2名のセッションをただその場にいて共有する「オブザーバー」もいる3人組、4人組がいて、順送りに役割交代したりしてもいいし、ずっとオブザーバーで通したい人はそれでもいいでしょう。中には、その場の中でひとりフォーカシングを始める人がいてもいい。極論すれば、これらのいずれもしないまま、他の人たちのセッションは邪魔しないで、「何となく」そこにいる「だけ」の人だっていてもいいと思います。
そうやって、フォーカシングの「専門トレーナー」が全くグループにいなくても、その時集まったフォーカシング・ピープルが、自由に相手を選んでフォーカシング/リスニングをお互いにできる、とか、プライベートに会ったり、電話やデジカムなどを通して、双方の折り合いがついた時に、日常の中で、臨機応変にパートナーを見つけるといった、自主的コミュニティを形成することすら目指しています!!
これが、ジェンドリンが当初考えた、「チェンジズ」という共同体のあり方なのです。そして、フォーカシングの学習を公教育にすら取り入れ(!!!)それにより、本格的な専門家にカウンセリングを受けなくても通常はこと足りる、地域社会を作れないか、という、壮大な社会革命構想がジェンドリンの中にはありました。
要するに、フォーカシングの「トレーナー」というのは、そういうコミュニティを広め、初心者に、個別で、あるいは小グループでコーチする専門家であり、フォーカシング・ピープルの、いざという際の「顧問」みたいな立場に過ぎないわけですね。もちろん、トレーナーが自分個人の問題解決のために、トレーナーではない人をガイドとしてセッションを持つことも気兼ねなくできるのが望ましい(^^)
「フォーカシング指向心理療法」セラピスト(FOT)は、カウンセリングや心理療法の中でも、クライエントさんにフォーカシングを生かしたセラピーができる上に、より広範な「現場臨床家」としてのスキルも臨機応変に使える「専門家資格」と思っていただければいいかと思います。
(少なくとも、トレーナー、FOTであり、なおかつ、TFIコーディネータ(「資格認定」資格者)としての私個人の要求水準はその水準です)。
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実は、フォーカシングのオーソドックスな練習では、早い段階から、フォーカサーとリスナーの役割をどちらも体験し、どちらのも熟達することが望ましいとされていることについては、他流派の方々には現状ではほとんど知られていないかもしれませんね。
つまり、まずはフォーカサーとして経験を積み、その後でリスナー・ガイドとしての訓練を積む段階に進む、とは限らないのです。
....まあ、フォーカサーの体験全くなしに、いきなりリスナーやガイドのだけを訓練だけをを積むことは不可能、とは申し添えます。
(この点も意外と現状では誤解があるかなと思います。フォーカシングの教示は、フォーカサー体験がない人が、マニュアル的に使いこなすことはできない、とは、敢えて「断言」しておきましょう。それは、車の運転を実際「熟練」していない人が、本の勉強だけで自動車学校の教員になれない、というのと同じことです)
更に付け加えると、フォーカサーの側が、すでにある程度自律したフォーカサー/リスナーとしてのスキルを持っていれば、リスナー体験がほとんどない人ですら、そのフォーカサーの注文に応じてリスナーの役割を果たしていくことが十分可能です。これについては、詳しくは、"Focuser as Teacher"についての記事をご参照下さい。
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さて。インタラクティヴ・フォーカシングの話題に戻りましょう。
インターラクティヴ・フォーカシングでは、まず、フォーカサーのことを、ストーリーテラー(語り手)と呼びます。
そして、仮にAとBという、二人でやるとするならば、まずは最初にどちらがストーリーテラーをやり、どちらがリスナー(聴き手)をするかを決めます。
場の空気で自然と決めてもいいですが、それこそ二人がそれぞれ自分の内面にフォーカスし「自分が何をテーマに話をしたいか」「自分が先にやりたいか」「後でもいいか」を、共に同じ場でショートフォーカシングした上で決めるのが、フォーカシング・ピープルなら理想的だし、その方がその後のプロセスも深まるかと思いますが。
そして、ストーリーテラーの語りに対してリスナーが丁寧な伝え返しをし、その伝え返しで修正して欲しい部分があればストーリーテラーはリスナーにその旨「注文をつけ」、リスナーは更にその注文に応じて伝え返しを修正するというプロセスをじっくり進めます。
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その後で、「二重の共感のひととき(double empathic moment)」と呼ばれる、インタラクティヴ・フォーカシング独特の内面に注意を向ける時間を取ります。
すなわち、ストーリーテラーは、今自分が語ったことについての自分のフェルトセンスを内側で味わう。
同時にリスナーの方は、いわばストーリーテラーの「身になって」、ストーリーテラーが感じている「であろう」フェルトセンスを、あたかも自分の中に生起するフェルトセンスであるかのように「擬似的に(as if)」」感じてみるつもりになり、それの全体に感覚的にぴったりな手短な(!!!)言葉や句やイメージ(できれば「たったの一言のみ」、イメージ説明になっても長く所要30秒ぐらい以内で言語化できるくらいかな)を見つける時間にするのです。
この「二重の共感のひととき」は、少し時間を取ってじっくり進めるつもりの方がいいです。二人のうちの一人の方が、早くその時のフォーカスを終えても、もう一人が終わるまで、じっくり待つ「余裕の態勢」が必要です。2,3分、時には5分、この部分だけでかかってもおかしくないでしょうね。
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そして、次のステップでは、リスナーの方から先に、そうやって見つかった「ストーリーテラーの身になって」感じてみた結果出て来た言葉やイメージを、手短にストーリーテラーに投げ返すわけですね。
その後で、ストーリーテラーは、自分が感じていたフェルトセンスと、そのリスナーからの言葉を照合し、自分としてはどんな感じであったか、リスナーからの言葉やイメージのどこか自分にはぴったりで、どこがぴったりでないか、さらには、リスナーの応答は自分にとっては意外なものなんだけど、ストーリーテラーとしての自分の中に、予想もしない新鮮な気づきを生じさせたかなどを、リスナーに投げ返すわけです。
リスナーは当然、そのストーリーテラーの発言についても、丁寧な伝え返しをし、ストーリーテラーにと修正をしてもらいながら、受け止めていきます。
******
もちろん、ストーリーテラーにとっては、「二重の共感のひととき」の後のリスナーからの、スト-リーテラーの「身になった」つもりの応答が、完全にぴったりということばかりではありませんし、ぴったりな応答ができないリスナーが、即、「悪い」わけではありません!! この点誤解しないでください。
むしろ、その「ズレ」をお互いに共有し、補正・拡充しあうことで、お互いの、まさに「間主観的に」共有できる理解と共感の世界が広がることになります。
先ほど書いたように、時には、ストーリーテラーの方が、リスナーからの意外な応答に「そうか、そんな捉え方もあったか」と、シフトが喚起されむしろ触発されて自己理解が進むこともある。
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そしてここで、「役割の交換」です。
つまり、Bがストーリーテラーになり、Aがリスナーとなる。Bは、先ほどまでは「禁欲」(?)していた、ここまでの流れの中で、「B個人が」感じていたフェルトセンスに,改めてフォーカスして、Aに傾聴してもらうことができるわけですね。
以下は、AとBの役割交代で、上記のプロセスを繰り返します。
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必要なら、そして時間が許し、A,B,双方が望むのであれば、こういう「A面」と「B面」のやりとりを、それこそ野球の攻守交代のように、何往復か、繰り返して進めていけます。
そうなると、お互いの相互理解が、どれだけ深まるか。
それは独特の深みのある、かけがえのない経験として体験されます。
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さて、カウンセリング場面でも、日常の中でも、共感とか、同情とか相互理解とは、相手のことを勝手に「わかったつもり」になって、その「思い込み」を相手に押し付けることに留まっていたり、実は相手の自分への理解に微妙なズレがあっても、「わかってもらった」つもりになって、あとで孤独と疎外感に悩んだり、相手の「ピンとこなさ加減」に感情的に抗議したりして、泥沼になったりしいてることが多いのではないでしょうか。
そして、心理臨床現場カウンセリングにおける、クライエントさんへの「理解」や「共感」は、まさに、カウンセラー側の勝手な「思い込み」を権威でもって押し付けられることにクライエントさんが「甘んじている」だけのことが、現実にはいかに多いことか!!
この点で、カウンセラーにとって、相手への「理解」とか「共感」とは何かを根源から問い直し、そのセンスを磨く訓練としても、このInteractive Focusingは実に強力なトレーニングとなります。
また、人間関係の悪化した、親子、夫婦、カップルなどの調停にも使える可能性があるということにもなります。非常に創造的な「家族療法」的アプローチにもなるわけですね。
私は、左の”My Favorite Books"に出てくる、「現代のエスプリ 410 治療者にとってのフォーカシング」のひとつの章の中で、日本におけるこのアプローチの導入者、宮川照子氏の協力の下に、日本で始めて公刊されたマニュアルを出版させていただいたのですが、今回は開発者自身の原著の翻訳です!!そして、宮川さんがその後深められたご自身なりの工夫も紹介されています。
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もちろん、私も開業後、このInteractive Focusingのトレーニングもメニューに加えています。
実は、通常のフォーカシングにまだほとんど全くなじめていない方でも、私がついてますので(^^;)、十分にこの技法の醍醐味を体験していただけるかと思います!!
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なお、インタラクティブ・フォーカシングは、個人ケースーパービジョンの場面でも柔軟に活用できます。この件についてはこちらの記事をご参照下さい。
フォーカシング・グループにおける、clering a spaceを織り交ぜた導入のしかたについてはこちらの記事を。
フォーカシングの初心者相手の研修会における活用の仕方についてはこちらの記事を。
そして、このクラインの著作についての、更に本格的な書評記事はこちらをご覧下さい。
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この、インタラクティブ・フォーカシングの記事、昨年3月に書かれた、ものすごく古い記事の一つなんですが、この技法の基礎の説明としては、あまりにも言葉足らずだったと思いましたので、この技法についてウェブ上で解説している、ひょっとしたら唯一のページかもしれない人間の責任上、もっとわかりやすく、最低限の情報を含め、その持ち味を解説する内容へと「大幅相補」しました。
更に詳しいことは、この記事の中で紹介した著作等をあたっていただけると幸いです。
取りあえずの「応急処置」でして、もっと詳しい解説に改訂するかもしれません。
投稿: こういちろう | 2006/09/05 00:42
さらに増補改訂した「第3版」において、ブログの記事の水準としては、もう十分過ぎるくらいの、インタラクティヴ・フォーカシングについてのご紹介記事の水準になったと思います(^^)
この技法の更に詳しいマニュアルについては、この記事でご紹介した、何冊かの成書に譲るべきでしょう。
その代わり、逆に、この技法を実際に実施する私の10年近い「経験値」にしてはじめて表現できる「勘所」についての、幾つかの示唆ができたのではないかとささやかに自負しています。
通常のフォーカシングについても、多くの他流派臨床家の方に,まだ浸透していなはずの、ジェンドリンが構想したフォーカシングの理念の本質にかかわることを解説したことにもなりましたので。ご一読いただければ幸いです。
投稿: こういちろう | 2006/09/05 16:43