書評 : 内海健 著 「うつ病新時代 -双極2型障害という病-」
今日、鬱は昔よりも「軽症化」しつつあると言われているのに、実際には、昔の鬱病の患者さんの方が、きちんとした服薬や休養生活(場合によっては入院) を経れば、長くても数ヶ月以内に社会復帰できる人がずっと多かったということを、さまざまな精神科医の先生が指摘している。
鬱になる人の病態のマジョリティー(多数派)自体が、時代と共に変質してきている可能性を多くの専門家が認め、「新型うつ病」「非定型うつ病」 などという言葉が繰り返しマスコミに載るにも関わらず、古典的な「メランコリー型」うつ病ではない人たち(本書で取り上げられている「双極性2型」以外に も、「気分変調性障害」「双極スペクトラム障害」などと診断される方たちを含む)に対する少なからぬ医者の取り上げ方は、どこかしら「近頃の若い者 は・・・・」的なノリで、そうした人たちの「性格の問題」という言い方が安易に振り回される傾向があるように思えてならない。
しかし、それは実は根本的な認識不足なのではないか?
結局、医者の側が時代の変遷についていけていないことの「逃げ口上」ではないのか?
そうした問題提起をする上で、この著作以上に強力な著作は、刊行3年めにして、まだ現れていないように思われてきた。
古典的な「メランコリー型」うつ病は、実は第2次大戦敗戦国である日本と「西ドイツ(!)」において、戦後の復興を経て高度経済成長期に入るという、固有の経済発展様式を取らざるをえなかったために、結果的に、1970年代まで、他の欧米諸国よりも「遅延されて」残存した、実は「オールド・タイプ」のうつ病のあり方であるに過ぎず、現在ではこれらの国でも、主として中年以降の世代にのみ残存している病態であるに過ぎないのではないか?
・・・著者ははっきりそこまで言い切ってしまっている。
(古典的)鬱病者における病前性格としての「メランコリー親和性」ということをはっきりと打ち出したのは、ドイツのテレンバッハという精神病理学者である。ところが、今日では臨床家の間で基本教養の一部というべきこのことをテレンバッハが著作「メランコリー」ではっきりと書いたのは、何と1961年という、思いもよらないくらいに最近の(・・・・などと、1960年生まれの私だと書いてしまう)ことなのである!!
もっとも、1961年といえば、西ドイツも日本も、西側陣営の中で、まさに目を見張る勢いで高度経済成長していた渦中に他ならないではないか!!
「この時代の」「西ドイツにおける」精神科現場臨床におけるうつ病患者の診療の治療の膨大な蓄積の中で、テレンバッハが提唱し、ドイツで、日本で、そして欧米で幅広く受容されるに至ったのが、「メランコリー親和性格」仮説なのである。
この本は、単に、DSMという診断基準が指し示す、狭い意味での「双極性2型」障害についての著作などでは決してない。
恐らく、通常のうつ状態と診断されている患者さんたちの多くが読んでも、深く共感する内容に満ち溢れているはずだ。
実はその点にこそ、この著作の只ならぬ奥の深さがあるのである。
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Amazonの本書への私のフックレビューより転載しました。
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