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2009年6月13日 (土)

NHKドラマ「ツレがうつになりまして。」第3話

 これで全3話完結です。(第1話) (第2話)

 最初の方に出てくる、風吹ジュンさん演じるお医者さんの言葉:

「動物は調子が悪ければ、じっとしているだけ。
でも、ヒトは言葉なんていうものを持っているから考えてしまう」

 この前半は私が鬱をとらえる上でのモットーで、このサイトの記事の中でも似たことを何回か言及したことがありますし、先日「こころ相談.com」のインタビューでも使わせていただきました。

 鹿児島に在住の、日本を代表する、「民族派(?)」精神科医の大御所、神田橋條治先生は、「こころ」とは、コトバが生み出した「ファントム(幻影)」であるという、過激なまでの逆説的問題提起をして、従来の精神療法のあり方を見直そうとされています。

神田橋條治/「現場からの治療論」という物語―古稀記念

実は、別に鬱についてと限定して先生はお語りだったのはないのですが、「動物は調子が悪ければ、『元気がなくなり』、じっとしているだけ」という言葉に私が出会って、心引かれたきっかけも、この本なんですね(・・・・と、やっと「元ネタ」を明かします)。


******


 このドラマのこの回でも描かれているように、鬱には波があり、もう大丈夫かと思ったら突然ぶり返すこともごく普通です。そのことに本人も家族も動揺したり落胆したりしがちです。

 しかし、本当は、波があるのが普通である、という前提に立ち、波がないことのほうがおかしいという前提で、人間や動物が、四季の移り変わりや、年毎の旱魃や長雨に対応するために、五感を働かせて刻々とチューニングし、そこそこに無理のないラインで生活できていくことの方が自然なのだと思います。

 ある観点からすると、人間が高性能を維持して故障のない機械になれることこそ理想の労働力とみなされ、日々の生活においても、一年中空調の聴いた部屋の中で、季節の収穫と無関係に同じようなものを食べられて当然と思い込み始める中で、退化し、鈍くなり、自分を年から年中同じ状態にあるかのように欺くのがうまくなったことの裏返しとして、自分の置かれた状況の変化に不感症になり、無理を無理と感じなくなり、鬱の準備状態にはまっているのに、まだそのことに気がつかない人も増えたのかなとも思います。

 一度本格的に鬱を経過すると、以前よりも、自分の無理の兆候や、逆にややハイになっている兆候、そして、欝っぽくなっている兆候にはるかに敏感になります。

 そうした自分の些細なまでの敏感さそのものにむしろ苛立ちを覚え、むしろそれに振り回されて困っている方たちもたくさんおられるかと思います。

 でも、その敏感さが、むしろしなやかで柔軟な、新たなライフスタイルをあなたに導くための羅針盤にもなるはずです。

 羅針盤とは、どっちが北でどっちが南かを見失わないためのものです。多少、航路から外れてきたなと気がついたら、その段階で航路を「完全補正」するのではなく、風向きや地形や気象や波の状態も配慮しながら、そこそこ回り道をして目的地に向かうのも大事な「航海術」かと思います。

 そうした皆様に、その羅針盤を共に見守って、航海を共にしてくれるような人たち(専門家・非専門家問わず)との出会い(出会いなおし)がありますことを。

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