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2009年6月 1日 (月)

NHKのクローズアップ現代・「抗うつ薬の死角 ~転換迫られるうつ病治療~」について(第3版)

 本日(6/1)19:30に放送された内容に基づいて、速報します。

 SSRIの副作用として稀に見られる、衝動性・暴力性誘発という問題について踏み込むと言うことは事前に知っていましたが、それでも全体としては、当ブログでも大々的に連載を組み、ご愛読いただき続けている、3/7放送のNHKスペシャル「うつ病治療 常識が変わる」の補足的・復習的続編という色彩が強いだろうとは思っていました。

 その意味では、番組の構成的にも全く予想通りに進行してしまって、押さえて欲しかったポイントはほぼすべて押さえてくれ、前回の番組で誤解を招きかなかった側面(認知行動療法だけを積極的に描きすぎていた面)はうまく調整されていたと思います。

 医者や臨床心理士や看護士にとどまらず、栄養士すら含むさまざまな役割のスタッフが、皆、患者さんをケアし、見守る援助資源であり、誤診や状態の変化に対応できるチーム医療の上でいかに重要かを改めて強調していた点についても好意が持てました(薬を必要以上に出さないことは大事ですが、この番組後半で紹介されていた事例が、画面を見る限り、入院治療である点に注意すべきかと思いますし、薬物療法をやはり大事にしている点も見逃すべきではありません)。

 また、番組内でも繰り返しテロップすら出して強調されたのは、この番組を観て不安にかられるあまり、自分だけの判断で薬にやめてしまうと非常に危険なので、疑問があればお医者さんに相談してください、ということでした。これも適切な配慮でしょう。

*****

 さて、今回の番組の前半で中心として取り上げられたのは、先述の、抗うつ、SSRI)が、人によっては、攻撃性や衝動性を誘発する副作用が出る可能性があることを、この4月に、厚生労働省が、製薬会社に注意書きとして掲載することを義務付ける通達を出したという点でした。

 日本では、SSRIの投与が現実の衝動的な暴力事件と因果関係を厚生省が正式に認定されたケース事件はまだ4件しかありません。

 この番組でも紹介された、1999年の、機長を殺害し、精神鑑定の結果無期懲役に減刑された、全日空61便ハイジャック事件で、抗うつ剤大量服用による心神耗弱が無期懲役への減刑理由となったことはかなり知られているかと思います。

 全日空事件に関しては、そもそも、通院していた医者の当初の診断も理解しかねる(統合失調症ではなくて、この段階では詐病していた疑いがあることは当時も報道されたかと)し、結果として出されていた薬のリストを見ると、医者ではない、限られた知識の私の目から見ても、もう、どういう判断でこうした薬がここまで大量に出ていたのか、目を疑う内容が列挙されていますので、判決のように「『抗うつ剤』の大量服用の副作用」だけ認定したというのは何か腑に落ちないといいますか、医者の診断と投薬のあり方そのものが大きく問われる事例と思えてならないあたりが、今回の番組では不十分な描き方と思えますが、その部分を詳しく描きすぎても番組のバランスを崩したでしょうから、敢えてクレームをつけるに及ばないかと思います。

 そして、アメリカの、あの「コロンバイン高校銃乱射事件」(1999年)の犯人のひとりもまた、犯行直前に、大量のルボックスを服用していたことが、この番組で紹介されます(wikipediaによれば、犯人の遺族からの製薬会社の告訴による訴訟においては、薬との因果関係は立証されなかったものの、2002年にこの薬はアメリカ国内では販売中止になっているそうです)

 アメリカでは、すでに2004年の段階で、SSRIがその副作用として攻撃性を誘発するか可能性があることを注意書きに明記する命令が製薬会社に出されていました。

*****

 もとより、こうしたSSRIが攻撃性を誘発する副作用を人によっては発揮する可能性については、こうした大犯罪事件のみならず、数多くの、もっと地味な犯罪・警察沙汰の事件、そして現場医療の中で気がつかれた患者さんの衝動性の高まりなどの行動変化についての、少なからぬ症例に基づいて浮かび上がってきた事柄です。

 番組では、日本での2つのケース、すなわちパキシル投与後、言動が攻撃的になり、ついにはコンビニに包丁を持って強盗に押し入り、現金20万円を奪取した事件、そして、配偶者を殴って10針の傷を負わせた事件という、2つの事件における、診断と投薬の過程の問題点が、ご本人と家族への取材映像を含めて紹介されていました。

 前者のケースは、投薬開始後早い段階から、家族に対して衝動性・攻撃性が増していたにもかかわらず、医者は、まずはパキシルを3倍にまで2段階かけて増量し、その段階で「効かないから」という訴えを受けて、一転して投与全体を中止。それから数週間後には再び、かなりの量の投与を再開、更に増量(当初の4倍)という、実に頻繁な投与量の増減がなされていた点が、番組で、重要な問題点として指摘されました。

 SSRIを飲むことを「急にやめてしまう」ことは、実は非常に危険であり、身体面でのリバウンドの危険も大きいばかりか本人を更に不安定にする引き金ともなるのです。ですから、患者さんが勝手な判断で飲むのをやめてしまうことは是非避けるべきです。お医者さんの指導の下で徐々に減薬していった上で、別の薬等の治療に置き換えて行くのが適切です。

 もうひとつの後者のケースは、すでに以前もご紹介したように、実は双極性障害の「うつ状態」のはずなのに、単極性障害とのみ誤診され、気分調整剤ではなくてSSRIのみが中心的に処方されたケースでした。この患者さんは、おかげで躁鬱の波が余計に悪化するというパターンにはまって、奥さんに暴力を振るってしまったのですね。

↓「NHKスペシャル」で用いられた図の再掲です。今回の番組で掲載されたのは「双極型障害Ⅰ型」についてのもので、躁状態方向への波の振幅も高まっていたので、少し違う図になるのですが、参考までに転載します。
Bp2b_2
Bp2c_2

 この番組の中で、単にSSRIそのものに不安や緊張の低下と同時に、衝動性抑制の神経伝達物質代謝まで緩んでしまう作用を起こす可能性の示唆にとどまらず、お医者さんの側に、適切な診断の下で、薬を的確に使いこなせていない未熟さがまだ見られることが大きな原因であることを強調していた点は、重視すべきでしょう。

 この取材に応じ下さった患者さんお二人が異口同音に語った事柄が印象的です。

「そういう時には、まるで自分が自分ではないみたいな、独特の感じなんです」

「何かにムカついてきて、イライラが高まる時のイライラとは全然違うものなんですよ」

****

 今回の番組の中で、ゲストの医療ジャーナリストの小出五郎氏は、日本の薬事法における、薬の副作用についての国への報告システムの問題点を指摘していました。製薬会社や大病院からそうした副作用報告を吸い上げるパイプは制度として整備されているのですが、個々の医師(開業医を含む)や患者・家族から、そうした、薬の副作用についての情報を、たとえ曖昧で確証がなくてもいいから吸い上げるまでの公式のシステムが制度的に存在しないそうです。 

「副作用情報はいったい誰のためのものかということです。何よりまずは患者さん、そしてご家族にとってなくてはならないはずのはず。そうした情報を専門家と共有するためのネットワークの整備が制度的にも急務」

というのが、小出さんが最後に強調した点でした。

*****

 この番組の更に後に放送された、NHK「ためしてガッテン -うつ病よサラバ!脳が変わる最新治療-」についての感想はこちら

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コメント

久留米フォーカシング・カウンセリングルーム様

 とても勉強になりました。もとのNHKのクローズアップ現代もネットでその前に見たばかりです。この番組や、こちらのこのコメントは「ベンゾジアゼピン離脱症状を延々と」のサイトを丹念に読んでいて見つけました。

 もしもよろしければ、SSRIの副作用としての攻撃性、衝動性だけではなく、離脱症状としての攻撃性、衝動性についても調べていただけませんでしょうか。

 私はパキシルの断薬後から、自分でも自分でないような、急激なとても激しい爆発的な怒りに非常にさいなまれました。仕事も休職、家庭崩壊し、妻との関係を回復でき、立ち直るのに何年もかかりました。そして臨床心理士の方によるトラウマ体験についての長い聞き取りによって、現在心の傷がすっかり癒えたと感じています。

 ところが、5年前から不眠がきつかったのですが、睡眠薬の処方が増えてきていても、ほとんど眠れなくなりました。そこで初めて、私は自分で調べて、日本だけで安全とされ、とても広く使われている、ベンゾジアゼピン系睡眠薬・安定剤の常用量依存(処方量で短期間で依存が発生する)という、否定できない事実が、自分の身体に起きていることを知りました。最近読んだ「向精神薬の減薬・断薬のためのメンタルサポートハンドブック」の中にベンゾジアゼピンの離脱症状の他に、SSRIの離脱症状も書かれており、そのような問題が存在することを初めて知りました。

 私の場合、2年間の服薬中よりも5年前の急激な完全な断薬後の1年間が非常にきつかったです。激しい攻撃性、衝動性にかられていました。どうか調べていただけませんでしょうか。

 私は働きすぎなどの燃えつきで、7年前にメンタルクリニックを受診し、うつ病と診断され、パキシル20mgを2年間処方され続けました。(他にドグマチール、ドラール、ロヒプノールも処方されており、その後はまた色々な服薬歴があります)5年前、発病するくらい無理をして苦しんだ、報われなかった私の努力がやっと報われて、ふさいでいた心が明るくなりました。私は一人で妻にも職場の誰にも話せずに一人で苦しんでいたので、本当に嬉しかったんです。それが躁転した、躁うつ病だと誤診されてしまったのではないかと思います。そして心の傷が癒えても、今、睡眠薬の常用量依存で、全く仕事ができなくなるぐらい、とても苦しんでいます。そしてそのような方が実はとても多勢いらっしゃることも知りました。

 どうかよろしくお願いいたします。

ふみ様

お返事がたいへん遅れ、失礼いたしました。

SSRIからの離脱症状については、ふみ様のほうが知識的にもお詳しいようで、私が多少調べてもそれ以上のお答えはできないように思います。どうかお許しください。

ベンゾジアゼピン系の睡眠誘導剤や向不安薬は依存性が強いのはおっしあるとおりです。最近は、気分障害で古典的な欝(メランコリー親和型)以外の気分障害圏の人には出されなくなってきています。この点でのこの数年の変化は著しいものがあります。

それに代わって、多くは抗てんかん薬に由来する「気分安定薬(気分スタビライザー。デパケン等)」が広く使われるようになりました。更にはいわゆる「非定型薬」(ジブレキサ等)の少量投与が気分安定と睡眠の質に効果的だることが公式に厚生省から認可されたのは、今年(2011年)に入ってからです。

これらの薬への早期の切り替えがあれば、SSRIからの離脱症状に苦しまなくて済んだ可能性はありかとは思います。

お答えになったかどうかわかりませんが、私が申し上げることができる範囲のことに留めますことをどうかお赦し下さい。

ご回答ありがとうございました。本日まですみません、気がつきませんでした。

ベンゾジアゼピンはかつて、バルビツールに代わる夢の薬としてもてはやされました。それが欧米でどうなったかはご存知だと思います。

ところが、ベンゾジアゼピンについての日本での公式な危険の注意喚起については、私は目にしたことがありませんし、それどころかごく最近まで前主治医からは常用量依存を知っていながら、嘘までつかれながら、ずっと多剤のベンゾジアゼピンを増やされて何年も処方されていたことを知りました。本当に知らないで処方している医師もいかがなものかと思います。深刻な被害に遭っている多くの方を、もはや知るようになりました。気分安定薬もデパケンも何年も飲んできました。効果については疑問だらけです。何故もてはやされるのか真の理由を探したほうが良いように思います。精神科医と製薬会社のモラルのあまりの低さには目を疑います。既に10年以上も前から実態は科学の体裁を無くしており、多くは犯罪の領域ですらあるように私は思うようになりました。

ジプレキサしかりです。私も飲みました。何が起きたかは今ここでは書かないでおこうと思います。睡眠の質の効果を確かめるために、ご自身でもお飲みなられてみてはいかがかと思います。治験などでは健康な方も飲まれるはずだと思います。多分死ぬことはないと思いますが、私は保証できません。厚生労働省は保証したのでしょう。勇気を出して飲まれてみればどのような薬か、実感としておわかりになられると思います。SSRIに代わり何が起きるのでしょうか。ご報告いただけましたら幸いです。

お返事が遅れました。私にはセロクエルはあいませんでしたが、シブレキサを毎晩飲んでいる人間です。役に立っていると思いますよ。いろいろ医療不信で苦しんでこられた気持ちはお察しします。

気分安定剤は薬価は安いので金儲けにはなりません。思うんですけど、薬が「治してくれる」と思ってはならない気もします。薬は軽活のためのベースラインを整えるのに役立つもなのだと。

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