ご紹介:読売新聞の「医療ルネサンス」 更に、援助的専門家自身のメンタルヘルスについて -NHKスペシャル 「うつ病治療 常識が変わる」への感想(特別編3)-
前の記事までにご紹介したうつ状態に限らず、発達障害や統合失調症、身体疾患についても、誤診→投薬の不適切ということがよく見られることは言うまでもない。
読売新聞の長期連載コラム「医療ルネサンス」は、単行本化された「私のうつノート(書評記事当サイトにあり)」と共に、すでに定評ある、この種の問題を掘り下げた試みであるが、読売新聞公式サイトでもバックナンバーを読むことができる。
この「医療ルネサンス」のバックナンバーから、
●シリーズこころ これ、統合失調症? 耳傾けた心理士 誤診修正
を紹介したい。
いじめを受けていたことを親にも内緒にしたかったために、「悪口を言われている気がする」だとか、「誰かにつけられているのでは」という訴えを、統合失調症における妄想状態であると医者に誤診されていた例である。
話をじっくりと聞いてくれた臨床心理士によって、このあまりに初歩的な誤診の可能性について示唆を受け、別の精神科病院で幸い正しい診断を受け、回復したとのこと。
数名以上の統合失調症が疑われるクライエントさんとじっくり面接した経験があるカウンセラーであれば、若手でも、こうした際に妄想であるかないかについて、かなりはっきりした見立てをすることができるものである。
大学学生相談をしていると、私に限らず、
1.母国の国際紛争で前線の兵士になり、実際に諜報活動に従事したことがあるらしい留学生が「自宅に盗聴器が仕掛けられている」「誰かが監視のために付きまとっている」と訴えたが、しかし帰国後、本当に統合失調症との診断が適切だったことをご家族から報告してもらえたケース。
2.帰り道で誰かに付きまとわれていると訴えた男子学生が、医師に一度は統合失調症を疑われたが、実際に、ほとんど面識がない女子学生(!)からのストーカーを受けていて、診断が変更されたケース。
3.家での親の仕打ちについて、とても現実にありそうにないとも思えることを話していたが、実際に親に接してみると、とてつもないモンスター・ペアレントであり、なおかつDV常習者であり、なおかつ学生本人は、実際に、「妄想型」ならぬ「解体(破瓜形)」統合失調症的側面があり、しかもPTSDではないことも医者によって慎重に鑑別診断され、それでも親は頑固なまでに娘の病気を否認し続け、結局地域精神保健と連携して、精神障害者認定と生活保護で実家から別居してもらうのが適切となり、その後デイケアの仲間たちと、やっと安定した境遇にたどり着いたケース。
などを担当したカウンセラーは決して稀ではないと思う(プライバシー保護のため、一部脚色して、しかも四半世紀前のケースを例示した)
しかし、こうしたケースを見立てる力は、すでに述べたように、実はそんなに高度な専門的勉強や経験を積み上げなくても、現場カウンセラーなら身についているはずである。
これらに比べると、双極性気分障害II型と、単極性うつ病の鑑別診断の方がはるかに難しい。
考えてみれば、精神神経科は、聴診器も当てず、脳のCT検査も心電図も、意外なまでに滅多にとらないままに、幸運にして長い場合でも初診20-30分でとりあえずの診断と投薬をはじめるという点では、もの凄い職人芸の世界である。
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更に、業界では結構知られている話。
医者本人がうつ病や統合失調症でも、日々の患者さんへの診断や投薬は適切な場合も多い。
一般に、妄想的な傾向が強い人は、他人の言動が妄想的かどうかには十分敏感で、「現実吟味の行き届いた適切な判断ができるものである (中井久夫「説き語り 妄想症」による。、病者と社会 (中井久夫著作集―精神医学の経験)に所収)
もちろん、良心的な医局がある病院だと、そうした疑いがある医師を、本人を傷つけない形でさりげなく現場最前線から外すものである。
しかし、そうした病院内部の周囲の人間の対応が中途半端で、当人の不信をあおるだけの対応しかしなかった場合、そういう精神科医が「外部のカウンセラー」に通った挙句、自殺するという現象も、決して稀れではない。
国立がんセンターに勤務する医師が、がんで死亡することも珍しくないのと同じ次元で、こうしたことはクールにとらえるのがいいと私は思っている。
そして、医師に限らず、看護士、保健士、介護福祉士、ケースワーカー、そして臨床心理士などのカウンセラーをはじめとする専門的援助職に従事する人たち(学校教師も加えていいだろう)こそ、まさに「感情労働職」の典型として、燃え尽きたり、鬱の発症の危険にさらされている人たちである。
いろんな関係者の話を聞くと、こうした「対人援助職従事者のメンタルヘルス」の問題で、現在の日本で一番対応が遅れているのが、臨床心理士という意見も多い。
これは、そもそも素質のない人に簡単に資格を与えないというスクリーニングなどで解決する問題ではない。まじめで熱心なカウンセラーほど、「まさかあの人が」という形で、一度は倒れたり、うつ状態やストレス性の疾患で仕事を長期的に休む危険に直面しているようである。
私はそうした専門援助職の従事する皆様からのご相談も、その方の資格を問わず、大事にしているつもりです。
※特別編3終わり。関連記事がこちらにあります。
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更に、このNHKスペシャルのあたかも続編であるかのように放送された、「クローズアップ現代」の「抗うつ薬の死角 ~転換迫られるうつ病治療~」のついての感想はこちらに続きます。
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